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2020.10.28(wed)喫茶店

アルコールをしこたま摂取したあとはカフェインに限る。
ラーメン屋へ向かう集団に、わたしはじゃあねと手を振り先をゆく。

駅の向こう側、遅くまでやっている普通のチェーン店で普通のコーヒーを一杯だけ。
豆の違いなんて大人になっても分からないままだから、この二百円のやつが一番美味しい。

中年の男女が色恋沙汰に声を潜めている。一緒になろうよとささやく男の声の本心を探るようにしながら、そんなつもりはないのよと女が躱した。
斜向かいで参考書を覗き込むあの男も、その声に耳を欹てているかもしれない。

今日もまた無駄に消耗してしまった。酒に酔った姿がその人の本心を現すと言うのなら、いっそわたしから解放してあげたいと願う。それほど持て余している。
だけどもう大人だから、こうやって他人を眺めながらコーヒーをやれば少しは落ち着くんだと知っている。

安っぽいチェーンの喫茶店を出たあとの街灯はさっきよりも明るかった。
いつだって酒はもういらないと思うのに、きっとまた明日飲む。




新しい出会いなんてこれっぽちも求めていない。
三人くらいの友人がいれば幸せで、このひとりきりの生活を愛している。
制限されなくたって、誰でもいい誰かと飛沫を交換し合うことにはすっかり飽きてしまった。
今日も自分でつくったハイボールが一番美味しい。




ねぇ、今はもう、深夜のコーヒーは必要なくなったよ。



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