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私の仕事

私は現在、アメリカ東部の文教地域で、公立高校の代行教師(Substitute Teacher)をして3年目になります。アメリカの教育制度は州によって異なるため、ひとくくりにはできませんが、私が暮らす地域の公立学校では、正規教員が病気や研修、家族の都合などで仕事を休む際、必ず彼らに代わって代行教師が授業を受け持つよう、義務づけられています。私はその代行教師として、主に3つの高校を受け持ち、正規教師が残した授業計画に沿って、自習や試験監督などを行っています。

私が勤務するアメリカの公立高校ではどこも、全ての教科が難易度別・選択別で多種多様なコースが設置されています。全学年必須の英語教科(日本では国語に相当)一つとっても、難易度が3段階に分かれ、それ以外に、選択科目として英文学(English Literature)や英作文(English Composition)もあります。さらに、メディア教科として、ジャーナリズムや文芸雑誌(Literary Magazine)、新聞(Newspaper)といった科目もあり、年間を通じて生徒は英語の読み書きを学びます。

基本的に授業計画が用意されているものの、相手が高校生であるため、教室ではさまざまなハプニングや問題が起きます。そうしたことに臨機応変に対処しながら、授業を臨時で担当するには、自分が受けた日本の高校教育とは異なるアメリカの教育制度やカリキュラム、コース内容も把握していることが大切だと痛感しています。アメリカの公教育を受ける子どもの親でもあるので、高校生の行動・思考パターンはわかりますが、自分自身はアメリカで学校教育を受けたことがないため、恥をかきながら、ひとつひとつ独特なアメリカの教育文化を覚えていくしかありません。

何十年も前に、日本の大学受験のために5教科7科目を勉強し、さらに英国の大学院で開発政治経済学や社会学を学んだからこそ、物理からデジタルアートに至るまで、多種多様な科目を受け持つことに抵抗がないのかもしれません。また、南部アフリカで、現地の人々や先進国ドナー、国際機関などと協力して援助活動を行った経験があるからこそ、民族・人種・言語的に多様なバックグランドを持つこの地域の学生の懐に入り込めるのかもしれません。

社会科学系の博士論文を執筆する過程では、個々の小さな事象を整理分析し、一般化する訓練をしました。そうしたことは、分野が変わっても同じです。博士論文がうまく書けず、もがいた経験があるからこそ、教育現場での個々の出来事というパズルのピースをはめて、そこからアメリカの教育構造を考え、アメリカ社会全体を俯瞰することが可能なのかもしれません。

今後、現在の教育現場での経験をもとに、以下の二つのことを仕事にすることで、社会貢献をしていきたいと考えています。一つに、海外留学、研修、インターンシップを志す日本人学生のサポートをすると同時に、そうした取り組みに対して問題を抱える大学や省庁に対して、情報提供およびアドバイスを行えるような仕事をしたいです。たとえば、アメリカの学校の教え方を具体的に示し、どのように日本と異なる宿題や課題をこなし、実りある学びにつなげているか、提案したいと思います。

二つに、今後、急増することが予想される外国人の子どもの、定住に向けた教育プログラムの作成や、親・学校・地域コミュニティ間の情報共有と共存に向けたサポートをしていきたいです。文化的背景の異なる子供のニーズの把握やサポートの仕方など、助言できるのではないかと考えています。


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