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希少価値が高いと感じたマネージメントを「受ける側」の研修について

「山根さん、このマネージャー向けの研修って、マネージメントを受ける側のメンバーに実施するのもアリなんですかね?」

というご相談をいただいたのは、2022年の夏ごろ。SideKicksという企業様のマネージメント研修に携わっていたのが、2022年の5月ごろから。約3ヶ月の研修を経て、僕自身も感じていたのですが、

マネージャー向けの研修

これはもちろん、マネージメントをしている方向けに重要だと思うのですが、マネージャーの心得についてはマネージャーが知っておくと同時に、マネージメントを受ける「メンバー」側も知っておくことによって様々な良い効能があるのではないか、と感じておりました。
そう思っていた時に、SideKicksの代表の岡嶋さんから「マネージメントを受ける側のメンバーへの研修」のご依頼をいただき、直近3ヶ月をかけて実施してみました。

本ブログは、マネージメントを「受ける側」の研修を実施してみての気づきを記載したいと思います。
※本ブログは、「新サービス ベンチャー企業向けのマネージメント研修を 3回実施してみて」というブログの内容と一部重複しますので、ご興味お持ちの方はこちらのブログもご覧ください。

 

1. マネージメントはどれくらい大事なのか?

マネージメントはHRの世界における「人事組織」の施策の中の1つです。マクロな視点から理解していただきやすいように説明してみます。

👆こちらは労務を除く人事全般の業務を分類したものです。少なからず採用活動に携わったことがある方はイメージがつきやすいかもしれません。そして、上記スライドの右下に記載しております「人事組織」の中身をもう少し詳しく見て参りましょう。

👆こちらは考え得る人事組織の施策を並べた図です。ちなみに「採用」についてはイメージが湧きやすい一方で、「人事組織」とは何かをわかりやすくいうと「入社以降」社員に対して取り組むべきアクション全て、といったところでしょうか。ただもちろん人事領域なため、社員の「定着化」「パフォーマンスアップ」といった、この2つを目的とした施策がメインになります。

話を戻して、人事組織全般のスライドに「マネージメント」という記載があります。この12 の施策の中での重要度とは企業の状態によって変わるのですが、下記をご覧ください。

👆なんと、退職理由の4人に1人がマネージャー(上司)が起因していることがデータとしてわかっています。もちろん、様々な要素が複合的に絡まって退職に至るケースが多いかと思うのですが、何かしらマネージャーが退職に絡んでいるのは間違いない事実かと思います。
ただ、あらゆる企業において定着率が下がる(離職率が上がる)という事象が起きた際に、「福利厚生も充実させよう」「年収を上げよう」「仕事内容を変えよう」「人事制度を早期に作ろう」という施策が立案されることが多いです。もちろん提起された課題に対して適切な人事組織施策を投じるべきですが、もしかしたら「マネージメント」の研修/育成をするが故に、解決できる課題は多数あるかもしれないのです。

そのため、数年前からポテンシャライトでも「マネージメント」についての重要性は理解しつつ、山根/小原以下がフラットな環境でしたので、そこまで問題視せずに企業経営をしてきたのですが、お客様はもちろんのこと当社もメンバー数が増えるに従って最も重要な要素なのではないか、と強く感じていたのは事実です。


2. マネージメント研修の構成

結論としては下記で構成しています。
こちらの分類は、
 - 山根の頭の中の整理
 - さまざまなマネージメントにおける書籍
 - Webで多くの方がアウトプットしているマネージメントの記事
を参考にしています。

後半の「ケーススタディ」と「50のポイント」はほぼオリジナルです。且つ、ケーススタディは永続的に増やし続けています。当社内で「こういう時どのように対応したらよいですか?」という質問をもらうことが多く、その都度増やしています。50のポイントについては、増やすというより内容をブラッシュアップさせ続けています。
前半の「マネージメントの基本動作」と「ピーブルマネージメント」は、マネージメントをするうえで覚えておくべき基本+応用になります。前述した通り、これはマネージメントの書籍やWeb上の記事、そして僕の知見を入れて作成しています。

今回は、マネージメントを「受ける側」の研修ということで、上記の内容をカスタマイズしようと思っていたのですが、そこでふと気づきました。カスタマイズする必要はあるのか?ということ。詳しくは後述しますが、現在マネージャーがインプットしている内容について、そのままマネージメントを受ける側のメンバーに説明していただくことによって、業務が格段にスムーズになると感じました。そのため、大きくカスタマイズをするのはやめて、そのまま実施することにいたしました。

3. (改めて)マネージメントを「受ける側」の研修をする目的

目的は2つあると思っています。
1つは、「将来的にマネージャーにチャレンジするにあたり、マネージャーの心得を知っておく」こと。各社の組織の作り方に寄りけりですが、大体の組織においてマネージャーは必ず必要になります。「フラットな組織」というのは聞こえは非常に良いのですが、これはプロフェッショナルな人材が揃っていて初めて成立するものだと思っています。会社を拡大するにあたりジュニアのメンバーが徐々に増えるのが一般的ですが、ジュニアのメンバーにフラットな組織を適応させるのは難易度が非常に高いです。なぜならば、自立していないからです。そのため、どのような組織においても、マネージメントについての知見を持っている人材は貴重であり、希少価値も高く、本研修を受ける側の方々にとっても良い経験となると思っています。

2つ目は、「マネージャーの生態を知っていただくことによって、現場の仕事をしやすくする」ことです。僕自身は20代前半の頃にマネージメントを経験させていただきましたが、メンバークラスの頃はマネージャーの気持ちを考えた事はほぼありませんでした。マネージャーがなぜそのような発言をしているのか、なぜそのような態度を取るのか、などがメンバーにとっては心配になることも多く、そして不快感を感じてしまうことも多いです。
そんな中、これまでマネージャー向けの研修を何度か実施させていただいて、こんな意見をいただくことが多くありました。

「この研修内容を、もっと前に知りたかったです。」

マネージャー向けの研修を受けていただいた方が、おそらくマネージャーになる「前」に知っておきたかった、というご意見になると思うのですが、これはまさしくその通りだなと思いました。
僕自身も、本研修の内容を設計するにあたり、自分自身の頭の中がクリアになりましたし、これをマネージャーになる前、そしてメンバーとして仕事をしているときにインプットしておけば、マネージャーの気持ちもわかるので仕事がしやすくなると感じました。
この2つの目的をもとに実施していました。


4. 実施してみて良かったこと

前項に記載をした目的がある程度達成できた事が良かったと感じているのですが、その他に僕個人的に感じたことをいくつか記載したいと思います。

 4-1. 会話のレベルが上がった

本研修では、ケーススタディーにおけるメンバー同士のディスカッションが何度か実施されるのですが、そのディスカッションを僕はオブザーバーとして聞いておりました。正直、本研修を受講した前後の比較は難しいのですが、思っていた以上に、研修を受けた後のディスカッションにおいて視座が上がっておられると感じることが多かったです。

一般的にメンバークラスの方とディスカッションするときに、視座が高い意見を持っているメンバーは、5人に1人存在していれば良いほうだと思います。ただ、本研修をメンバークラスの方に受けていただくことによって、研修を受けたメンバー同士のディスカッションがマネージャーの卵くらいのレベルへ成長していると感じることが多々ありました。

 4-2. メンバーの答えに共通認識がある

本研修では、5時間程度の座学、そして4時間程度のディスカッションの時間を確保しています。前半の座学で多くのインプットをするのですが、このインプットにおいてマネージャーとしての姿勢や概念に加え、具体的な大事なアクションベースの話やテクニックについての話もしています。

また、その後のディスカッションの時間においては、あらゆるケーススタディーにおける各メンバーのアクションをシェアし合う時間になるのですが、研修でインプットした内容がほとんどであるため、メンバーからの回答に共通認識を得られることが増えている印象でした。
マネージメント経験をお持ちの方はご理解いただけると思うのですが、マネージメントは目の前にいるメンバーの性格/特性、そして発生した事象によって指摘の内容や角度が異なってきます。ただ、大まかな教科書といいますか対応策はあり、そのベストな対応策が文言化されている教科書が社内にあることはほとんどないと思います。そのため、少しでも社内のマネージャー同士で共通認識をとることができる教科書のようなものがあればうまく対応できると思うのです。

 4-3. 視座が上がった

繰り返しになるのですが、本研修を受けていただく「前後」の違いを明確に僕が把握できるわけではないのですが、一般的なメンバーレベルの方々と比較すると、発言する内容を中心とした視座が上がっているように思いました。

1つ分かりやすい事例をご紹介すると、「不満」と「課題」の違いの話をします。メンバークラス同士の飲み会があったときに、愚痴や不満を言い合うことがあるかと思います。これは、どの企業様でも日常的に発生するのが一般的であると思います。(そうではない会社もあると思うのですが、一般論の話)。何故かというと、メンバークラスが当事者意識を持ちにくいからだと思います。そのため、愚痴や不満をそのままにしておいてしまうことが多いのではないかなと思います。
一方で、マネージャーになると愚痴や不満をそのままにしておくと、チームの状態が限りなく悪くなります。チームが崩壊することもあります。そのため、愚痴や不満を「課題」に変換し、「解決」しなければならないのです。
これらの違いをメンバークラスの方が理解してもらえることによって、日々ディスカッションする内容において「視座」が大きく変わるかと思います。本研修を受けていただくことによって、ディスカッションをする内容に対して、不満や問題をそのままにしておくのではなく、それを「課題」に変換させて取り組んでいる姿が印象的でした。これは視座が上がっているということになるかと思います。

ただ、ぼやき程度の話ですが、この研修を受けていたとしてもやはり視座が上がらないメンバーはいます。とは言いつつ、10人受けていただいたとして、5人視座が上がればものすごく大きな効果だと個人的には思います。もし何もアクションを取らなければ10人中0人ということを考慮すると、大きな前進だったのではないかなと個人的には思っています。


5. (補足) 会社運営/事業成長で最も足枷になる「人」の問題

今から申し上げる事象については、様々な意見が飛び交うかと思うのですが、個人的に会社経営において、そして事業成長において、最も足枷になるのは「人」の問題だと思っています。

例えば、仕事がハードであった、難易度が高かったなどの問題は、どの企業様でも発生するかと思います。ただ、人間関係が良好であれば「頑張ろう」と心に決めて頑張るメンバーも多いのかなと思っています。
一方で、どんなにやりがいのある仕事であっても、どんなに成長できる環境であったとしても、人間関係が悪ければ、そして馬が合わないマネージャーの下で仕事をする場合は、耐えることができないことも多いのではないかと思います。本ブログの冒頭でもご紹介いたしましたが、退職理由の75%は「マネージャー」が起因しているというデータがあります。一言で「マネージメント」といっても、幅が広すぎて何とも言えないかなと思うのですが、ただ概ね間違いなく言えるのは、退職理由の一部には必ずマネージャーの言動が関わっているということです。
どんなに優秀な人材だったとしても、この人間関係における歪みを生んでしまう方は、直接コミュニケーションを取る方やその周辺で仕事をする方にもネガティブな影響を及ぼしかねないため、組織の癌になってしまう可能性もあります。

話を戻すと、「人」の問題は、このマネージメントをする側とされる側の共通認識を取ることによって解決することもできます。それほど重要度が高いことなのかなと個人的には思います。

6. マネージメントを「受ける側」の研修はどのタイミングで受けるべきか?

「自社での入社オンボーディングをある程度終えたら」

このタイミングがベストだと考えています。言い換えると自社において「一人前」になったら、というタイミングでしょうか。
当社は、ベンチャー企業様向けにHR支援をしておりますので、中途採用がやはり多くなります。特に中途採用においては即戦力が求められる傾向にありますが、新しく入社をする企業において慣れない環境で仕事をすることになります。つまり、その企業のカルチャーに適応したり、その企業の仕事の進め方などを覚えるには時間がかかるかと思います。そのため、入社オンボーディング、つまり入社研修を終えているフェーズ、そして社会人としてある程度自立をしているタイミングであれば、このマネージメントを「受ける側」の研修を実施してみても良いかなと思っております。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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