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魅力を引き出すための質問のテクニック/考え方の解体新書

「なぜ人は、その事実に対して魅力と感じるのか?」

そんな内容のブログを書いたのは、ちょうど半年くらい前でしょうか。当時はIFAという概念を用いて魅力をさらに希少化させるためのテクニックをお伝えしました。

ただ、「ヒアリングを用いてどのように魅力を引き出していくのか?」というテーマについて、細かく記載をしていなかったかと思います。
本ブログでは魅力を引き出すための質問テクニックや考え方を記載したいと思います。


0. IFAとは?

I:insight (重要であること)
F:fact (事実)
A:attract (魅力)

IFAとは、上記の概念を略したものです。
下記の図をご覧ください。

ここでのキーワードは、「事実」「魅力」「重要」だと思っています。
このキーワードをもとに内容の要約をすると、

「事実」を装飾して「魅力」に変換をする。その前提としてその「事実」が「重要である」ことを気づいてもらう必要がある。

このように表現できるかと思います。
では、早速 本題に移りましょう。


1. ヒアリング時の「質問内容」を仕組み化していたときに感じたこと

ポテンシャライトは採用ブランディングというサービスがあります。1時間程度のヒアリングを2回させていただき、主に会社の概要や魅力について、あらゆる角度の質問をさせていただいております。
合計2時間という長いようで短い時間の中で、企業様からお話しいただく内容に対して被せて質問をさせていただくのですが、この質問内容の角度によって魅力の発掘/言語化/整理ができるかが決まります。

ただ、皆様ご理解いただいている通り、「ヒアリング中の質問」のスキルを文言化しようと思ってもなかなかできません。なぜならば、「その質問よかったよね」という評価を「尺度」で測ることが難しいからです。営業の実績や会社の売り上げ、学生時代のテストの点数は評価することが簡単です。簡単に順位もつきます。ただ、「質問」についての点数化については難しいと感じていました。
そこで、僕自身が採用ブランディングや採用広報のときに、どのような質問をしているのかを、過去のインタビュー動画をもとにまとめてみました。
そこで、分かったことがあったのです。それは、

「その事実(話)に対して「何のピース」をはめこんだら、その話の魅力が成立するのか」

これを確認するための質問をしていることがわかりました。次項でもう少し詳しく説明します。


2. 「ピースをはめこむ」とは何か?

少し遠回りした説明をしましょう。

皆さま、キャビアを食べたことはありますでしょうか?
僕は、食べたことがあるのですが、何かの料理にちょこんと小さく添えられていた記憶しかありません。また、そのキャビアが美味しいかどうかは分かりませんでした。
なぜ、その食べたキャビアが美味しいかどうか分からなかったのか?
それは、他のキャビアを食べたことがないからです。つまり他のキャビアと比較することができず、何を基準に美味しいかが分からなかったのです。ただ、他の料理と比較したときには、キャビアが美味しいかどうかはもちろんジャッジできます。ハンバーグと比較すると?生姜焼きと比較すると?ステーキと比較すると?など、他の料理と比較すると「あ、自分はハンバーグのほうが美味しかったかも」というジャッジをすることができます。

何が言いたいかというと、僕自身は「キャビア」についての知識がありません。そして数回しか食べたこともありませんし、味も覚えていません。そのため、恥ずかしさを堪えながら隣の人にこんな質問をするかと思います。
「このキャビアって、他のキャビアと比較して美味しいの?」
すると、こんな回答がくるかもしれません。
「山根さん、キャビア食べたことないんですか?この店のキャビアは本当に日本で1番美味しい位の味だと思いますよ」
なるほど。そうだったのか。自分が食べたキャビアはこんなにも美味しかったのか。こんな気づきを得られるかもしれません。
そして、僕は、次の日に会社のメンバーにこんな話をするかもしれません。
「昨日、●●というお店で食べたキャビアが本当に美味しくて、日本で1番おいしいと言っても過言ではないみたいだよ。(自分は美味しいかどうか分からなかったけど…)」
すると、会社のメンバーは「それはすごいな」と思うでしょうし、魅力的に感じるかと思います。

話が長くなりました。
「ピースをはめ込む」とは何かというと、ここで話をした

「このお店のキャビアって、他のキャビアと比較して美味しいのですか?」

という質問のことです。この質問をしなければ、自分自身が食べて体験したキャビアが「魅力的」であるかどうか分かりません。
この類の質問をすることによって、ヒアリング自体がものすごく価値のあるものになるのだと思います。


3. HR業界で最初に教えられる「競合他社との違いは何ですか」という質問は深い

僕は、2008年から人材紹介のビジネスでHR業界内での仕事をスタートしていますが、採用企業様(お客様)にヒアリングをする際には、「競合他社との違い」について必ず質問しなさい、と教育を受けていました。
正直、その教育を受けたときに、なぜなのか?とまで考えてもいなかったのが本音です。もちろん、その企業様を魅力的に語るために必要であることは理解をしているのですが、その質問をしたとしても良い回答が返ってこないことのほうが多くありました。

ただ、前項で記載した通り、「競合他社との違いはなんですか」という質問は、すごく雑な「ピースをはめ込む」というアクションの中の1つです。
何故かというと、「競合他社の違いはなんですか」という質問は、
「何でも良いので、競合他社との違いって何かありますかね?何でも良いんです。働いてる人でも、事業戦略でも、勤務地でも、勤務時間でも、福利厚生でも、何でもいいんですけれども何かありますかね?これ聞かなきゃならないので」
という質問になるからです。

皆さん、これを見たときに、「いやいや、山根さん、さすがにそんな雑な質問をしないよ」と思っていらっしゃるかもしれないのですが、自分自身のこれまでのヒアリングを振り返ってみると、目的/意図が無い雑な質問をしてしまっている経験はお持ちなのではないかと思います。
ただ、HR業界の経験がないメンバーにとっては、とりあえずこの質問をするだけで、回答者ができる方である場合はすごく良い回答をくださる一撃必殺の質問であることには変わりありません。


4. 質問の3分類について

ここでもう少し遠回りをしましょう。ただすごく大事な話です。
この「ピースにはめ込む」という話を深掘りをする際に一つ気づきがありました。それは、

僕らがヒアリング中にしている質問は、大きく3分類できるのではないか?

皆さん、最近実施したヒアリングをイメージしてみてください。この話は、HR業界に寄せておりますので、より情景がイメージしやすいように限定しながら話を聞いてみてください。例えば、「新規求人のヒアリング(現場に対して)」「自社の魅力の深堀り」「採用広報のインタビュー」などをイメージしていただけますでしょうか。

これらのヒアリングの際に、皆さまは準備してきた質問をされるのではないかと思います。それは全く悪いことではないですし、むしろそうすべきだと思います。ただ、いくら綿密に準備をしてきたとしても、回答者が自分(質問者)の理想としている回答をしていただけるかは分かりません。ヒアリングしてみないと、その撮れ高が分からないですよね。
そうなった時に、回答者の回答内容/方向性をコントロールできない中で、回答内容についての深掘りをする「質問」は無論重要なわけです。ここでどのような質問をすべきなのかは、その場の回答の内容によって大きく変動します。
では、本項の本題である質問の「3分類」について説明したいと思います。

 4-1. 事実を確認するヒアリング

1つ目は「事実」の確認(深堀り)です。ほとんどの質問は、この類の質問になるのではないかと思います。
実際にどのような質問をしているかというと、「具体的には?」という類です。つまり、回答者がご説明いただいた内容に対して、「さらに具体的に説明していただきたい」という意思表示をしているわけです。皆さま、ご経験があるかと思うのですが、回答者によって回答内容の粒度が本当に様々かと思います。とてつもないくらい端的に回答してくる方もいれば、1つの質問に対して10分程度かけて説明してくる人もいます。説明時間=的を得た回答では無いのですが、「事実」を深掘りする質問は大事なわけです。

 4-2. 動機(背景)を確認するヒアリング

2つ目は「動機(背景)」の確認です。
実際にどのような質問をしているかというと、「なぜ?」という類です。「なぜそのポジションを募集するのか」「なぜその事業を立ち上げたのか」「なぜ本社は存在しているのか」など、「なぜ」という質問は、僕らが当たり前のようにしている質問の1つです。

ただ、ここで1つ疑問が生まれます。ヒアリングの際にどのようなタイミングで「なぜ」という質問をする必要があるのか。それは「ポジティブな違和感」です。例えばこのような話を聞いたとします。
「当社の業界は今すごく成長しているので、当社も成長していくと思うんですよね」
ここでいう「すごく成長していて」というのは「なぜ?」と気になると思うのです。別の事例を見てみましょうか。
「当社はまだ20名のスタートアップなのですが、ベビーシッター制度を入れたんです」
え、「なぜ」 20名フェーズでベビーシッター制度を入れたのか?と気になりますよね。これが「ポジティブの違和感」です。ただ、ポジティブの違和感を感じるには、やはり一定の知識は必要になってきます。

人はなぜ違和感を感じるのか?
違和感とは、これまでの人生経験で蓄積された「個人の一般的な事象」との
ギャップです。
ただ、日本総労働人口である6,500万人の全員が、同じ「違和感」を感じることはないです。
なぜならば、個々人で別の人生を歩んできているからです。さまざまな人生があり、蓄積されてきた「当たり前(一般的な事象)」は異なります。
そのため、違和感を感じるポイントは微妙に異なります。
ただ、僕らはHRパーソンです。
HRパーソンはさまざまな企業様のお話を聞きます。ポテンシャライトは有難いことに、一般的なHR支援企業様と比較しても、すごく深いヒアリングをさせていただく機会があります(いわゆる採用ブランディングというサービスです)。採用ブランディングでは、経営者の方に対してすごく深めな質問を多数します。そのため、さまざまな企業様の事象を聞くことにより、この「違和感」を感じやすくなります。

話を戻します。前述した通り、違和感には様々な種類があります。
まずはネガティブな違和感。
「当社の給与制度には、見込み残業時間80時間が含まれています」
これに違和感を感じる方が多いのではないでしょうか。一般的には見込み残業時間は30〜45時間程度でしょうか(裁量労働制の類の場合)。ただ業務時間が長いことは、皆さまにとっても違和感が大きいことかと思いますので、これはネガティブな違和感と言えます。

次に何とも言えない違和感。
「●●」
ん?少々違和感がある…。言葉には言い表せられないような違和感。これは、自身のこれまでの人生経験から感じる違和感です。つまり、これまでの人生において蓄積されてきた資産と比較した際に、何とも言えないような「違い」を感じているのです。それが違和感になります。

最後にポジティブな違和感。
「当社は、日本で初めて●●という領域におけるチャレンジをした企業なのですよね。いやいや、当社なんて大したことないのですが…」
え、日本で初めてチャレンジをしている、という時点でポジティブな違和感ですよね。ここでいうと、「なぜ御社が●●という領域において、日本で初めてチャレンジをすることができたのですか?」という質問をすべきだと思います。ここで「なぜ」は使うべきなんだろうなと。

上記3つの違和感を記載しましたが、「なぜ?」と深掘りをすべきなのは「ポジティブな違和感」です。「ネガティブな違和感」については、ヒアリングしてみても良いのですが、ネガティブな事象になりますので、ポジティブな違和感を優先したほうが良いかと思います(もちろん、ネガティブな違和感はその理由 「なぜ?」 を聞いて、改善に向かっていくのも必要です)。ポジティブな違和感を深掘りすることで、新たな発見がある可能性が非常に高いのです。

 4-3. 魅力を確認(判明)するヒアリング

3つ目は「魅力」の確認(判明)です。
これは本ブログで最も伝えたい項目になります。つまり、「ピースをはめ込む」は、この類の質問になります。
本ブログの前段で遠回りしながら説明をいたしましたが、何かの事実を魅力的に表現するためには「比較」が必要であり、希少価値観点が高ければ高いほど、それはリスナーにとって魅力に変換されます。ただ、この希少価値観点を確認する手法が難しいですよね。
前項に「なぜ?」の話をしました。
おさらいになりますが、「なぜ?」という質問は「動機/背景」を問う質問になります。これまでの話を整理すると、

- 「具体的には?」という質問で事実の深掘りをする
- その事実にポジティブな違和感を感じた場合は「なぜそうなったのか?」を質問する
- 動機/背景をヒアリングできたら、その事実に希少価値があるのか「比較観点」における質問をする

こんな感じかなと思います。
だいぶ整理できてきましたね。

では、この「比較観点」をどのように質問をすべきなのかをもう少し詳しく解説いたします。
例えば、下記をご覧ください。

スピーカー
「当社は、Web広告業界においては幅広くサービス提供ができていて、ワンストップにサービス提供ができるんですよ」

リスナー
「なるほどなるほど、幅広いサービス/ワンストップというのは、“具体的に” どのような/幾つのサービスがあるのですか?」

スピーカー
「そうですね、当社は●●、▲▲、◯◯、□□というサービスがあります。直近3年でサービスの数が2倍以上になっています」

リスナー
「なるほど、直近3年でサービスの数をそこまで増やすことができたのは “なぜ” なのでしょうか?」

スピーカー
「当社にはサービス開発室という、新規サービスを立案をする部門があり、月に1回1つは新しいサービスが生まれているんですよね。」

リスナー
「ほー、そうなのですね、新規サービスを継続的に生み出そうという思想は “なぜ“生まれたのですか?」

スピーカー
「当社は、目の前の顧客を幸せにしたいという思想と、日本/世界の広告業界のアップデートをしたいという思想を持っています」

リスナー
「ありがとうございます。ちなみにWeb広告業界の企業様で御社ほど新規サービスを継続的にリリースできている企業様は他にあるのでしょうか?もし可能であれば定量的にお伺いしたいです。」

スピーカー
「それはですね…」
という具合です。

上記はこれまで説明をしていた内容を整理しておりますが、ヒアリングの順序はこんな感じになるかと思います。


5. ポジティブな違和感を得るためはどうしたら良いのか?

こちらテクニックを考えてみたのですが、思いつきませんでした…。ここでいうテクニックとは、時間をかけずにノウハウを知れば解決できる技のイメージです。
この「ポジティブな違和感」を得るには、やはり「経験量」が必要になってくるかと思います。今回主題にしている採用企業の「魅力設計」においては、「ヒアリングの機会の数」に寄りけりなのかと思います。
当社の話を少しだけさせてください。

当社はこれまで採用ブランディングという、企業様の魅力設計に220社ほど携わって参りました。
おそらくそのうちの8〜9割程度は僕自身が携わっています。難易度が高いが故に僕が実施することは問題ないのですが、経験量に帰属をするが故に、このままでは良くないと感じました。
そのため、ポテンシャライトでは2023年3月から、採用ブランディングミーティングにおいては事業部メンバーが全員参加可能な状態にしました。
実際のヒアリングの場で、どのような角度でヒアリングをしているのかを見てもらうことによって、感じることも多数あるのだろうなと思っています。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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