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プロジェクトマネージャーを類似6職種と比較しながら解説します

「山根さん、プロジェクトマネージャーの募集をすることになったのですが、やはりSaaS業界出身者の方が良くて、できればエンジニアリングをよく理解している方が良いと思っていて…」

先日、こんな会話がありました。僕としてはこの会話に強い違和感というか、この募集要件だと採用がかなり難しいなという感想を持ちました。

ただ、「なぜ」この募集要件だと採用が難しいのかを毎度説明しているのですが、そもそもプロジェクトマネージャーについて深く研究をしているアウトプットがなかったため、本ブログの執筆に至っています。

本ブログでは「プロジェクトマネージャー」というポジションを軸に、類似ポジションとの違いについても言及していきたいと思います。


0. プロジェクトマネージャーとは

プロジェクトマネージャーとは

プロジェクトマネージャとはプロジェクトマネジメントにおいて総合的な責任を持つ職能あるいは職務である。プロマネと略されることもある。 プロジェクトマネージャは、定義された範囲、定義された開始および定義された終了を有するあらゆる事業において、プロジェクトの計画、調達、および実行の責任を負う。

Wikipedia参照

ここで言う「プロジェクト」の定義は様々であり、システム開発、Webサイト制作、グラフィック制作、イベントなど様々な事象が該当します。皆様も「プロジェクト」という言葉をご自身の用途で使い分けていらっしゃるのではないかなと思います。

最も多く使われる場面としては「システム開発」かと思います。いわゆるシステムインテグレーターという業種におけるプロジェクトマネージャーというポジションが、採用市場においては最も知名度が高いと思います。

では、早速ですがプロジェクトマネージャー、そしてプロジェクトマネージャーの類似ポジションについて比較しながら説明したいと思います。せっかくですので、歴史を追って説明してみようかと思います。

※以下 「プロジェクトマネージャー」を「PM」と記載いたします。


1. PMとPMの類似ポジションを歴史から紐解く

 1-1. システムインテグレーターのPM

前項でも記載いたしましたが、「PM」と聞いて最も採用市場で見かけるのはこのシステムインテグレーターにおけるPMのポジションです。本ブログはPMにスポットを当てているため、システムインテグレーターについての説明は割愛いたしますが、端的に申し上げますと「システム開発における何でも屋」と表現すると適切かと思います。

つまり、システムインテグレーターのPMは、シンプルに「システム開発における進捗管理、ディレクション」を担当しています。
ポイントとしては、システムインテグレーターが「ウォーターフォール」という開発手法に昔から慣れ親しんでいる事です。ウォーターフォール型というのは「水が落ちる」と和訳され、つまりシステム開発においての役割が縦割りされているという表現がわかりやすいかもしれません。つまり、システムの「企画」をする方、システム開発の「管理」をする方(これがPM)、システム開発の「実装」をする方(システムエンジニア)、システム開発の「テスト」をする方など、システム開発をする上での「工程(フェーズ)」によって役割が分断されています。
それが故に、システムインテグレーターのPMはシステム開発における「実装(プログラミング)」をほぼほぼ担当しないです。採用市場において「手が動かないプロジェクトマネージャー」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?これはまさしくシステムインテグレーターにおけるPMのことを指しており、プログラミングの経験がないがPMをされている方を指しています。

もちろん所属している企業やその方の経験によりけりなのですが、システムインテグレーターのPMの方で技術的な知見を深く理解できている方はそこまで多くないと捉えても良いかと思います。

 1-2. Web受託系企業のPM

前項で説明をしたシステムインテグレーターと本項のWeb受託企業のPMは似て非なるものです。

Web受託型企業とは、Web系の開発プロジェクトを「受託」して開発する事業体です。システムインテグレーターは顧客先に常駐をして様々なシステムインテグレーター/SES と呼ばれる企業から出向した方々とプロジェクト開発を細かく分割して担当することが多いのですが、Web受託型企業は、そもそも大きな単位のWeb開発を「受託」するため、顧客先常駐ではなく社内に持ち帰り開発をすることが多いです。また、Web開発においてはウォーターフォール型の開発手法ではなく、「アジャイル開発」を適用している企業がほとんどです。アジャイル開発を和訳すると「素早く開発する」です。システム開発におけるプロジェクトの「スパン」を細かく分けます、例えば1年で大きなシステムを1つ開発するというわけではなく、1年を24のスパン(期間)に分け、24回システム開発におけるプロジェクトを繰り返すイメージです。スパン(期間)が短いが故に、PMはプロジェクトの管理をするというよりは、システムエンジニアやプログラマーと密に連携をとりながら、システム開発における進捗管理や助言、そして時にはプログラミングソースコードのレビューも実施することもあります。

つまり、前項のシステムインテグレーターのPMと比較すると、Web受託型企業のPMは、技術的知見を求められます。また、全く技術的な知見(つまりプログラマー経験)がない方が、本ポジションにアサインされる事はそこまで多くはありません。中にはいらっしゃるでしょうが、仕事をするときにかなり苦労するのではないかと思います。そのため、「手を動かせるプロジェクトマネージャー」というのはこの事業体に存在することが多いです。

Web受託型企業とは具体名を挙げると、ゆめみ社、テックファーム社、ピーシーフェーズ社、その他Webインテグレーター(トランスコスモス社、ネットイヤーグループ社)なども部署によっては該当します。

 1-3. Webサービス企業のPM

Webサービス企業とは文字通りWebサービスを持っている企業です。食べログ、ぐるなび、DMM、サイバーエージェント、メルカリなど様々な企業が該当します。
これまで説明した2つの事業体と比較すると、システム開発の手法はWeb受託型企業と近いです。つまりアジャイル開発やスクラム開発と言われる手法を導入していることが多く、スパン(期間)を細かく分けWebサービス(プロダクト)の開発に勤しんでいます。
ちなみに、Webサービス企業でよく見かけるエンジニアポジションとしては、

 - サーバーサイドエンジニア
 - フロントエンドエンジニア
 - iOSエンジニア
 - Androidエンジニア
 - インフラエンジニア
 - テックリード
 - エンジニアリングマネージャー
 - VPoE
 - CTO

などです。
これらのポジションは、規模感が大きくなればなるほど、網羅的に必要なポジション(役割)です。ただ、皆様お気づきかと思うのですが、「プロジェクトマネージャー」がありませんね。これは何故なのでしょうか。

本項は少し説明が長くなるのですが、アジャイル開発やスクラム開発に慣れてくると、プロジェクトマネージャーを配置しなくとも、各メンバーが短いスパンで自身やチームのタスクをきちんと管理し始めます。もちろんジュニアクラスのエンジニアは、チーム内における年長者がタスク管理をする必要があるかもしれませんが、ウォーターフォール型の開発手法と比較すると、アジャイル開発やスクラム開発におけるプロジェクトの進捗管理/ディレクションにおける優先順位はやや低めになっていることが多いです。
また、後述しますがWebサービス企業やSaaSと呼ばれる事業体においては「プロダクトマネージャー」が存在しています。プロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーの違いはまた後述するのですが、このプロダクトマネージャーは「プロダクト開発における責任者」と表現するとわかりやすいでしょうか。プロダクト開発は「エンジニアリング」「デザイン」そして「顧客からの声を反映させる」という役割があり、エンジニアのみならずデザイナーやカスタマーサクセス、そしてセールス、マーケティングなどのポジションの方とコミュニケーションをとることが多いです。あらゆるポジションの方とコミュニケーションを取りながらプロダクト開発を前に進め、成長させることがミッションです。プロダクトマネージャーがシステム開発における進捗管理/ディレクションに入る事はそこまで多くありませんが、ただプロダクト開発における上流工程はPMではなくプロダクトマネージャーがその役割を担っているため、プロジェクトマネージャーの必要性はやや薄いと言えるかもしれません。

ただ、前述した内容と少し矛盾がある話をすると、
エンジニアリングチームが巨大化してくると、システム開発におけるチーム(プロジェクト)が増えてきます。つまり、各チーム内(プロジェクト内)における進捗管理などは各々のメンバーができていたとしても、プロジェクトを跨ぐコミュニケーションがうまく取れないことも発生してきます。その際に、誰がその橋渡し役をやるのか、また自分の所属していないチーム(プロジェクト)の進捗をどのように把握するのか、などの課題が発生する事はよくあることです。
また、1つのチーム(プロジェクト)が巨大化することもよくあります。大きな機能を開発する際には、チーム(プロジェクト)をスモールにしにくいこともあり、30名以上のチーム(プロジェクト)でアジャイル開発やスクラム開発が発生することもあるでしょう。この場合、1人はPMのような立場の方がいらっしゃらないと、チームとして機能しないこともあります。

本項を整理すると、Webサービス企業はアジャイル開発/スクラム開発であるが故に、PMの必要性は他事業体と比べると低いのですが、企業規模が大きくなってくると徐々に必要性を増してくるため、PMの募集が出てくる。そんな流れです。
そのため、Webサービスにおける老舗/著名企業はプロジェクトマネージャーを見かけることがあります。例えば、カカクコム、ぐるなび、DMM、SMS、M3等2000年代にすでにご活躍されていたWebサービス企業は該当ポジションがある場合もあるでしょう。

 1-4. Webサービス企業のディレクター

本項は、前項で説明をした内容とやや重複するため、混同しないように説明したいと思います。

前項で「プロダクトマネージャー」の話をしました。ただ、プロダクトマネージャーという職種名は2018年ごろから徐々に使われるようになってきました。これはSaaSという業態が著名になってきたからだと思います。サービスでは自社のサービスのことを「プロダクト」と表現します。一方で、老舗/著名なWebサービス、つまり食べログ/ぐるなび/ホットペッパー/アットコスメなどは僕らのようなコンシューマーが使う、いわゆる「B to C」「B to B to C」のサービスは、「Webサービス」と表現されることが多いです。
「サービス」と「プロダクト」の明確な線引きはありません。「蝶(チョウ)」と「蛾(ガ)」の線引きと同じようなイメージかと思います。皆様も明確にどちらかを定義して説明する事は難しいと思います。
ただ、僕は下記のように解釈/定義を個人的にしています。

 - BtoC、BtoBtoCのWebサービスは「サービス」
 - SaaSは「プロダクト」

少しざっくりした説明で恐縮ですが、このようなイメージでしょうか。
話を戻します。なぜこのような説明をしたかというと、Webサービス企業は、「Webディレクター」というポジションがあります。直近3年以内にHR業界に参入された方は、このポジション名に馴染みがないかもしれません。ただHR経験が5年以上ある方はこのWebディレクターというポジションのほうがピンとくるかもしれません。端的に申し上げますと、Webサービス企業における「Webディレクター」とSaaS企業における「プロダクトマネージャー」は近しいポジションと言っても良いかと思います。補足をするのであれば、Webサービス企業では、エンジニア/デザイナー/Webディレクターの3者ですと「Webディレクター」が 最も力があるように思えます。これは企業によって様々かと思いますが、僕がHR側として働いていた感触です。一方で、SaaS企業はエンジニア/デザイナー/プロダクトマネージャーの3者は横並びといいますか、リスペクトしあいながら仕事をしている印象があります。誤解がないように申し上げると、Webサービス企業においてお互いをリスペクトし合っていないわけでは一切ありません。ただ、時代背景といいますか、エンジニアとデザイナーの重要性が理解され始めたのは2010年以降、いや2015年以降のイメージです。2022年現在においてはどのポジションもリスペクトされており、関係性良く仕事ができているかと思います。

何が言いたいかというと、「Webディレクター」と「プロダクトマネージャー」は近しいという表現をしましたが、プロダクトマネージャーのほうがエンジニアリングやデザイナーについての知見を求められるかと思います。なぜならばコミュニケーションを多く取る必要があり、且つそれぞれの業務内容や知見なども知っておく必要があるからです。
すみません、話を戻すと、Webサービス企業において前項した「プロジェクトマネージャー」は存在しています。一方でWebサービス企業の「Webディレクター」はプロジェクトマネージャーと異なるポジションであることをご理解いただけたらと思います。


2. プロジェクトマネージャーと似ている職種

次にプロジェクトマネージャーと似ているポジションをご紹介したいと思います。

 2-1. ITコンサルタント

アクセンチュアやフューチャーアーキテクト等、ITコンサルティング企業において、「コンサルタント」というポジションがあります。僕は「コンサルタント=お医者さん」と覚えるようにメンバーには伝えています。ITコンサルタントとはITにまつわるお医者さん、つまり相手にまつわる病気(課題)を見つけて薬(解決策)を処方する人のことになります。

ITコンサルタントとプロジェクトマネージャーは仕事を共にする機会もあります(多いと言えるかもしれません)。大手企業クラスですと、まず現状分析をきちんとして課題を抽出してから「システム開発」に移ることが多いです。誤解がないように申し上げますと、システムインテグレーターがシステム開発を請け負う際にも、きちんと現場分析はするようですが、ITコンサルタントはもう少し上流のイメージ、少し大げさな表現をすると経営分析/事業分析/そして社内における業務分析等をきちんと実施するイメージです。その上で課題を見つけてシステム開発で解決をしていくというフローです。
つまり、ITコンサルティング企業におけるITコンサルタントという職種が活躍した後に、システム開発におけるプロジェクトマネージャーが活躍するイメージでしょうか。そのため、この2つのポジションの関連性はあるのですが、少し活躍するフェーズが異なる。ちなみにプロジェクトマネージャーの方が「ITコンサルタントになりたい」というケースもあります。昔はそこまで見たことがないです。そんな違いだとご理解ください。

 2-2. Webディレクター(制作会社)

前述した「1-4. Webディレクター」は自社のWebサービスにおけるディレクターでしたが、本項はWeb制作会社におけるWebディレクターです。
HR業界の方は馴染みがあるかと思いますが、Webディレクターにおいては、「え、制作側?事業側?」というコミュニケーションがよくあるかと思います。本項は制作側の話です。

このWeb制作会社のWebディレクターの仕事と、システムインテグレーターのPMの仕事は近しいかと思います。Webディレクター(制作会社)はWebサイト制作におけるプロジェクトマネジメント、システムインテグレーターのPMはシステム開発におけるプロジェクトマネジメント。対象が違えど同じ類の仕事になります。ただ、Webサイト制作とシステム開発はやはり異なるため、スキルはやや異なります。

 2-3. PMO

PMOはプロジェクトマネジメントオフィサーです。端的に説明するとPMを統括するポジションと言えます。
巨大プロジェクトとなると、プロジェクトをさらに分割して10以上のプロジェクトを作ったりします。それぞれのプロジェクトが100名以上で構成されることもあります。もし仮に100名以上のプロジェクトが10以上存在すると、遅延するプロジェクトや炎上するプロジェクトも発生します。その際に誰がヘルプに入るのか?それ以前に誰が未然に防止するのかというと、このPMOなのです。
繰り返しになりますが、PMOはPMを統括するポジションです。そのため、PMよりは上位概念であると言えます。

 2-4. プロジェクトオーナー

POと略されることもあります。
プロジェクトオーナーは、企業によって定義が異なるように思えます。とは言いつつ、プロジェクトオーナーは「プロダクトマネージャー」と同じ類で使われることが多いです。最も多いパターンは、プロダクトマネージャーの下のポジションとして使われることです。プロダクト開発において、開発箇所をいくつかに分割して、その分割した数だけプロジェクトオーナーを配置する。その割り振られた箇所に従って責任を持つのがプロジェクトオーナーの仕事です。
そのため、プロダクトマネージャーとは異なるポジションと言えるかと思います。ただ、プロジェクトオーナーの採用ターゲットにおいて、プロダクトマネージャーとしての経験を記載されている場合があります。プロジェクトオーナーもプロダクトマネージャーも進捗管理をすることには変わらないので、その部分の経験については生かすことができるのではないか、という判断かと思います。そのためポジションは異なりますが、生かすことができる能力はあるのではないかなと思っています。


3. 過去に作成したPM界隈のポジションとの違いの図を公開

IT業界×HR経験をお持ちではない方にとって、本ブログの内容を瞬時に正確に理解することは難しいかもしれません。そのため、当社 社内においても勉強会を実施しているのですが、その内容を幾つかご紹介したいと思います。

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最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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