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「ノーレイティング」についてポテンシャライトの理解/解釈をまとめました

「山根さん、一般的な人事制度ではなく、ノーレイティングに興味があるのですが」

お客様から1ヶ月前にいただいたお言葉です。

僕自身も、1年ほど前からお客様の人事制度構築に入るなかで、「ノーレイティング」の存在自体は知っていました。言葉の定義も理解しているつもりでしたが、本質的にノーレイティングのメリット/デメリットを詳細に把握できておらず、一旦調査することにしました。

結論として、ノーレイティングを誤解されている方がほとんどではないかと思います。僕もその一人でした。本ブログでは、僕自身がたどり着いた結論についてご紹介したいと思います。


1. ノーレイティングとは?

ノーレイティングとは
社員をランク付けしない人事評価のこと

ノーレイティングという言葉のミスリードは、「評価をしないこと」と思っていらっしゃる方が多いことかと思います。そうではなく「レイティング(ランク付け)しない」ことになります。

人事評価を経験された方はご理解いただけると思いますが、半期に1回、もしくは1年に1回のタイミングで会社から「評価」を受けます。例えばS/A/B/C評価などの類で、S評価はすごく良い、A評価は良い、B評価は普通、C評価は悪い、などの評価を会社から下されることがあるのですが、

これらの「レイティング(ランク付け)」をしないという意味になります。

繰り返しになりますが「評価自体をしない」ことではありません。


2. ノーレイティングという名前がミスリードをしている

調査をしていて感じたのですが、「ノーレイティング」は、やはり「評価をしない」と捉えてしまうため、ミスリード感が非常に強かったです。あくまで「レイティング(ランク付け)をしない」ことである、という風に頭を切り替えるのは最初は時間がかかりました。

ただ、「レイティング(ランク付け)をしない」ことによる本質的なメリットをなかなか見つけることができませんでした。日本でノーレイティングを導入している会社はそこまで多くなく、レイティング(ランク付け)をしないことによるメリットについて言及している記事はほぼありませんでした。そもそもノーレイティングはアメリカから発祥したものだと理解していたので、海外のサイトをたくさん調査してみたところ、下記の画像にたどり着きました。

スクリーンショット 2022-08-20 9.27.55

※ source:Reflektive.inc

こちらをご覧いただければご理解いただけると思うのですが、
レイティング(ランク付け)をすることにより、どんな評価であっても従業員の会社におけるエンゲージメントが下がるというデータが出ています。

上記の図をなぞる形で説明をすると、
仮に最高評価だったとしても評価後の会社に対するエンゲージメントは15%下がっています。そして、A評価/B評価/C評価の場合、エンゲージメントが85%下がっている、というデータが出ています。

このデータを信頼するのであれば、レイティング(ランク付け)をすることによるデメリットは非常に大きいです。仮に相対評価で人事評価制度を構築している会社であれば、S評価をつける方が全体の中から15%程度かと思うので、残りの85%が半年に1回、ないしは1年に1回エンゲージメントが85%下がるという行為を繰り返しているということになります。これはどんな人事組織への施策と比較しても明らかにデメリットが大きい、という結論になります。良かれと思って評価をしたのに、全体の85%のメンバーのエンゲージメントが大幅に下がっているのはすごく良くないですよね。

話を戻します。
上記の海外のデータとは矛盾してしまうかもしれないのですが、日本の従来の人事制度において「レイティング(ランク付け)をしないこと」について、強烈な嫌悪感がある方は、肌感覚としてそこまで多くはないのではないかと思います。おそらく、このデータを初めてご覧いただいた方のほうが圧倒的に多いかと思います。

何が言いたいかというと、「レイティング(ランク付け)をしない」ことが、日本におけるノーレイティングの「目的」ではないと思っており、本来 人事制度において解決したい課題は別の内容なのではないか、そう感じたのが所感ではありました。


3. 従来の人事制度の問題点

日本の人事制度において、何の課題を解決しなければならないのかをピックアップすることにしました。

前提に遡ると、
すべての仕事において「施策」ドリブンになってはならないと思っています。つまり、何か「課題」があって、その課題を解決するために「施策」が存在します。どんな課題を解決するかが決まっていないのにもかかわらず「施策」を実行したとしても、「目的」がないため失敗してしまうことが多いかと思います。

話を戻すと、「ノーレイティング」を導入することを「目的」にしてしまうのは本質的ではないです。なぜならば、皆さまは「レイティング(ランク付け)をしない」ことが目的ではないはずだからです(仮に「レイティング(ランク付)をしない」ことが目的である場合は全く問題ありません)。

では、日本の人事制度において課題に挙げられる内容は何があるのでしょうか。まとめてみました。

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ノーレイティングに関する記事に限らず、直近の人事制度に対して言及している記事をたくさん見てみました。その中で、人事制度における課題をできるだけ細かく整理して見たのが上記のスライドになります。

もう少し課題を整理してみました。下記をご覧ください 👇

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そして、これらを「解決策」に分類したのが下記のスライドになります 👇

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そして、さらに解決策を詳細に記載した内容が下記になります 👇

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話がずれないように改めて記載をすると、
ノーレイティングを導入することが「目的」になってしまうと、皆さまが人事制度において感じている課題を本質的に解決することができないと感じています。そのため、従来の日本の人事制度の課題点を整理しているというフェーズです。

上記で整理できた従来の人事制度の課題点において、シンプルに整理すると下記のようなスライドになります 👇

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ここでいう、⑤の項目については「ノーレイティング」で解決できるかと思います。そのため、⑤についての課題感が大きい会社は、迷わずにノーレイティングの導入をすることをお勧めします。

一方で①から④の課題感がある企業様は別の施策にする必要があります。

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こちらに記載がある通り、①から④については「ノーレイティング」で解決することが「できない」課題になります。


4. (改めて)ノーレイティングに対してのミスリード

日本のノーレイティングについての記事を見ていくと、ノーレイティングの説明はもちろんあるのですが、「評価の期間」「評価の仕方」についての様々な言及があります。

これを読むとノーレイティングについての理解の誤解が生まれます。

例えば、

1. ノーレイティングは、ランク付けをしないという意味なため、リアルタイムにフィードバックをしてそのフィードバック内容を参考に最終的に評価をする

2. ノーレイティングは月に1回評価をする。ただその評価をするときにレイティング(ランク付け)はしない。本来半年に1回評価していたものを、月に1回消化することによって半年に1回の評価における作業負荷を減らす

3. ノーレイティングはランク付けをしないことなので、昇給額の決定権はマネージャー(評価)が持っており、マネージャーが自由に決定することができる。

この3つの記載内容=ノーレイティングというわけではありません。これがミスリードの1つだと思います。


5. ノーレイティングとリアルタイムフィードバックは別

これまで記載した内容を見るとご理解いただけるかもしれないのですが、

ノーレイティングはランク付けをしないという意味です。
それとは全く別の概念として「リアルタイムフィードバック」が存在しています。

なぜここでリアルタイムフィードバックの話をしているかというと、ノーレイティングは従来の人事制度と比較すると「評価期間が短い」と思い込んでいる方がいらっしゃるからです。

何度も申し上げますが、ノーレイティングはあくまでもランク付けをしないという意味。そのため従来の人事制度に何も考えずにノーレイティングを導入すると、これまでS/A/B/C評価を下していたものを、一切ランク付けをせずに報酬を決定する、という意味合いになります。つまり評価の「期間」は関係ありません。

上記の話とはまた別の話として、

「半年に1回の人事評価/評価面談でしか、マネージャーがメンバーに対してフィードバックをする時間がないため、これだと社員の成長を促進できない。そのため半年に1回の面談を月に1回に短縮させて、フィードバックサイクルを速くする」

という課題/施策が存在するのです。

上記の話とはまた少し異なる角度として「リアルタイムフィードバック」が存在します。リアルタイムフィードバックとは、「気づいたときにリアルタイムにフィードバックをする」という意味です。つまり、わかりやすく言うと「ユニポス」「Colla」などを用いて、何か良い行動が見受けられた際に、「リアルタイム」に、気軽にフィードバックを繰り上げる、それがリアルタイムフィードバックです。

話を戻します。

ノーレイティングと「評価期間」「フィードバックサイクルのスピード」は別です。ただ、ノーレイティングをするうえで、評価期間やフィードバックサイクルの話は関連性があります。そのため混同して強引に理解してしまっている方がいるのは個人的にはミスリードだと思います。


6. では,何が正解なのか?

結論としては、

「御社が人事制度について感じている課題を本質的に解決するだけ」

これに尽きるかと思います。

レイティング(ランク付け)をすること自体に課題を感じているのであれば、ノーレイティングにすれば良い。

評価期間が長く、社員が不満を感じているのであれば、評価期間を短くすれば良い。

評価ではなくフィードバックの回数が少ないと感じているのであれば、1on1ミーティングを導入すれば良い

1on1ミーティングだけだとフィードバックサイクルが遅いのであれば、リアルタイムフィードバックを導入すれば良い

目標評価が機能していない。なぜならば、評価期間中に目標が変わってしまうため、正当な評価ができないと感じているのであれば、評価期間中に目標を変える権利を持たせてしまえば良い

会社が決めた評価「項目」で、どうしても評価しきれない職種が発生してしまうのであれば、職種ごとに評価「項目」を設定する権利をマネージャーに持たせてしまえば良い

従来の人事制度の課題点を記載しましたが、基本的には今抱えている課題を解決するに過ぎません。


7. ノーレイティングは、人事制度における1つの課題を解決しているに過ぎない

本ブログにおける結論になりますが、僕は下記と解釈しています。

「ノーレイティングは、ランク付けをすることに課題を感じている企業が、ランク付けを撤廃するアクションのこと」

ノーレイティングを運用するにあたり、その周辺にある評価期間や評価者、フィードバック期間などはある程度 整備する必要がありますが、あくまでノーレーティングとは上記の解釈で良いかと思います。

そのため、御社が従来の人事制度において解決したい「課題」を明瞭にした上で、御社なりの独自の答えを出していただいて、人事制度の内容を追記をしていただけると良いかと思います。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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