スタートアップのバリュー設計の「手法」を公開します
「山根さん、4月に全社員で合宿に行くのですが、バリューの設計のお手伝いをしていただけませんでしょうか?」
というご依頼をいただいたのが2022年の3月でした。
こちらの企業様は、2022年1月からミッション/ビジョンの策定に入らさせていただいておりました。ミッション/ビジョンを作成した後は、そのミッション/ビジョンを達成するために必要な「行動指針」、つまりバリューの設計をすることが好ましいと個人的には考えています。
そして、今週末にその企業様の合宿に参加させていただきバリュー設計をして参りました。その合宿においてバリュー設計をどのような流れで進めたのか、などを公開したいと思っておりますので、是非ご覧ください!
0. (前提)バリューとは?
バリューとは:
ミッション/ビジョンを達成するために必要な「行動指針」のこと。
経営者や人事でなければ、ミッション / ビジョン / バリューの違いを正確に語れる方は少ないのではないかと思います。そこで、下記の図をご覧ください。
この図を見ていただければ違いをご理解いただけるかと思います。
ミッション :「なぜやってるのか」
ビジョン :「どこに到達したいのか」
バリュー ;「ミッション/ビジョンを発生するための行動指針」
「行動指針とは何か?」という問いに対しての答えは「その会社の社員として、判断に迷ったときのコンパス」といった表現でもわかりやすいかもしれません。
今回は、「バリュー」についての話になります(ミッション/ビジョンと混同しないように)。
1. バリュー設計の前にインプットすべきこと
さて、早速バリューの設計をしよう!と言いたいところなのですが、バリュー設計を具体的に進める前に、会社のHR (人事関連)の全体感を把握することが重要です。
- そもそも、何のためにバリューを設計するのか
- 会社の組織作りをするにあたり、重要な事は何か。その中でバリューはどのような立ち位置なのか
などをご理解いただいたほうが、作成するにあたり納得感も増すかと思います。そのため、今回の企業様に対しても、バリュー設計前に下記の内容を共有しました。実際に使ったスライドをいくつかこちらに貼りたいと思います。
こちら一部の内容にはなりますが、このあたりの枠組みをご理解いただいたうえで、実際のバリュー設計をスタートして参りました。
2. バリュー設計の流れ
下記をご覧ください。
結論をまずご覧いただいてるのですが、このような流れで今回は進めました。一つずつ説明して参ります。
2-1. introduction
こちらの内容は、前述した「1. バリュー設計前にインプットすべきこと」と同様の内容になります。そのため、本項目では割愛いたします。
2-2. Output
ここでは「御社を表現するワード」をとにかく多くアウトプットする作業をします。
具体的には、ポストイットにとにかく思いついたものを書いて、机に貼り付けて行きます。とにかく「発散」する時間とご理解いただき、自分の意見を制御する必要はありません。
少し細かい話をすると、
・表現: 御社で働くにあたり重要な要素 / 御社っぽい/御社らしい
・ワード: 形容詞がベスト。名詞でもok。短文でもok
というポイントを抑えていただき作業を進めていただけると、その後のワークが進めやすくなります。
個人のワークをしていただいた後は、各チームの中でそれぞれ共有してみてください。自身が気づかなかった御社の「らしさ」を他のメンバーが感じていることもあったりします。また、他メンバーがどのように自社を感じていたのかを知る機会にもなります。
2-3. Categorize
次に、アウトプットした意見(ポストイット)をカテゴライズする作業になります。
このワークの前に、「発散」をしたため、似たような意見が机の上に転がっている状態です。ただ、自身が書いた意見で似通っている意見も複数あるでしょうし、また他メンバーが書いた意見と自分が書いた意見が被っているものも存在しています。
そのため、チームの全メンバーが書いた意見をカテゴライズしてみると、いくつかに分類することができます。
少し細かい話をすると、
- ご注意点
- 少し粒度を細かくすることを意識してみてください
- 例
- マインド系:達成意欲 / 当事者意識 / ハイモチベーション など
- 雰囲気 :賑やか / スマート / 黙々 など
というポイントを押さえていただき、ワークをしていただければと思います。
また、カテゴライズの最中に、分類することができない意見も発生するかと思います。その場合は「その他」と言うグループに分類し、後ほどその意見が重要であるかどうかをもう一度検討する、などのアクションが良いかと思います。
2-4. naming①+priority
カテゴライズしたものに「名前」をつける作業です。
カテゴライズをしている最中に、ある程度名前を設定している場合もあるかと思いますが、ここで言うネーミングは割と大雑把なネーミングで構いません。なぜならば、このバリュー設計のワークの終盤に、ネーミングを整える時間を確保しているからです。
また、カテゴライズしたものについて、プライオリティー(優先順位)を設定します。
優先順位を設定する理由は、この時点でカテゴライズした個数が6つ以上だと、この後のワークにおいて時間内に収まらないことが多いため、優先順位を設定しておくことによって、ワークをスムーズに進めることができます。
誤解がないように申し上げますと、今回のワークは多くのメンバーの時間を割いて実施しているため、このワークにおいてきちんとした成果を出すにあたって、優先順位をつけています。カテゴライズした個数が多かったとしても、ワークの時間内に全てにおいて、各チームのバリューのリテールまで詰められれば問題ないです。
2-5. description
ネーミングしたものに「説明文」を加える作業です。
下記をご覧ください。
前者がポテンシャライトのバリュー「Top insight」の説明文(description)です。
後者はマネーフォワード様のバリュー説明文を記載させていただきました(Webに掲載されている内容をそのまま転記)。
皆さんも自社/他社のバリューをご覧いただく際に説明文を読むことも多いかと思います。バリューはキャッチーに作成することが多いですが、説明文は具体的に書かれたほうが良いです。この説明文を読んで、各メンバーがバリューの存在を理解しようとします。
また、説明文の文字数にルールはありません。ただ、長すぎても短すぎても良くありません。そのため、今回のワークでは「最低100文字」とさせていただきました。100文字は説明文としては「普通」くらいの文章量かと思います。
2-6. presentation
作成いただいたバリュー+説明文を発表いただきます。
複数のチームに分けてワークをしていただいたため、他のチームがどのようなバリューになったのかも、チームごとに発表し合っていただくことにより、知っていただく目的もあります。
発表方法としては下記です。
2-7. closing
最後にファシリテーターからの締めの言葉。
そして代表からも一言いただいて、お終いとなります。
3. バリュー設計を全メンバーで実施する理由
まず前提として、僕はバリューはボトムアップで考えたほうが良いと思っています。その理由をいくつかご紹介したいと思います。
3-1. 実務の大半を担当するのはメンバーだから
バリューは「行動指針」です。つまり、仕事をするにあたっての「コンパス」になるわけですが、その仕事(実務)を実施するのはほぼメンバーです。
そのため、バリューを意識してもらいたい場面が多いのはメンバーであって、メンバーに最も深く理解してほしいです。
バリュー策定をメンバー中心で実施すると、実務を中心に取り組んでいるメンバーからの意見を多く反映することができるため、メンバーに納得感も持ってもらえやすくなります。
3-2. 自分たち(メンバー)が作ったという認識を持ってもらうため
何事も「与えられる」よりは「自分で作った」ほうが自分事化しやすいです。繰り返しになりますが、バリューを最も体現して欲しいのがメンバーです。実務を行うメンバーが、自分たちでバリューを設計した、と言う認識を持ってもらうだけで、その後に入社をしてきたメンバーに対してバリューを「浸透させる側」に立ってもらうことができたりします。
もし経営陣側だけでバリュー設計をして、メンバーに「バリューが完成しました」と伝えた場合、経営陣側からメンバーに対してバリューの「理解」と「浸透」は必須のアクションになります。もちろん、バリューを策定するタイミングで在籍していたメンバーとそうでないメンバーは、必ず発生してしまうのですが、出来る限りバリューの設計に携わっていただけると良いかと思います。
3-3. バリューを好きになってもらいやすいため
メンバーにバリューを好きになってもらえると、会社全体に浸透するスピードはものすごく早いです。一方で、なんとなく設定されオリジナリティーがないバリューは、ただの置き物になってしまうことが多いです。
自分たちで策定したバリューは愛着が湧く可能性があるでしょうし、バリューの「体現者」になっていただける可能性も高まります。
4. バリュー設計における細かいテクニック
複数社のバリュー設計に携わって、また当社ポテンシャライトのバリュー/カルチャー設計を頻繁に実施して、気がついた細かいテクニックをご紹介したいと思います。
4-1. 経営陣はディスカッショングループに入らない
会社の規模感にもよりけりですが、経営陣がグループに入ってしまうと、メンバーが100%の本音を出さないことも多いです。また、直近入社したメンバーは、まだ自分の「見え方」を気にしていたりするので、こちらも本音が出てこない場合もあります。
そのため、会社の代表はグループには入らないことが好ましいです。小規模な企業様であれば、取締役/執行役員はグループに入っても良いかと思うのですが、割と経営側とメンバーの年次やスキルが大きく離れている場合は、取締役/執行役員を含めた経営陣はグループに入らない方が本音の内容のアウトプットにたどり着ける可能性が高いです。
4-2. 最短で2時間半はかかる
前述したバリュー設計の一連の流れを進めていく場合、最短で2時間半は時間を確保したほうが良いです。
短い時間で決めようとすると、結局全員で集まった意味がないですし、重要なのは、そのワークに携わった全員が心の中に思っている「御社らしさ」をとにかく言い切った状態、そして整理された状態を納得感を持って作ることが個人的に重要だと考えています。
そのため、ワークの序盤にある「アウトプット」のフェーズは20分程度は確保したほうが良いかと思いますし、ネーミングやディスクリプション設計もきちんと時間をかけたほうが良いかと思っています。
4-3. ファシリテーション役をきちんと決める
バリュー設計に重要なのはファシリテーターです。
今回のブログでは、多くのメンバーを巻き込むことを推奨しているため、仮にそのワークがスムーズに進まなければ、会社としてはもちろん痛恨だと思います。
また、事業会社に所属されている方で、バリュー設計を人生で何度もファシリテーションする方はほぼいらっしゃらないかと思います。なぜならば、バリューは一度決定してから、即座に変更される企業様はおそらくほぼないからです。もしあったとしたら、バリュー設計の仕方に問題があったのかもしれません。
ただ、誤解がないように申し上げると、会社の「人数」「事業」「フェーズ」が変化すると、求められる行動もやや変化してくるのではないかと思います。そのため、会社の状況が大きく変化した場合は、バリューを「変更」するのもありです。現に、急成長中の企業様が新しくバリューを「追加」したり、「作り直す」ことを実行している企業様は存在しています。
話を戻して、人生で何度も携わることがないであろうバリュー設計は、ファシリテーションをするスキルが極めて特殊であり、外部にお願いするのも手なのではないかと個人的には思っています。
4-4. グループごとにワークの進捗に差異が生まれてくる
いくつかのグループに分けてワークを実施するため、進捗に差異が発生することが多いです。
例えば、「まずやってみよう」というグループと、「え、この言葉の定義って何?」というグループが発生した場合、進捗は2倍くらい差異が出てしまう場合があります。
ワークを2つ程度実施してみると、大体進捗がわかってくるので、少し遅れてしまいそう?と思ったグループにはフォローを入れたほうが良いかなと思います。
最後に
皆さんいかがでしたでしょうか。
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