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[2nd step] ベンチャー企業のフェーズごとの違い

「ベンチャー企業と大手企業のどちらが良いのか?」

様々な方面においてこのディスカッションがなされていると感じています。ただ「ベンチャー企業」の定義が非常に曖昧です。僕が感じるのはベンチャー企業の「フェーズ」において雰囲気/環境が異なると思います。

本ブログでは、ベンチャー企業の「フェーズ」を細かく分けた上で、少しだけ大手企業との比較を言及したいと思います。


0. なぜこのブログを書いているのか?

当社ポテンシャライトは、ベンチャー企業のHR支援をしている企業です。採用代行/コンサルティング、人材紹介、システム(プロダクト)の事業を持っています。これまで約5年間、様々なベンチャー企業の内部に入り込み、採用活動の代行をしてきました。そこで強く感じたのは、「一口にベンチャー企業といっても、様々なフェーズが発生している」ということ。

設立1ヵ月目の2名のベンチャー企業の支援をしたこともありますし、設立3年目の30名のベンチャー企業設立8年目の150名のベンチャー企業の支援をしたこともあります。これらの企業様は状況や雰囲気(カルチャー)がものすごく異なります。これらを全て「ベンチャー企業」とまとめてしまうのは、サッカーとバレーボールとゴルフを同じカテゴライズにしているようなものだと感じたのです。

僕はこれまで15年程度、HR業界で仕事をしています。ベンチャー企業に特化し始めたのは直近5年間ですが、数年前に「フェーズごとにこんなにも異なるのか」と気づけました。
ただ、本ブログをご覧いただいている方で、「ベンチャー企業で働いたことがない方」もいらっしゃるかと思います。その類の方が「フェーズ」を働く前から理解することはほぼ不可能かと思い、本ブログを書いております。


1. ベンチャー企業の「フェーズ」とは?

ポテンシャライトが取引をしている企業の80%は数千万円以上の資金調達を実施しています。ベンチャーキャピタル(ベンチャー企業に対して資金を投資する団体)が、将来的に成長が期待されるベンチャー企業に数千万円〜数億円、大きい時は数十億円の資金を投資しています。

どんなに良いビジネスアイディア、プロダクトだとしても、それを早期にスケール(大きく)させるためには、一定の資金が必要です。トレンドの移り変わりが早い昨今の世の中において、世界中の企業が様々なアイディアを形にし、日々スケールさせています。

その証拠として、Uber eatsが多くの国で使用されていたり、Netflixが世界中で見られていたりする世の中です。この2つは直近5年間で一気に成長しています。日本にも同じようなサービスは存在していますが、この2つの企業に遅れをとってしまっています。

何が言いたいかというと、良いビジネスアイディアは世界中で日々生まれており、そのアイディアを形にするまでのスピードは非常に重要になるのです。そのため、ベンチャーキャピタルからの資金調達は、ベンチャー企業が早期に成長していくために非常に重要であることをご理解ください。

※誤解がないように申し上げますが、ベンチャーキャピタルから資金調達をせずに上場する企業さまもいらっしゃいます。そのため、企業成長に対して「必須」というわけではありません。

話を戻します。
企業の「フェーズ」ですが、このベンチャーキャピタルの投資額である程度判断できます。

◆各フェーズの資金調達額
 - シード期  :数千万円〜1億円程度
 - シリーズA:1〜5億円程度
 - シリーズB:7〜15億円程度
 - シリーズC:20〜35億円程度

※こちらはあくまで「目安」です。

フェーズが後ろになるにつれて金額が大きくなっています。これにはもちろん理由があります。その理由は後述するとして、ひとつひとつフェーズの説明をしてまいりましょう。



2. シード期

ベンチャー企業の設立直後で、事業(プロダクト)の構想段階、もしくは試作品のフェーズです。
どの業界で、どの課題解決をしていく事業なのか、ぼんやり見えてきているフェーズです。このフェーズは、存在するのは人 (メンバー)だけです。ただ「大きなことを成し遂げよう」という 志 は非常に高く、熱量も非常に高い状態であることが多いです。

また、このフェーズにおいて、なぜベンチャーキャピタルや個人投資家が多額の資金を投下するのか。1つの答えは「人の魅力」です。「このメンバーであれば大きなことを成し遂げられそう」という望みで投資を実施します。シード期から資金を集められている時点で、魅力的なチームが存在していることがわかります。

 2-1. シード期の「人数」

社員数が1〜5名程度です。
代表と創業メンバーのみで形成されていることが多いです。そして、それに加えて社員を5名前後採用することもあります。職種は会社によって様々です。ビジネスサイド、エンジニア、バックオフィスなどどの職種に何名ずつ必ず存在すると言う事はなく、「創業メンバー」の強みがそのままその会社の強みとなっています。

 2-2. シード期の「雰囲気」

創業メンバーのパーソナリティによって雰囲気は大きく異なりますが、このフェーズは全メンバーがワーカーホリックであることが多いです。シード期は売上を作ることができていません。つまり、赤字を垂れ流している状態です。そのため、1日でも早く売上を創出しなければならない、というプレッシャーと常に戦っているフェーズです。そのため、「とにかくやれることは全力でスピーディーに全てやろう」という雰囲気であり、業務時間に関しての言及がほぼない状態です。


3. シリーズA

事業(プロダクト)が、顧客が利用できる状態のフェーズです。
つまり、顧客に対して作り上げた事業(プロダクト)がきちんと受け入れられるのかの「検証」をしているフェーズと言えます。シード期において、プロダクトの企画を行う際に、どんな「ターゲット(顧客層)」に対して、どんな「課題」を、どんな「機能」で解決していくのかを細かく設定しています。
ここで言う、ターゲット/課題/機能のいずれかがずれていた場合、プロダクトとしては成立しないことが多いです。一方で、想定していたターゲット/課題/機能ではなく、新たなニーズを発見することもできます。ニーズに対してマッチするようにプロダクトを開発し直す、そんなフェーズでもあります。
そのため、とにかく作っては壊し、作っては壊しの繰り返しをして、狙ったターゲットに対して課題解決ができるプロダクトにブラッシュアップすることを優先するフェーズです。


 3-1. シリーズAの「人数」

10〜30名程度であることが多いです。
このフェーズにおいて、数十名の大量採用をすることは少ないです。なぜならば、まだプロダクトが市場のニーズに対して完全にマッチしているとは言えないからです。たまたま顧客から受け入れられている可能性もありますし、単純にセールスの社員が優秀だったから、という可能性もあります。
また、個人的な所感として、このシリーズAのフェーズがベンチャー企業にとって最も難しいフェーズとも言えます。シード期はビジネスアイディアが良く、プロダクト開発をするエンジニアが優秀であれば、割と早期に突破することもあります。ただシリーズAは、「正解」を探す作業をできるだけ早いスピード感で、精度高く続けなくてはなりません。この回転は非常に重要で、むしろ正解にたどりつかない可能性もあります。そして、正解にたどりつかないのは「メンバーの実力」が伴わなかったのか、そもそも「プロダクト」が市場のニーズにマッチしなかったのか、この見極めが非常に難しいです。

 3-2. シリーズAの「雰囲気」

シード期よりも人数が増えるため、やや会社っぽくなってくるフェーズです。前述した通り、とにかく早いスピード感で、プロダクトを検証しなくてはならないため、何もかもスピーディーに進める必要があります。また、職種を横断したミーティングも増えてくるため、あらゆるタイプの人材がミーティングをすることにより、様々なハレーションも発生するのがこの時期です。
そのため、ミッション/ビジョン/バリューなどをきちんと設定しようと経営陣が提案をするのもこの時期であることが多いです。この時期でジョインをすると、「会社づくり」を経験することができるため、個人的にはお勧めのフェーズになります。


4. シリーズB

シリーズAでプロダクトが市場にマッチしているのか「検証」を終え、黒字化を目標に「拡販」をするフェーズになります。ただ、拡販のみをするのではなく、プロダクトの機能の追加、優秀な人材の採用、設備投資などあらゆる事項に対して資金をダイナミックに使います。
前述した通り、シリーズAと比較して「資金調達額」は格段に増え、10億円前後であることが多いですが、シリーズBのフェーズで20億円に近い金額を調達することもあります。
プロダクトが市場にマッチしていることを確認し終えたフェーズであるため、大手企業(エンタープライズ)向けに提案をし始めるのもこのフェーズになります。

 4-1. シリーズBの「人数」

30〜100名程度になります。
人数幅が広いように思えますが、一概に投資の各フェーズにおいて、「人数」が起因しているわけではありません。つまり「50名を超えたらシリーズBになる」というわけではありません。何度も同じことを申し上げますが、シリーズAでプロダクトが市場にマッチしているかの「検証」をある程度終えた時点の人数となることをご理解ください。その最小人数イメージは30名程度かと思い、そう記載しています。また、最大人数を100名にしていますが、100名以上の場合ももちろんあります。何故かと言うと、複数事業を展開している会社の中で、1つの事業が投資対象になっている場合もあるからです。その場合は、「社員数は100名だけれども、投資対象となる新規事業部は50名程度」と言う場合も発生することをご理解ください。

 4-2. シリーズBの「雰囲気」

シリーズAと比較すると「カオスさ」は、やや軽減されます。これまでは、とにかく「プロダクトが市場にマッチしている」ことを検証することを第一に考えていたフェーズでしたが、このフェーズからは「拡販」フェーズに入るため、何より社員採用が最も大きなポイントの1つになります。つまり、採用活動で会社を魅力的に表現するために、人事制度/福利厚生の設定をしたり、ミッション/ビジョン/バリューなどを設定したり、浸透させたりすることにも注力を開始します。そのため、シリーズAまでは、働き方の類の改善は少なかったかと思いますが、シリーズBになるとオフィスへの投資なども増えてきます。
また、このフェーズになると、黒字の会社も出てきますし、資金調達額が大きいため、年収1000万円以上の社員を採用する、などの動きもあります。外部から取締役クラスの方がジョインすることもあり、それまで経営陣の雰囲気=会社の雰囲気であったかと思うのですが、新しい雰囲気が発生するタイミングでもあります。


5. シリーズC

シリーズCはシリーズBと比較して、さらに「拡販」を強めるフェーズです。特にマーケティングに予算を割くことが多く、テレビCMを開始するのもこのフェーズであることが多いです。蛇足ですが、シリーズBフェーズはタクシー広告が多かったりするため、何となくご認識いただければと思います。
また、シリーズCは「上場」をするにあたり「リーチ」となっているフェーズと言えます。つまり、シリーズCフェーズの後は、シリーズDにいくか上場するかのどちらかです。本ブログではシリーズDの説明は割愛します。

 5-1. シリーズCの「人数」

50〜300名程度であることが多いです。
人数には幅があるのですが、シリーズB,Cのフェーズにおいて一気に社員数が増えます。シリーズBでプロダクトが思った以上に拡販/導入が進んだ場合、1年間に50〜100名程度を採用する場合もあり、シリーズCのフェーズに入る際に150名になっている場合もあります。一方で50名程度でシリーズCに入る企業もあります。
また、シリーズCフェーズでは50〜200名ほど採用するパターンもあり、仮にシリーズCの初期フェーズで入社した場合、上場までに100名ほど人員が増加するパターンもあり得ます。シード期とシリーズAは「カオス」と記載しましたが、シリーズCは別の意味で「カオス」です。人数がかなり増えてくるため、顔と名前の一致が難しくなるフェーズでもあります。そのため、社でスモールチームが増えてくる関係で、マネージメント力がある方が何名在籍しているのかもポイントとなります。

 5-2. シリーズCの「雰囲気」

シリーズCの中でも人数規模、そして増加人数のスピードによって雰囲気は大きく異なります。
50名でシリーズCに辿り着き、その後20名程度増員をした上で上場する企業もあります。一方で100名でシリーズCに辿り着き、その後100名程度増員をしたうえで上場する企業もあります。この前者と後者では雰囲気が異なりますし、カルチャー浸透も大きく異なります。そのため、どんなタイプのシリーズCの企業なのかはヒアリングをすれば、雰囲気が分かったりします。
ただ、シリーズBと比較すると、シリーズCのほうが取締役クラス、部長クラスはキャリアが太いメンバーが揃います。そのため、会社の雰囲気が締まるというか、ピリッとすることもあります。ただ、繰り返しになりますが、大量採用をするフェーズでもあるため、どのレイヤーのメンバーがどの程度入社するかによって雰囲気は変わるためご認識ください。


6. フェーズごとの違いより、やはり個社の違いのほうがある

本ブログは「フェーズ」別の違いを説明いたしましたが、「このフェーズは、こんな人数でこんな雰囲気!」と断言することができません。なぜならば、フェーズが小さくても大きくても雰囲気が変わらない会社もあります。また、少人数で上場する会社もあれば、巨大な規模感で上場する会社もあります。そのため、一概にフェーズ毎で大きな違いがあるかと言うと、断言ができないような状況です。

ただ、1つ言えるのは会社の「フェーズ」と言うのは、事業/プロダクトが市場に「受け入れられているフェーズ」とも言えます。つまり、会社の人数や雰囲気でジャッジするよりは、その事業/プロダクトがどのフェーズなのかによって、自分のやるべき事が変化するかと思いますので、その点をご理解いただけると良いかなと思っております。

どのフェーズにチャレンジしても得られるものは多数あるかと思いますので、皆様ぜひ良いチャレンジをして、良いビジネスマンライフを過ごしていただければと思います。

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