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[上級者編]人事とエージェントさまとの打ち合わせのポイント

「山根さんのエージェント打ち合わせって面白いですね」

そんな嬉しいお言葉をいただきました。

当社は主にベンチャー企業のHR支援を行っておりますが、企業さまの人事の「代わり」にエージェントさまと商談をすることがあります。昨今の採用/転職市場において、超売り手市場である事は間違いありません。特に、当社のメイン領域であるIT/ウェブ業界については顕著です。

そんな中、エージェントさまの商談は非常に大事です。ただ、人事界隈の方からすると、エージェントさまにどのような話をすれば最良なのか、ベストプラクティスはないと思います。

そこで、僕が意識していることを事実ベースでお伝えすることにより、少しでも良いエージェント - 採用企業さまのお打ち合わせが増えれば嬉しいと思い、本ブログを執筆したいと思います。

※本ブログの本題は「1-2」「1-3」「2」の内容です。




0-1. 今後も加熱し続ける採用市場

皆さまも肌で感じていらっしゃるかもしれませんが、採用市場は熱を帯び続けています。好景気/不景気と言う類の話ではなく、シンプルに「労働人口の減少」と「DX化」が拍車をかけ、今後は「不景気などにもかかわらず、採用活動が厳しい」と言う時代が訪れるかもしれません。
これは僕の所感ですが、今後も採用市場は加熱し続けると思っています。VUCAの時代において、離職率も上がるでしょうし、前述した労働人口の減少、リスキリングなど、あらゆる要素が重なって、採用市場がさらに激化していく、そしてし続けていく事は避けられない事実だとまず捉えましょう。

0-2. 候補者さまの「採用媒体」疲れ

これは定量調査したわけではなく、僕の感覚で恐縮ですが、
採用媒体を用いての「転職活動」をしている候補者さまに疲れが見えていると感じています。具体的には、2016年頃からWantedlyがシェアを広げ、その後、主にエンジニア採用において、Forkwell、Findy、LAPRAS、転職ドラフト、そして2021年頃からYOUTRUSTなどが存在感を増してきました。採用媒体の数が増えて、採用/転職市場が熱を帯びること自体は喜ばしいことなのですが、「求人数」の増え続けている事実を考慮すると、候補者さまが求人「まみれ」になっている様子は伺われます。
また、シンプルに「数」の論理だけではなく、「どのような求人が本当に自分にマッチしているのか?」について、おそらく「わからない」と言う結論だと思います。また、例えば某大手採用媒体に登録をすると、1週間で500通以上のスカウトメールが届く、そんな話もよく耳にします。さらに加熱を帯びると候補者さまが採用媒体に疲れてしまうのはほぼ既定路線なのかもしれません。

0-3. スカウトメール返信率の低下

僕は人材業界に16年おりますが、大体このサイクルを人材業界は回しているなと言う肌感覚があります。
どういうことかと言うと、採用媒体は4つのフェーズに分かれると思っています。

最初は「黎明期」。
とにもかくにも登録者と掲載企業の数を集めなくてはならない。
そのため、とにかくミニマムなマッチングをしていく。
思いのほか、スキルが高い登録者も存在しており、少数同士のマッチングがなされる時期。

次に「成長期」。
感度が高い企業が掲載をし始め、登録者も増え始める。
この時期が最も良い時期かもしれません。
登録者も掲載企業も満足度がある程度高く、行動量を起こせれば、採用成功に到達する可能性も高い時期といえます。
2016年頃のWantedlyがこのフェーズだったのかもしれません。

次に「成熟期」。
採用媒体がテレビCMを始める時期です。
サービスとして成り立っており、登録者数も掲載企業数も増える。
ただ、このタイミングで登録者数 > 採用企業数の傾向がある媒体を僕はこれまでほとんど見たことがありません。これは当たり前のように生じることで、なぜならば、採用媒体が「ご料金」をいただいてるのは「採用企業」からだからです。そのため、登録者数を増やす事はもちろん重要ではあるのですが、正直上限を感じ始める時期でもあり、そして前金としてご料金をいただく採用媒体の仕組みである場合は、とにかく受注数を増やして採用企業数を増やします。そのため、このあたりから、「売上を追うのか」「顧客満足度を追うのか」と言うせめぎ合いが始まります。
ここで「売上を追う」と言う選択肢を外す事はほぼ考えられません。
そのため、採用企業側にとっては、競合企業が増えると言う事実は避けられないため、徐々に顧客満足度が下がってきます。

最後に「衰退期」。
衰退期と記載してしまいましたが、半永続的に残り続ける人材サービスもあります。僕がすごく印象的だったのがリクナビNEXTのクローズです。
もちろんリクルートダイレクトスカウトに統合すると言う話を耳にしましたが、おそらく僕が社会人1年目の頃ではマンモスのようなサービスだったため、1つの時代の終焉を感じました。
3つ目のフェーズである「成熟期」を超える頃から、採用媒体は悩みが増えてくると思います。そのため、ユーザである採用企業、そして登録者もなんとなく別の採用媒体に登録しようかな、と言う思いが増えてくるタイミングです。

説明が長くなりました。
何を申し上げたいかと言うと、「〇〇と言う媒体最近勢いあるよね」「過去に転職活動した際に、〇〇と言う採用媒体が良かったよ」と言う話題は、採用/転職市場において耳にすることがありますが、それは「時代のトレンド」によって大きく印象が変わると言うことです。

そのため、皆さまが「この採用媒体は行ける」と言う感触がもしあったとしても、徐々にスカウト返信率は下がる可能性が高いということをまず認識しておくべきです。

これらの背景があって、「採用媒体」は 新陳代謝が起き続けるでしょう。つまり、新しい媒体が登場してフェイドアウトをすることを繰り返すのではないかと思います。
ただ前述した通り、労働人口の減少が避けられない事実であり、新しい「採用媒体」を誕生させる気概を持った「人材」が論理的に考えて少なくなります。エンジニアの数も少ないですし、新しい採用媒体がスピーディーに生まれる、と言う事は少々考えにくいのかもしれません。

それらの背景を考えると「エージェント」の存在は非常に重要となり、エージェント採用を外す形で、従業員の増加を目指すのであれば、ものすごく人気企業/著名企業にならなければ、非現実的と言わざるを得ないかもしれません。


1. エージェントさまとの打ち合わせについて

前置きが長くなりました。ただ、エージェントさまの存在が非常に重要であることをご理解いただけたのではないでしょうか?

エージェントさまからのご紹介で、求めるターゲットからの応募数が増えたらハッピーだと思います。そのために取り組むべき事は山ほどあります。ただ、本ブログでは「エージェントさまとの打ち合わせ」にスポットを当ててお話を進めたいと思います。

もし仮に、より包括的に、細かい施策をお知りになられたい方は、下記ブログをご覧ください。

では、本題に入りましょう。

1-1. エージェントさまとの打ち合わせの前に、心得ておくこと

「エージェントさまとの打ち合わせの際に何を話そうか?」と考えられる方は多くいらっしゃるかと思うのですが、「内容」よりも圧倒的に大事なことがあります。それは、

お打ち合わせの「姿勢」「態度」

です。エージェントさまとの打ち合わせの際に、少しでも「上から目線」「業者扱い」「高圧的な」このような姿勢/態度であった場合、ご紹介をいただける可能性はほぼゼロだと思ったほうが良いです。

少し昔話をさせてください。
僕が研修1年目の頃である2008年は、リーマンショックが訪れていました。今の時代とは真逆で採用企業 > 求職者さまという圧倒的なパワーバランスがありました。つまり、不景気であり求人数の方が少なく、求職者さまが転職活動に非常に苦戦をする、そんな時期です。
この時期はエージェントはすごく大変でした。採用企業さまに過度に気を使わなくてはならないですし、ものすごく採用企業さまが上から目線のケースも多数ありました。それが普通でした。

当時僕は22歳、今は38歳、16年の時が経過しましたが、僕と同年代もしくは年齢が高い人事の方は、まだこの雰囲気が抜けてない方がいらっしゃいます。「あ、山根さん、それわかるわかる」と言う意見を持つ、僕と同年代くらいのエージェント在籍をされている方はいらっしゃるかと思いますが、いまだに存在しています。

本ブログはエージェントさまとの打ち合わせで何を話すのか?にスポットを当てますが、本項で記載をしている内容が実行できなければ、全て水の泡だと思ってください。

では、具体的にどうするのか?については、「リスペクト」を持って接していただければと思います。エージェントさまは「業者」ではなく「パートナー」です。むしろ接待をしたほうが良いくらいです。と僕は考えています。

1-2. 木を見て森を見ず

では、エージェントさまとの打ち合わせで具体的に取り組んでいくことをお話しして参ります。
「木を見て森を見ず」という記載をいたしましたが、これはどういう意味かと言うと、

「御社の紹介をするだけではなく、御社を取り巻く業界についての話をたくさんしましょう」

ということです。
僕が中学1年生の頃に担任の先生が言っていました。

「"斉藤"が本当に良い男であると証明するには、このクラスの全男性陣との比較をしなくてはならない」

確かにその通りだなと感じました。「いい男」と言う定義は人それぞれだとして、ただ世の中に1人の「斉藤」と言う人間しか男性が存在していないのであれば、それは希少価値は高いけれども、ほんとに良い男か分かりません。なぜならば、他の男性と比較ができないからです。

「え、山根さん。という事は、「競合他社との違い」を明瞭にしろということですか?」

それもあるのですが、どちらかと言うと「業界」についての歴史や概要、現場のトレンドなどをお話ししましょう、と言うことをお伝えしたいです。

人事の皆さま、イメージしてみましょう。

エージェントの業務フローにおいて、「求人を選ぶ」と言う業務があります。つまり、面談をしている求職者さまに、何の求人がマッチしているかを「選定」する作業です。この際に、エージェントは「いくつかのカテゴリー」を意識して選定をします。(少なからず、僕はそうしていました)。
例えば、「BtoB SaaS」「BtoC Webサービス」「Web受託企業」と言う具合です。さらに分類をすると「製造業向けのSaaS」「建築業界向けのSaaS」「マーケティング系のSaaS」。もう少し詳しく分類をすると「レガシーテック」「ディープテック」のようなイメージです。

何を申し上げたいかと言うと、エージェントは「カテゴライズ」をした上で、そのカテゴリーの中で御社の特徴をお話しすることがあります。そのため、他の求人との「関連性」を意識しながらお話をすることが多いです。であれば、御社「独自」の魅力をお話をする事はもちろん重要である一方で、御社の「業界」や「領域」についての話を詳しくエージェントさまにインプットいただいた方が、エージェントからするとためになったりします。

例えば、Web受託開発企業の事例です。
受託開発は広義の意味であり、わかりづらいです。そのため、SIやSESとの違いを明瞭にする必要があります。

当社ではこのような表を作成しました。

ご覧いただけるとご理解いただけると思うのですが、各業界をかなり細かく分類して、僕の方でいくつかの要素を追加して比較できるようにしています。正直、この企業さま独自の魅力を伝えていると言うよりは、各業界領域の説明を細かくして、結果的にこの企業さまの魅力を抽出できたと言うことになります。

1-3. その企業の魅力自体は、全体の半分の時間も要さない

全項とやや重複しますが、僕がエージェントさまと打ち合わせをする場合、その該当企業の魅力について半分の時間も使いません。半分以上の時間を使ってお話をするのは、その企業の「業界」「領域」についての話です。

前述した通り、「業界」「領域」の説明を詳しくしていくと、その企業さまが狙うスポットが「細かい部分」まで明瞭になってきます。採用活動を積極的に実施するくらいの企業さまですから、各業界や領域におけるスイートスポットを見つけており、そしてそのスポットを上手く攻め込んでいるはずです。

また、「なぜスイートスポットになっているのか」と言う観点は非常に重要です。おそらく、その企業さまでしか攻め込めない何かしらの理由があるはずです。その「理由」がその企業の強みになり得ると感じており、その理由を探す仕事が僕らはポテンシャライトの仕事であり、人事の方の仕事であると言えると思います。


2. 事例のご紹介

直近でお取引をした企業さまの事例をご紹介したいと思います。
あるユーザー系SIerさまの事例です。

ユーザ系SIerとは何か?という観点からスタートです。ただ、具体的なイメージを沸かせていただくために、

企業名の記載をさせていただいています。そしてそれぞれのメリットとデメリットを比較しています。

ここで少し角度を変えます。

ユーザ型SIの採用ターゲットになるのはSI出身の方になるのですが、SIエンジニアの方の転職理由は何なのかを見てきます。

本業界にお詳しい方はピンとくるかもしれないのですが、よくある転職理由を記載しています。この転職理由を先程のユーザ系SIerのメリット/デメリットと比較をしていきます。

ご覧いただいた通り、外販系SIでは、一般的なSIエンジニアの転職理由を解決することが難しく、内販SIについては解決することが一部できると言うことがわかります。

もう少し広範囲の比較をしていきます。

少し話が飛びましたが、SIエンジニアのよくある転職理由を、IT業界における各業態でどのように解決できるのか?を比較しています。
こう見ると、内販系SIが最高の環境だと思われてしまうかもしれないのですが、内販系SIにも弱点があります。

そのため、決して内販系SIが最高の状態では無いのです。少し話の角度を変えると、内販系SIといわゆる事業会社の社内SEの仕事はやや近しいと感じています。そのため、社内SEについて少しアプローチしてみます。

本スライドは社内SEの方が転職企業を選ぶためのポイントを個人的に感じたことを記載しています。つまり、こちらのスライドに記載した項目に当てはまる企業については、社内SEにとって良い環境であると個人的に感じています。

つまり、SIエンジニアの転職理由を解決できて、かつ内販系SIの課題も解決できる企業は、SIエンジニアにとって非常に良い環境と言えるのではないか?と言うところまでたどり着きます。

少々わかりにくいスライドになりますが、本スライドの上部については、SIエンジニアの転職を各業態がどのように解決できるのか?を指しており、下部は内販系SIの課題を各業態がどのように解決できるのか?を指しています。ここまで話を進めてみると、IT業界における各業態において、転職先としてすべてを満たす会社はなさそうですね。

ただ、

このような状態があったらどうでしょうか?
つまり内販系SIで下部の項目が全て「◯」であった場合、最高の環境だと思いませんか?

これに該当する会社が、「〇〇株式会社」なのです!と言うアプローチをしていきます。

お気づきの通り、〇〇株式会社の話はほぼしていません。業界や領域の話をして、結果的に〇〇株式会社が非常に魅力的であると言うことをわかっていただけるようなアプローチをしているのです。


3. HRを支援する側のポイント

「ポテンシャライトさんが知識があるからできるんじゃないですか?」

確かに知識や経験がこちらの資料を誕生させていることには違和感がないのですが、頭の中の情報の「連携」についてのポイントをお伝えできればと思います。

これは当社メンバーにもよく伝えている話ではあるのですが、完全に納得しているメンバーは少ないようです。そのため、皆さんもピンと来るか分かりませんが、説明していきます。

「頭の中にある自分自身のGoogleにおいて、検索するイメージ」

皆さんの頭の中にはたくさんの情報が眠っています。その情報は使わなければ、どんどん薄れていき、なくなってしまうこともあるかと思います。
僕はこの仕事をしていて、すごく面白いなと思うのは、様々な企業さまの支援をするにあたり、過去に自分がインプットした情報を、改めてアクセスすることができる頻度が多いことです。

例えば、前項で説明をいたしました、ユーザー系SIの事例は、さらに過去に担当させていただいた企業さまの情報をリンクさせています。そのため、過去に自分がインプットした情報を頭の中に呼び起こして、過去の情報を引っ張りつつ、つないでいきます。

そうすると、これまで「点」で存在していた情報が「線」でつながっていることがわかります。ただ「線」でつないだ情報だけだと関連性が弱いかなと思っており、それを「面」で捉えていくイメージです。「面」とは何かと言うと、前項で記載をしたスライドのイメージです。「線」だけだと情報が「2つ」であることもありますが、「面」だとさらに多くの情報を繋ぎ合わせなくてはなりません。

このように、あらゆる情報を「面」でつないでいくことによって、自分の頭の中にある情報がつながっていく感じです。これができるようになると、情報が「点在」しているわけではなく、「線」でつながり「面」で捉えることができ、ものすごく情報の活用がしやすくなります。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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