ワーカーホリック 心酔する愚者⑦

「野田さん、この金額の説明をしていただいてもよろしいですか?さすがにすぐにYESとは言えません。]

赤城は村山にも資料を渡す。村山も跳ねるように驚いていた。その様子をみて、隣にいたカトウアイは覗き込むように資料をみていた。
資料を見た下部のカトウアイの表情は急に暗くなった。
私は気にせず、赤城に話す。
「はい、今回の依頼料の内訳ですが、まず処理対象1人です。そこに基本料金とキャスト4人分の機密保持料、業務日数×5日、雑費を含め 計5,760万円でございます。」

「いやいや、高すぎるだろう。」赤城は村山と目を合わせる。
「この金額がちょっと・・・」村山は明らかに動揺している。

僕たちも資料をみたいとナインが村山から受け取る。それをタカとシンも頭を突合せて見た。

「今回、初回ということで少し割引きさせていただくことも可能です」私は赤城と村山に話しかける。

「割引ですか?」
「はい、今回は梨本氏もおっしゃっているように、八戸橋議員からこの件の依頼を受けておりました。そして八戸橋議員は5日での完全処理を依頼されました。
この分は八戸橋議員の負担ということで、業務日数の金額をカットさせていただき、更に端数を切り捨てますと・・・全て込みで5000万円ピッタリでいがかでしょうか?」
私は電卓を叩いて画面をクラブキャロル側に見せる。
赤城と村山はおおっと表情をした。

「でも、800万近く値引きしていただいて、大丈夫なんでしょうか?」
村山は心配そうな顔をした。

「はい、私どもはお客様の早期の解決を希望しております。正直少し赤字にはなってしまいますが、お客様の解決に貢献できれば赤字覚悟であっても業務に就かせていただきたいです。」私はにっこりとクラブキャロル全員に微笑む。
佐藤が少し引いている顔をしているが、無視する。

すこしの沈黙のうち、村山が口を開いた。
「社長、私はこの金額でお受けして良いと思います。今後、犯人が12月14日までに何をするか分かりません。その時にこれ以上運営に被害が出れば、正直5,000万以上の被害が出るのは間違いありません。掲示板以外のSNSはそれ程炎上しておりませんし、なによりお店の客足には全く影響が出ておりません。痛い出費にはなりますが、元はといえば、クラブキャロルのキャストの自業自得です。そして我々が支払えないという訳ではありません。ここは一度お店で一括して支払い、キャストからの支払い分はこちらで決めるということで如何でしょうか?」
村山は覚悟を決めた様子で赤城に話す。

赤城は私に向かって話す。
「・・・野田さん、業務完了後、この資料の最後に即入金と書かれておりますが、月末の入金でもよろしいでしょうか。いえ、私たちも売上が月末に決まるもので、せめて29日の入金でも宜しいでしょうか。」

「もちろん、大金ですので、お時間がかかることは承知の上です。具体的な手続きは梨本さん経由でお願いいたします。ですが、月末の支払いの場合、手付金として依頼料の10%500万を本日頂戴したいのですが、構いませんか?」
えっと表情をする赤城と村山。そこで梨本が話し出す。

「その手付金は私が立て替えましょう。クラブキャロルの支払いは29日に5,000万円の支払いをする。ということでよろしいですね」

えぇと村山は反応する。

「では岩田、手付金を野田さんにお渡しをしろ」
はいと、岩田が答える。梨本の横にあったアタッシュケースから100万円の束を5束取り出し、アタッシュケースを閉める。そして封筒にいれ、岩田が私に渡す。
私は封筒から取り出し、5束分確認する。そしてざっとお札を5束分捲り、封筒に戻す。
「はい、確かに500万円頂戴いたしました。」
私はカバンにしまい、チャックをしめる。
すぐにSがチャックを開けようとしたので、思わず手をたたいた。

「では請求書は、改めて梨本さん経由で送らせていただきます。そこに支払い方法も記載させていただきますので、よろしくお願いいたします。・・・ここまででご不明な点はございますか?」

赤城と村山は特にありません。と返事をする。

するとナインが声を出した。
「あの、改めて確認なんですが、5日後に犯人の対処が終わるってことは、今後はいつも通りの生活が送れるってことですよね?」
「はい、その通りです。完全に処理を致しますので、皆様の今後の生活に支障は出ないかと思います。終了後、梨本さん経由で報告いたします。」
「わかりました。それが一番聞きたかったので、僕は十分です。お前たちもそれでいいよな?」
ナインはアイとシン、タカの顔を見て返事を求めた。
3人ともはいっと答える。

「では、依頼料が決まりましたので、今回のメンバーでの打ち合わせは以上でございます。この後は赤城社長様と村山店長様、梨本の3人で進めさせていただきます。ですので他の皆さまは退出していただいて構いませんが、最後に梨本よりご挨拶があります。」
梨本が立ち上がって、スーツをただす。

「本日は急にも関わらず、長い時間ここまで付き合ってくれて、どうもありがとう。クラブキャロルの皆さん、今回の件は我々の警察とは違い独自で動く、この意味分かってくれるね?」
4人のキャストは真剣な表情で梨本を見つめる。

「この件に関しては決して他言無用だ。なぜなら、君たちの件は君たちの知らないところで君たち以外の人たちが解決するのだから、君たちが今後気にする必要なんで一切ない。分かったね?もし少しでも誰かに話したり、SNSに書き込みでもすれば、それこそ、永久に仕事が出来なくなるってこともあるかもしれない。でもこの部屋の入室時点でボディチェックと手荷物検査、そしてスマホの電源を切って我々に渡してくれたところを見ると、そんな心配はしていないけどね。」

梨本は今日一番の笑顔をみせる。

4人のキャストは苦笑いをしながら、梨本を見つめる。

「私からは以上だ。では野田さん、佐藤さん、5日後の報告を楽しみにしているよ。橋本、スマホと荷物をキャストに返却するように。では、解散だ。」



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