ワーカーホリック 心酔する愚者⑥
佐藤の発言を無視して、私は梨本に伝える。
「今回の経緯が分かりました。説明ありがとうございます。もう1つ、先ほど今回の資料を作成するのに社内のネットワークを使わなかったということでしたね。それは八戸橋議員が絡んでいるからですか?」
「いや、それは少し違う。私の組織は、恐らくこの国で1番ネットワークセキュリティが強い組織だ。ただ今回の件の前にシステム変更があってね。ダウンロードに時間がかかるのと、安全性のチェックに時間がかかるから、急遽別のパソコンを用意しただけさ。もちろん紙での資料はもともと赤城社長と村山さんに渡す予定だったから、今回は全員紙の資料に統一したということで良いかな?」
「ありがとうございます。結構です。では、私からの質問は以上でございます。佐藤くんは質問ありますか?」
私は佐藤に声をかける
佐藤を見ると姿勢はソファにもたれて、顔は上を向いていた。だが姿勢を前屈みにして、キャストたちに声をかける。
「あのさ、ホストの枕営業以外でも寝るの?やっぱりお金がなくても美人で可愛くてスタイル良かったら誰でもするの?」
急に何を言い出すのかと引っ叩こうとしたところ、キャストのナインが答えた。
「僕の周りではいませんでしたが、やはりホストによっては手当たり次第、枕をするホストはいましたね。でもそういうホストって売れない奴が多いと思います。そうだよな?アイ」
「そうですね。売れていないホストほど、寝まくっているイメージはあります。」アイがエイトの質問に答えた。
シンやタカも2人の発言に頷く。まるで同調しろと言われているような様子だ。
「でも4人とも、掲示板に濃厚なセックスの内容書かれているから、そうとうやり込んでいるんじゃない?ねぇ枕を腰の下にいれるタイプのカトウアイ君?」
佐藤の挑発にカトウアイは一瞬睨みつけたが、すぐに真顔に戻った。どうやらカトウアイという人物は冷静な人物らしい。
部屋に入ったときも思ったが、なかなか動揺しないタイプなのかなと思った。他の3人の顔が明らかに暗い中、彼はすこし余裕のある感じがした。
話が進まないと思い。私は梨本に声をかける
「梨本さん。佐藤から以上です。」と伝えた。
まだ話があるっと言おうとしていたが、私は彼の二の腕をつねる。
痛っという声が聞こえたが、無視した。
では2人からの質問は以上ですね。と岩田が全体に話しかける。
その直後、岩田が梨本耳打ちをした。梨本は無言で頷く。
岩田が資料をめくり、話し始めた。
「もし宜しければ、このまま今回具体的な対処内容と期限、料金の話に進ませて頂きたいと思いま」
「待ってください。うちのキャストたちを脅迫した犯人ことは分かっているのですか?」
赤城社長が梨本に話かける。そういえば、先程の挨拶以降、赤城社長が話しているところは見なかったな。まぁ梨本さんの話が長すぎるとこもあるけど。
「はい、八戸橋議員からの依頼直後、犯人は私どもで特定おりました。そして八戸橋議員とクラブキャロルに届いた封筒の種類から同一犯の犯行で間違いないとおもっております。ただし、八戸橋議員は犯人の逮捕ではなく、野田さんと佐藤さんによる別の処理での依頼を希望されました。もし犯人を逮捕をご希望の場合は八戸橋議員の許可が必要になります。残念ながら、私は八戸橋議員の代理人でもあります。本人の意志に背くことはできません。」
それじゃ意味ない…と赤城社長が話を続けようとしたとき、カトウアイが梨本に声をかけた。
「あの…その処理の方法って一体なんですか?その処理で、僕たちの被害が今後なくなるって考えていいんですよね?」
梨本は私に視線を送った。
私はカトウアイに向けて話す。
「処理内容については申し上げることはできませんが、結果は対象次第でお伝えできるかと思います。今回は八戸橋議員より犯人が完全に関わってこないことをご希望されております。カトウ様がお望みのプランがあれば追加することも可能です。ただし梨本さんが仰ったように今回は対象の逮捕や確保は難しいです」
「分かりました…僕からは以上です」
カトウアイは少し俯き、赤城社長に話す。
「社長、村山店長、今回の件に関して、梨本さんや野田さんに一任して良いと思います。僕のお客様ですし、毎月のお金もかなり使ってくれていました。ですが、こうなってしまったのは僕の責任です。せめてこれ以上クラブキャロルに迷惑をかけない形で解決したいです…みんなは僕の意見、どう思う?」
「俺はアイの意見に賛成だ」とナインが答える。シンもタカも同時に頷いていた。
「アイがそれでいいなら、俺はアイの意見で進めていいと思うよ。ただし、条件がある。梨本さんいいかな?」
「なんでしょう?赤城社長」
「本当にその犯人は一生、僕たちに関わってこないんですよね?」
「勿論。それが八戸橋議員の依頼でもありましたからね。そして実行する2人は確実に依頼を遂行します。」
「それで、結構です。これで、いいよな村山?」
「はい。社長が仰るなら私は従います。」
「では確認事項は以上でよろしいでしょうか?」岩田が全員に話かける。
全員頷いた為、私鞄から1枚の用紙抜き、ラインマーカーで印を何ヶ所にひいて、合計金額をタブレットで計算する。そして金額を記入し、岩田に渡す。岩田がそれを梨本に渡し、無言で頷いた。そしてその用紙を岩田は赤城社長に手渡した。
赤城社長のえっと言う声が聞こえたが、私の頭の中はお昼ご飯のことで頭がいっぱいだった。
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