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塩野さんの著作に出会えたことは人生で最大の幸運の一つだった

また面白そうなテーマを見つけたので自分の記憶を掘り起こしてみる。読書については人並みに好きで、それなりの数を読んできたのだが、その中でも最も好きで、何かと読み返してるのが塩野七生さんの著作である。

出会いは大学受験

彼女の本に出会ったのは大学受験で京都に行った時のことだった。前日入りしてヒマをもて余し、見知らぬ土地でちょっとワクワクしてブラブラしてるときに見つけた本屋。そこでたまたま目に入ったのがローマ人の物語だった。もともと歴史好きだったこともあり、何となく手に取ったのがきっかけ。帰りの新幹線のタラップで読んだのだが、時間を忘れて読んだことを今でもはっきりと覚えている。

その後、1冊3,000円(当時は文庫本がなかった)もする他の巻もすべて買い、受験が終わった後もずっと読んでいた。さらにそれでは飽き足らず、彼女のほかの著作も探し回って買いあさった。
大学に入ってからも気づけば読んでいたし、働いてからもずっと読んでいる。

なぜそんなに好きなのか

たくさんの理由がある。彼女が描写する登場人物が魅力的であるとか、表現がストレートで読みやすいとか、作品への愛情を感じるとか、歴史物語として面白いとか、などなどである。ただ、こういうのを全部をひっくるめてフィーリングがあった、というが一番自分的に納得のいく理由かなと思う。

おススメはすべての作品

と言いたいところだが、さすがにたくさんあるので、あえて3つあげると以下の作品になる。

・ローマ人の物語
やはりこれが一番である。最初に出会った作品でもあるし、毎年新刊を心待ちにしていた。この作品がプルタルコスなどヨーロッパの古典をその後読むきっかけになったし、教科書でしか知らない歴史にストーリーをもたせてくれた。そしてそれこそが重要なのだと気づかせてくれた。
特に好きなのは、2巻のハンニバル戦記と4巻のユリウスカエサル(ハードカバー版)。そもそも歴史に名をのこす英雄で、ただでさえ魅力的なのに彼女の筆にかかるとその魅力がいっそう増して没入感がヤバイ。でもキャラ的にはハドリアヌスが一番好きで、あの気難しさや頑固さ、そしてなによりやり抜く意志の強さにとてもあこがれた。マルグリット・ユルスナールを初めて知り彼女のハドリアヌス帝の回想も一緒に読んだ。
15巻で終わったときになぜかボクが途方にくれたのを覚えている(笑)。

・海の都の物語
ローマ人の新刊を読んだ後に読後の寂寥感から他に何かないかと探して買った作品。おそらくほぼ同時に他の作品も読んでいたと思うのだが、これが特に強く印象に残っている。
都市の作り方や船の説明、経済、統治体制の仕組みなど、単なる政治史としてのヴェネチアではなく全体を俯瞰したヴェネチアが物語として語られている。オスマン帝国との長きにわたる争い、交渉の描写には心が躍らざるを得ないし、大国に翻弄されながらも持てる力を最大に利用、困難を乗り切るその姿に感動してコートのポケットにはいつも単行本が入っていた。

・ギリシャ人の物語
塩野さんの最後の歴史著作。ラストにギリシャをもってくるあたり、さすがだなと思ったし、ギリシャ・ローマ文化への愛情もすごく感じた。アテネの隆盛、ペリクレスの演説、アレクサンドロスに対する彼女の想いとか、面白い点は数あれど、強く印象に残っているのは3巻の彼女のあいさつでボクが感極まったからだと思う。思わずいい年したおっさんが泣いてしまった。

書いていてまた読みたくなってきたので、近いうちにじっくりと読むことにしよう。

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