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書き出しが惚れ惚れとするフィクションたち。

ゲイドルのぽたろうです。
家に篭ってばかりでエンタメの世界に浸りたいけど億劫でいつも通り平常運転。

高校時代にアニメ・ラノベにハマり、浪人のころには痛々しい中途半端な文学青年(死語)になっていたことを思い出す。友達がいなかったから。暇だったから。娯楽に飢えていたから。なんとでもいえる。
中学時代は朝の10分間読書が苦痛で同じ本を何回も読み返していたというのに、いまは手軽なビジネス書ばかりに手を出しているというのに。

というわけで、個人的に書き出しに惚れ惚れとしたフィクションをあげたいと思います。

ポール・ニザン『アデン・アラビア』(晶文社)

ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。
一歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。恋愛も思想も家族を失うことも、大人たちの仲間に入ることも、世の中でおのれがどんな役割を果しているのか知るのは辛いことだ。

有名すぎる書き出しで、少し前には池澤夏樹個人編集世界文学全集(河出書房新社)にも選ばれました。
説明は不要かもしれません。若者の投げ場のない怒りが、静かにひびく。
読書したのが10年以上前なのですが、アフォリズムの境地ここに、という印象を受けました。
冒頭のインパクトの強さに圧倒された記憶が微かに残っています。

箴言好きの貴方にはラ・ロシュフーコの『箴言集』もおすすめ。
現代でも通用する鋭い言葉の数々が胸に突き刺さること請負です。某人間だもので物足りないタイプには処方箋出しちゃうぞ。
紙の本(岩波文庫)は絶版しているのか、Amazonでは中古になっていますね。Kindle版もあるらしい。Twitterでもbotになっています。便利な世の中。

舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫)

減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。
返せ。とか言ってもちろん佐野は返してくれないし、自尊心はそもそも返してもらうもんじゃなくて取り戻すもんだし、そもそも、別に好きじゃない相手とやるのはやっぱりどんな形であってもどんなふうであっても間違いなんだろう。

こちらも有名な書き出し。冒頭の一文に共感できるのも怖い。私も女を失ったとき、すんなり終わったなという感覚と大人になったという感覚と自尊心を傷つけられたという感覚がないまぜになった記憶がある。
舞城王太郎氏は覆面作家として活躍されており、小説以外でも漫画やアニメの原案など幅広く活動されている。
テンポ良く文章が続いていき気づいたらとんでもない世界まで連れて行かれて意味不明なんだけどサイコーに気持ちいい。阿修羅ガール以外にも言えることだけど、どこかナイーブでセンチメンタルなところもあって好き。

余談ですが、大学時代、南米の某マジックレアリズム小説を夏休みに借りたのですが、1/3くらいで挫折しました。孤独すぎたのかな。
あと、一時期喜劇にハマっていた時期がありまして、モリエールなどをAmazonの中古で買ったり図書館から借りて読んでいました。岩波書店だからお堅い本かと思いきや、完全に軟派な、方言丸出しの超訳(翻訳)が素晴らしかった記憶がある。塞ぎこんだときこそ、笑っていきましょう。

皆さんもぜひ書き出しに思いを馳せながら、また、書き出しから始まる創作を楽しんでみてはいかがでしょうか。

以下はツイッターでの追記。


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