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晴れたり泣いたり、眠ったり。

天気の音が聴こえる。

風や雨の打たれるような音じゃなくて、それぞれの天気独特の音がある。

朝起きるとき、カーテンを開けなくてもぼんやり聴こえてくる、音。

別に小さい頃から空の音を聞いてたわけじゃない。音があるんだな、と思うようになったのは大学に入ってひとり暮らしを始めたころ。

朝、目が覚めたら、聞いたことのない音がしていた。

不快感はなく、とても柔らかい音だなと思った。

寝起きの覚束ない足取りでカーテンを開けると、辺り一面真っ白。空からふわふわした白い玉がいっぱい落ちてくる。天気は、雪だった。

これ、雪の音か…

大学に入ってこの地に越してくるまで、比較的暖かい地方に居た私は、辺り一面真っ白になるような雪を見たのは初めてだった。初めての景色と、初めての音。

天気にも、音があったのか。

雪の音を知ってから、他の天気にもそれぞれ音があるのが分かるようになった。晴れてても、かんかん照りの太陽とあったかいくらいの陽射しでは音が少し違う。雨にも音があるけど、打ち音と匂いの主張が強くて、本当に静かな雨じゃないとなかなか聴こえにくい。

どんな音かって、うまく言葉にはできない。単純に私の語彙力が少ないだけかもしれないけど。それに聞く人によって変わるであろう音に、私は迂闊に名前をつけれない。強いて言うなら、天気の音なのだから、雨の日だったら「雨の音」だし、晴れてたら「晴れの音」だ。…私の語彙力だと、ここまでなのだ。

そうそう、最近知ったんだけど、深夜にも独特の音があるみたいだ。

雪も雨も降ってなくて、風もほとんどない日の午前2時。天気は何もない。晴れた日の夜。

あれ、空が寝てる音じゃないかと思うんだ。

心地いい音。とても好き。

誰かと共有したいんだけど、こんな時間に人に連絡するのも気が引ける。そもそも私が喋り始めて、空を起こしちゃったら申し訳ないし。本当に穏やかな日じゃないと、なかなか聴けない、空の眠る音。

毎日いろんな天気に振り回されて、お前もそりゃ疲れてるよな。

こんな日くらい、ゆっくり休むといいよ。私は今日、徹夜だけどね。


できるだけ迷惑かけないように、本当に慎ましやかに音を鳴らして、全て真っさらの日に、ほんの少しだけ眠る君は、何だか自分とちょっと似てる気がしてほっとけない。でもお互い決して干渉しないし、意思疎通することも永遠にできない。

君と私のこの距離感、割と好き。




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