俳句のいさらゐ ◍⦿◍ 松尾芭蕉『笈の小文』より。「若葉して御目の雫ぬぐはばや」
松尾芭蕉の生み出す小宇宙を味わうシリーズ。
標題の「いさらゐ」はちいさな泉のこと。にじみ出て来る思いを、そんな古語に喩えてみた。
1688年(貞享5年)4月8日に、芭蕉が奈良の唐招提寺を訪れ、鑑真和上の像を見て詠んだ句である。
鑑真和上像に、芭蕉は頬を伝う雫を見た。この句から、私は三好達治の「涙」という詩を思い出す。下に示す。
達治は、幼い子が悲しみにいっしんに向き合っている姿に、累々と重ねられてきた万物の生き死にの果てに、われとわが子が今、ここに存在していることを思い、