俳句のいさらゐ ▧⊛▧ 松尾芭蕉『奥の細道』その十八。「笈も太刀も五月にかざれ紙幟 ( かみのぼり ) 」
多くの解説書では、名吟とも評されず、深く触れられてはいない俳句である。前文から俳句の意味はわかるようでありながら、先ず気にかかる言葉がある。紙幟 (かみのぼり ) とは何か。なぜそれを飾れと言うのか。
参考になる図版がある ( 下の図 ) 。
井原西鶴の『武家伝来記』の挿絵に描かれている旗状のものが紙幟である。『武家伝来記』は、貞享四 ( 1687 ) 年の発行で、『奥の細道』の旅が、元禄二 ( 1689 ) 年だからまさに同時代で、当時の江戸の風俗がうかがい知れる。
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