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富士山は想像以上にすごい山だった

日本一というテッペンを見ることで人生観が変わるかもしれないという、やや不純な動機。

富士山に登った。ここから私の、やったことないことをやってみるというスタンスのチャレンジが始まったと言っても過言ではない。

今から4年前の2016年6月。付き合っていた彼に振られた。夏休み一緒に富士山に登ろうと約束をしていたが、その予定も無しになった。正直悔しかった。彼が見たことのない日本一の景色を見て、私は一歩先に進んでやる、人生観変えてやろうじゃないか、と恐ろしく俗っぽい動機により、富士山に登ることが決まった。

9月。有り難いことにそんな誘いに乗ってくれた、大学の先輩とその彼女と合流し、先輩が夜通し車を走らせてくれ、吉田口五合目の駐車場で仮眠をとり、昼頃から登り始めた。

出発前から熱があった。(今思うと危険だった。)六合目を過ぎたあたりまでは順調だったが、足取りが重くなってきて、少し進んでは休憩、を繰り返した。途中で先輩が私の荷物を引き受けてくれ、なんとか山小屋に着いた。


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目に映る自然は、見たことないものばかりで、もはや不自然。

予約したのは、標高3,000mに位置する、東洋館という山小屋。思い描いていたイメージとは違い、とっても綺麗だった。

到着後やはり体調が悪く、一人だけ寝かせてもらうことにした。何度も起きてまた寝て、いつのまにか夕食の時間になった。そしてぼんやりしながら食べた、夕食のハンバーグが本当に美味しかった。美味しさで心が温まっていく感覚が今でも残っている。

さらに仮眠をとり、夜中に山頂に向け出発。体調も少しマシになっていた。(と、思い込んでいただけかもしれない。とにかく登るしかなかった。)どんどん登ると少し汗ばみ、立ち止まると冷える。そして独立峰ならではの、吹き付ける雨風。真っ暗で方向がわからないまま、とにかく前の人の背中についていく。

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雨風がやんで視界が開けると、人々のヘッドライトの明かりが点々と続く。ふと振り返ると、はるか遠くに街の明かりが見えて綺麗だった。夜明けはもうすぐだ。

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山頂に着いた。少しして現れたご来光は、すぐにガスで見えなくなり、また現れる。太陽が出ると、空気が暖かくなっていくのを感じた。

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しばらくすると明るくなり、今まで見えなかった地面が見えてくる。ボコボコした赤っぽい山肌は、もはやこの世のものと思えなかった。

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風が火口に流れ、虹がかかる。ブロッケン現象というらしい。火口の周りをぐるっと周り、日本の最高標高地点、3,776mの剣ヶ峰までひと登りして、下山した。

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己の無力さ

ほんの数秒で移り変わる目の前の景色。見たことのない自然の数々。その壮大さに感動し、同時に自分のちっぽけさを感じていた。

そしてそんなちっぽけな私に対して先輩が呟いた、

「俺、この登山でしんどいポイント一つもなかった。」

という一言の破壊力で、ちっぽけだった私は、もはや無、になった。

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下山途中、赤い斜面の上を重機が動くのを見た。この壮大な自然の中で、人が生きていけるのは人の営みのおかげだと感じた。標高3,000mで寝ることもできるし、ハンバーグも食べれる。自然もすごいけど、人もすごい。

そんなすごいところで、すごい人たちに助けられ、怪我なく下山することができ、感謝の気持ちがあふれた。無力だけど、無力でいいんだ。何も変えられなくたっていい。そうして私のチャレンジ第一弾は幕を閉じ、第二弾、その先へと続くことになるのである。

(2020年の夏は登山道全面閉鎖。来年、また安全に登山ができる世の中になるといいな。)










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