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ユーチューバーに娘はやらん!に見る結婚観とエンタメ論(後編)

2022年1〜3月にテレビ東京系で放送されたドラマ「ユーチューバーに娘はやらん!」について、3月から書いてたけれど、気づけば5月〜!
今日はお得意(?)勝手にエンタメ論です!

#ネタバレ   を含みます。

前編はこちら

ユーチューバーvsテレビ局員

ユーチューバーとテレビ局員が主人公を取り合う構図が筋となった恋愛ドラマでしたが、
これは言うまでもなく、YouTubeと民放テレビのバトルを表しているでしょう。

YouTubeと民放テレビの擬人化であり、
ユーチューバー(YouTube)とテレビ局員(民放テレビ)の性格は、
一般人の各メディアに対するイメージが当てられていました。
ユーチューバーは、毎日楽しいことやネタになりそうなことを探しながら、スケジュールに縛られない暮らしをしている。将来のことは考えていない。
テレビ局員は、母親に結婚を急かされたり会社や上司に作りたいものを制限されながらも、プライドを持って働いている。
そんな2人が主人公に猛アピールするのは、YouTubeと民放テレビが登録者•視聴者に媚びる構図そのものでした。

そして途中で現れた配信会社(Netflixのパロディ)の営業マンは、ドラマ中で「黒船」と揶揄されていました。
外資系であることのほかに、
世界中のコンテンツを視聴者に知らせてしまう、世界を開いてしまう、
日本メディア離れさせてしまう危機を嘆いているのではないでしょうか。
そして黒船は、良いデート(コンテンツ)を見せつけて、媚びずにサラッと去っていく。それでも視聴者は増えていく。そんなことを感じられる展開でした。

では何が選ばれるのか?

結局主人公は誰を選んだか。結論から言うと、ユーチューバーでもテレビ局員でもNetflixでもない、幼馴染でした。

これは彼らの性格やマッチングから見ても納得でしたが、エンタメ代理戦争的に見ても納得です。

YouTubeと民放テレビは、そもそも全く性格が違う。比べられるもんじゃない。違うコンテンツを扱って然るべきだと思います。
そして視聴者はそれぞれ、見たい時に見たいものを選んでいくのでしょう。
だから、一生連れ添わない。

ユーチューバーと呼ばれる人たちのYouTubeは、とにかく自由です。「楽しい」「ユーチューバー自身が注目されたい」以外の目的があってないようなコンテンツもあります。
それぞれターゲットがニッチで、万人ウケや社会への影響は考えないかもしれません。
しかし、あらゆるクリエイティブな才能が発揮され、素早く新しい流行を生む可能性があります。

民放のテレビはその点、スポンサーへの配慮、予算、正しいことを言わなければならない責任などあらゆる制約の中で番組を作っています。局ごとの立場も見られます。
だからこそ思い切ったことができなかったり、社会に出すまでの時間がかかったりするかもしれません。
しかし、YouTubeよりもまだまだ「正しい」とされる影響力があります。社会的な影響のある人を起用することも易いかもしれません。

配信会社(Netflixなど)は、独占配信などはあるものの、そもそもクリエーターではない。キュレーターと言えるかもしれません。
「集める」ことは誰でもできるけど、視聴者レベルでは面倒だしお金もかかる。会社によって扱えるコンテンツが違うことや料金によって差別化されています。
民放局が作ったコンテンツを買い取ったりしながら、視聴者が見たい映像を「集めて」いるので、この点では他の2者と全く違います。

こうして見てみると、気になることがあります。
最近テレビで、YouTubeやtiktokなどでバズった映像を集めて放送する番組を見かけます。
これは、テレビとしての価値を発揮しきれていないのではないか、と偉そうながら思ってしまいます。おもしろ動画を集める能力は、今やテレビクリエーターと一般の視聴者の間に大きな差はないと思いますし、それをテレビマンがやってしまうのは、テレビ大好きっ子としてなんだか寂しいです。

制約があるからこそ、その中でいかに工夫するかが、面白さであり巧さだと私は思います。
だからこそ、YouTubeでおもしろいものがたくさん見られる今でも、私はテレビが好きなのです。テレビらしい番組を、これからも期待しています。

もうひとつ、思うことがあります。
このドラマにもう1人、「劇団の主宰者」が出てきたらどうだっただろう。
舞台もまた、テレビとはまた違った制約を持つエンターテインメントです。
やり直しが効かない、CGが使えない、限られたスペースで世界を表現する。
とはいえ自由な面もあります。テレビほど「社会的影響」を気にせず表現できるでしょう。
舞台演劇の性格を持った男性なら、どんなアプローチをしたかな、と考えるのもまた楽しいです。
でも、きっと選ばれるのは、変わらず幼馴染だったと思います。

コンテンツ消費からコミュニケーション消費へ

「コンテンツ消費からコミュニケーション消費へ」と言うフレーズを聞いた時、ハッとしました。近年の消費者の傾向です。

これは「ユーチューバーでもテレビマンでもなく、幼馴染」ということだと思います。
最近、テレビドラマを倍速で見る若者が多い、などと言われます。これには様々な理由があると思いますが、ひとつ「コンテンツを見ること」が目的ではないから、と言えると思います。見たと「言うこと」、視聴体験を「シェアすること」が目的かもしれません。それがある意味でのコミュニケーション消費で、幼馴染がその象徴として描かれていたように思います。

まとめにかえて

ドラマ「ユーチューバーに娘はやらん!」は、YouTube動画のようなテロップや効果音、挿絵を加えて作られたコミカルなテレビドラマで、アナザーストーリーはparaviで配信されていました。その中で各メディアの特徴を写し出す面白い作りになっていました。
もちろんそんなことどうでもいいくらいストーリーがおもしろく、手放しで笑えるドラマでした。

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