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『シン・ウルトラマン』感想①

空想特撮映画『シン・ウルトラマン』を観てきました。
端的に言うと、初代ウルトラマンを現代風かつリアル路線にアレンジし、原作愛と空想と浪漫にあふれる、素晴らしいヒーローSF映画だったと思います。

私は特撮オタクで初代ウルトラマンに関してもそれなりのファンです。今回も、原作(ここでは初代ウルトラマンを原作と呼びます)ファンとしての目線の感想となると思います。
とはいえ、TVシリーズに関して通してみたのは幼少期に一回、大人になってから一回見返した程度なので、有名どころのエピソードや大まかなところはもちろん覚えていますが、細かいところに関してはちょっとぼんやりとした記憶かなという状態なのでご了承を。

それでは、ネタバレありの感想を書きますのでこの先はご注意を。



序盤からウルトラマンの登場まで

おなじみグルグルタイトルカット

映画の初めに流れたのは、ウルトラマンのOPでおなじみのグルグルタイトルカット。ここで注目したいのは、初めに『シン・ゴジラ』というタイトルが出た後に、本作のタイトルである『シン・ウルトラマン』がバーンと出てくるところ。原作のウルトラマンは『ウルトラQ』という前身の特撮ドラマ(ウルトラマンのように巨大ヒーローは登場せずに、人類が自分たちの力で怪獣や怪奇現象と戦っていく怪奇SF)があり、元ネタのOPタイトルカットでも『ウルトラQ』→『ウルトラマン』とタイトルが順番に出てくるオマージュです。まずここでファンはニヤリとなりますね。グルグルはやるとは思っていましたが、ここまでやってくれるとは。
ちなみに『シン・ウルトラマン』の前身の映画ともいえる『シン・ゴジラ』とのつながりは最後まで明確には示されませんでしたね。後述しますが、ゴメスが最初の巨大不明生物のような扱いで描かれていたので、『シン・ゴジラ』の世界とは別ものと考えるのが適切かな。

シン・ウルトラQ

そして、タイトルカット後にダイジェスト的に描かれたのは巨大不明生物ゴメスやマンモスフラワーの出現と人類との戦い。これはまさに『ウルトラQ』のパロディです。細かく書くのは省略しますが、ここで紹介された怪獣(映画の世界では"禍威獣")はすべてウルトラQに登場したものが元ネタです。ウルトラQの第一話で出たのがゴメスなので、その点も一致。ウルトラマンなしで人類の科学力ですべて退治しているのも同じですね。
自分は『ウルトラマン』だけでなく『ウルトラQ』も大好きなので、これは嬉しいサプライズでした。
ストーリー的にも禍威獣に対抗する組織で、物語の主役でもあるチーム「禍特対」設立への理由付けにもなっていましたね。
自分は怪奇SFもののウルトラQも大好きなので、連続ドラマでこのダイジェスト部分のシン・ウルトラQをとても見たい。なんとか、作ってくれないかなあ。マンモスフラワー回とか絶対面白いでしょう。

ネロンガとガボラ

メインストーリーで最初に描かれた敵である禍威獣は「ネロンガ」。原作ではウルトラマンが劇中で最初に戦うのはベムラーという怪獣なので、ここは変えてきました。この後にウルトラマンの敵として登場した「ガボラ」とともに、原作のストーリー的にはそれほど大きく目立つ存在でもなく、初代ウルトラマン怪獣の中でもゴモラやレッドキングなどに比べると少し地味な怪獣です。
ネロンガに関しては透明になり電気を食らうという面白い特徴(劇中では透明になる意味ある?と執拗にツッコまれていましたが)があったり、ガボラに関しても核関連施設を狙うためウルトラマンがただ倒すだけではなく人類を守るような行動をするという話の展開につなげることができたりと、この怪獣である意味はあったかなという理由は考えることはできますが、ある程度は脚本で大のウルトラマンファンである庵野さんの趣味もあるのかな?って思ったり……。
また、ここで面白いところは、冒頭のダイジェストで登場した禍威獣「パゴス」と「ネロンガ」「ガボラ」は肉体的に類似性があり、アタッチメントを付け替えたようにも思えるというセリフがあったこと。実は原作のガボラはパゴスの着ぐるみを改造して言ってしまえば使いまわしで生まれた怪獣であり、その後その着ぐるみはアトラク用のネロンガにも改造されたという経緯があります(特撮では現在でもよくあること)。そのため、デザインに類似性は大人の事情なのですが、その辺の作品としてのツッコミどころも拾っていちいち何かしら理由づけているのが、原作ファンからするとこの映画の面白いところだなと思いました。こういう実にオタク的なリメイクの仕方、正直言って大好きです。前述したネロンガって透明になる意味ある?って執拗に指摘されていたのも、原作では技術的な都合上戦闘時には透明化が解けた状態だったのでこうしたツッコミどころへの言及かなって思えて笑えました。他にも私が気が付いた原作のツッコミどころへの言及や理由付けは太字で書いていきますね。
ちなみにこの禍威獣たちの類似性は、作品中で後半に"生物兵器としてつくられたから"と理由付けされています。

ウルトラマンのキャラクター

ネロンガとの戦いのときに地球に飛来し、禍特対のメンバー神永と融合したウルトラマン。原作通り、飛来時の事故で命を奪ってしまった人間と融合して、生き長らえさせるという流れです(「ヘッヘッヘ・・・シンパイスルコトハナイ・・・」の件がなかったのは残念でしたが)。ウルトラマンは神永に乗り移った形で人間社会で生きることになるのですが、ある程度人間界の知識は取り込んでいるようですがやはり最初は完全に馴染むことができず新メンバーとしてやってきた浅見にも変な奴と思われるウルトラマンin神永。禍特対の仲間にさすがにバレるのでは?とも思わんこともないのですが、神永がもともと寡黙で何考えているかよくわからない人と思われていたようで特に疑問も持たれていないようでした。
原作ではウルトラマンが主人公にあたるハヤタ・シンという男と一心同体になるのですが、ハヤタという人物が主人公としては結構無個性で彼の人格にスポットをあてられることが全編通してあまりないのですよね。だからそもそも融合後の彼の人格がハヤタそのままなのか、ウルトラマンが乗り移っている形なのか、はたまた二人の意識も融合したような人格なのかがはっきりわからない(本編のその後が描写される外伝作品ではそれが語られていることもありますが、基本的に正史では言及がないはず)。ハヤタとウルトラマンの融合が解けるのは最終回の本当にラストなので、ハヤタの本来の人格がわかるのは第一話で彼が事故に遭って命を落とすまでなのです。なんとなく本編から察せられるのは、正義感が強くて生真面目な男ってところですかね。
『シン・ウルトラマン』では、ウルトラマンとしての人格の神永は、人類との友情というストーリー上でも重要である程度掘り下げられましたが、映画を全部見ても神永の元人格についてはほとんどわからないままなのもある意味原作通り?
ウルトラマンin神永は、斎藤工さんの演技も相まってとても面白いキャラクターになっていましたね。人類を理解しようとはしているけれどまだ馴染むことのできず周りから浮いていて、でも絶対にいい人ではあることは確信できるという感じが、独特の雰囲気から出ていて名演でした。


長くなってしまったので、複数回に分けます。
次回はザラブやメフィラスについて書きたいですね。

読んでいただき、ありがとうございました。

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