かわいいと言わないことは母の愛だった

かわいいと言わないことは母の愛だった。

母とだいぶ仲がいい方だ。
「あなたたちの前世は双子だったと思う」と親戚に冗談めかして言われるくらいである。
買い物も、食事も、二人で行くことがかなり多い。

そんな中、母の口から「かわいい」という類の言葉をかけられた記憶がないことに最近気がついた。
小さい頃の記憶をかきあつめても思い当たらないし、母の声でその言葉を脳内再生すると違和感まである。

他にも、子供らしい言い間違いや勘違いを「おもしろいね」と喜ぶこともなかった。

でも、愛情は充分すぎるくらいもらった自信があるし、今でも、むしろ今の方が強く感じている(それはこちらも大人になって有り難みが分かるまで成長したというのもあるかもしれない)。


そんな母が、我が子にかわいいという類の言動をしなかったのは、
おそらく母は、私が小さい頃から、私との会話の中で、常に同じ世界にいてくれていたからなのだと思う。

私の言動に対して、「面白いね」「かわいいね」という言葉をかけてくれるのは、確かに少し嬉しく思う時もあるけれど、
私の世界から少し逸れて、その外側から大きな意味でレビューをされている感覚になることがある。

でも母は必ず私と同じ世界に居続けてくれるのだ。

なんで?なんでちはるはそう思うの?
と、しょうもない話でも真剣な話でも、同じ世界にいることをやめないでいてくれる。

これ以上の愛がどこにある?そして、周りの反応に萎縮してしまっていた幼い頃の私にとってそれはどんなに心強かったことか!

いっぱい笑って笑われての高速球の会話も楽しいけれど、
大切にしたい会話は大切にできる人になろう

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