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包まれて、馴染んで、漂って、リセットされる|豊島美術館


※今回は、初めて訪れた豊島美術館についての感想をこれでもかという程に書いてしまうので、まだ豊島美術館を訪れたことがなくて先入観を持たないままでいつか行ってみたいという方は、ご注意ください。

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これまでに感じたことのない、
包まれているような心地よさ。

初めてとは思えないほど、
馴染んでいく心と身体。

時間も、自分自身も、ゆっくりと、漂う。

初めて訪れた豊島美術館は、不思議な程に気持ちのよい、じんわりとパワーを与えられる場所でした。


美術館のある丘の上からは、それはそれは素敵な景色を眺めることができます。もうこの景色が本当にお気に入りです。海を湖と見立てれば、愛の不時着の最終話に登場する、スイスの景色に似ている気がして興奮しました。

私のツボを掴んで離さなかった丘からの眺め




木漏れ日が差し込む遊歩道を進み、美術館の入り口へ。

履物を脱いで入り口に立った瞬間、早く中に進みたいという思いと、体験したことのない空間に入ることを躊躇う気持ちが共存していました。しかし、やはり好奇心には勝てないようで、そのまま足を進めました。

木漏れ日の遊歩道




初めて体験するその空間は、不思議な世界。
隔てるものがない大きなコンクリートの部屋の中、人々は、立っていたり、歩いていたり、座っていたり、寝転んでいたり。自由に、静かに。

それが不思議と、ただ、ひたすらに、心地よい。
周囲には人がいるのに、目を閉じてみると、まるでそこは自分だけの空間のようで。腰をおろしてみると、地べたに座っているという感覚さえなくなり、ゆらゆら夢心地。気が付けば、何十分の時間が過ぎているのです。


水の音、木々が風に揺れる音、鳥の囀り。そのすべてが、子守唄のように私を解かして、溶かす。

差し込む光と、生命が宿っているかのように留まったり流れたりする水が、じんわりと、けれど強烈に、「いま生きている」ということを伝えてくれます。


自然の音の中で、静けさが響く空間。
床から湧き出る水に、生命のような”動”を感じる空間。

無機質なコンクリートで造られた空間が、どうしてこんなにも心地よいのだろう。たとえば何か悩みがあったとしても、包まれるような感覚に陥るこの空間では、きっと落ち込むことが難しい。少なくとも私は、ここに来たら、落ち込むことは出来ないだろうと思いました。

そして外へ出ると、本当に不思議ですが、生まれ変わったような気持ちになっているんです。それは、新しいわたしではなく、本来のわたしへ。きっとここは、リセットの場所です。


私は友人とふたりで訪れましたが、館内ではお互いが違う場所で好きなように過ごしました。そして満足するまでそこに漂っていました。そしてお互いルールを設けているわけでもないのに、出口ではお辞儀をしていました。何故か、ありがとうございましたの気持ちになるんです。

私たちは豊島美術館の心地よさにまんまと心と身体を掴まれてしまい、一度美術館を出て島を散策した後、他の場所に行くはずだった予定を変更して、美術館に再入場しました。再入場の際は時計すら持たないで滞在し、時間を気にしなかったあまり見事にフェリーを一本乗り過ごしました。

再入場の際には右のスタンプが押されます。


丘からの眺めと遊歩道、そして美術館。
自然の中で心地よく在ることができるこの極上の空間と時間がアートであるならば、どうやら私はアート初心者にして、とんでもない至極のアートに出逢ってしまったのではないかと思うのです。

ひとたび社会に戻れば、リセットしたことも、あの感覚の記憶も、きっと日常生活があっさりと奪ってしまうんだろうと思います。でも、この場所が在るから大丈夫。リセットできる場所が在ることを知っていれば、何度だって始められる気がします。豊島美術館、日本の宝物だなあと思いました。



余談ですが、丘の上で、あるかな〜と軽い気持ちでシロツメクサを見ていると、ありました。四つ葉のクローバー。見つけたときの嬉しさがとっておきなので、写真にだけ収めました。今後行かれる予定の方は、探してみてくださいね。

四つ葉のクローバー


じっくり読んでいただけて、何か感じるものがあったのなら嬉しいです^^