「おおいにふざけること」によって、既存の“歌舞伎”から新たな“Kabuki”へと飛翔しよう
舞台『太陽と鉄と毛抜』の稽古が始まりました。2023年7月7日〜15日まで北千住BUoYで開催される「条件の演劇祭 vol.1 Kabuki」のなかで上演される演目です。私たち「ぺぺぺの会」はBチームに属しています。「ほしぷろ」さんと同時上演します。上演順は、「ぺぺぺの会」→「ほしぷろ」さんとなっています。
この話を頂戴して、物語を書き始める前から「おおいにふざけること」を目標にしていました。歌舞伎の形式や歴史について見識を深めて、それを上演に反映していく、という真っ当なプロセスを踏む気はさらさらありませんでした。むしろ、私はこの演劇祭のサブタイトルで、歌舞伎が“Kabuki”と表記されていることをずっと気にしていました。既存の“歌舞伎”を踏襲するのではなく、私たちで新しい“Kabuki”をつくろうとするような気概がなければならないのだ、と僕は考えていました。そこで、私は、歌舞伎の形式や歴史をリスペクトしつつ、「おおいにふざけること」によって、既存の“歌舞伎”から新たな“Kabuki”へと飛翔しようと考えたのです。
まず、物語を書き始める前に、作品紹介文の締め切りがあり、私はそれを書き始めました。その頃、私はどんな作品を書こうかと、いつも電車のなかでぼんやりと考えていました。
いくつかアイデアは浮かんできましたが、どれもが凡庸に感じられ、すぐさま記憶から消し去りました(現にわたしは当時浮かんでいたいくつかのアイデアについてもはやなにひとつ憶えていません)。演劇祭を主催する「人間の条件」さんの代表であるZRさんと初めて顔をあわせたのは4月7日のことでした。私は相槌を打ちながらZRさんのお話を聞いていました。ZRさんが私にいくつか質問をしてくれましたが、私はうまく答えることができませんでした。ちょうど私の悪い癖が発動してしまっていて、話の内容よりも相手の話しかた、身だしなみ、飲み物を口に運ぶタイミング、その場の雰囲気……そういうことばかりが気に掛かってしまって、私の頭のなかでは、今話されている内容とはまるで関係のないトピックが渦巻いて、それらがシナジーを起こしながら、思索は深化していっていました。私たちはその後、夕食をともにしました。どこにでもあるようなうどん屋さんです。私はそこでうどんを頼まずにしらす丼をオーダーしました。ZRさんの向かいの席に座って、うどんをすするZRさんの後景にある壁を見つめていた、そのときに私は、ふと思ったんですね。人はどうして体を鍛えるんだろう? って。
ZRさんと別れたあと、帰りの電車のなかで日常的に使用しているアプリケーション(WorkFlowy)にすぐさまその文言を書き留めました。
そして書き留めた文字をしばらく眺めていたら、おそらくこの命題は『毛抜』の物語と間接的に通ずるところがある、という確信が、私のなかで芽生えてきたんです。
直接的に通ずるわけではありません。しかし、厚い壁を何枚か隔てたところで、この命題と『毛抜』は確実に通じあっている。私が作家としてするべきことは、その「厚い壁」を描くことだ。私の物語を接点にして、命題と『毛抜』を線でつなぎあわせることなんだ、と思ったんです。
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