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ネルドリッパーと物への愛着
コーヒーメーカーが壊れてしまったことは以前にお話ししたと思います。せっかく壊れてしまったのだから——という言いかたも変ですが——一段とこだわりをもって、コーヒーを淹れてみたいと思いました。
参考にしたのは蕪木祐介さんの著書『珈琲の表現』(雷鳥社)です。そこで紹介されているのがネルドリッパーという道具です。
ネルドリッパーはどんな点でペーパードリップよりも優るのかというと、
ネルフィルターを使うことで、珈琲豆に含まれるオイル成分が多く抽出され、少しとろりとした滑らかな舌触りと豊かな芳香を愉しめます。
そして、
一回ごとに捨ててしまう紙のフィルターとは異なり、ネルは使いこんでいくにつれ、色合いも深くなっていくもの。
「物をつかいこんでいくこと」は私の関心事でもあります。とくに家電製品、電子機器類では最新のもの、最新のものを追いかけてしまいたくはなるのですが、できるだけその時点で自分が最も良質であると思えるものを購入してそれを長くつかい続けるようにしようと考えています。
もちろん、値段が高ければ「良質」というわけではありませんし、高価なものを買えば長持ちする、とも一概には言えません。
なにより大事なのは、自分がその物に対して愛着を持てるかどうかです。物に対する愛着を持つためには自分が納得のいく物を手に入れて、それをつかい続けなければなりません。
私はもともと物持ちがかなりいいほうなので、そのような生活の方法(物をつかいこんでいくこと)にぴったりと合っているような気がしているので、まさにそれを実践してみている最中ということになります。
できるだけ物を捨てない生活。
私にとって、それは地球環境に配慮するための手段というよりも、結果的にそうなっているというくらいだから、ストレスを感じることもありません。
とはいえ、今夏のような異常な暑さを経験すると、地球環境に配慮しないわけにはいかない、という気も起きてきます。
ですが、人間には人間の生活があるというのが実情です。人間は利他だけでは生きることができません。利他と利己がうまい具合に掛け合わされたとき、人間は生きることに喜びを覚えるのではないでしょうか。
自分のためにしている生活の方法が、結果的に地球環境のためにもなり、地球環境のために起こした行動が結果的に自分たちのためにもなる、と考えられたらもうそこで「好い循環」が生まれているはずです。
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