率直なフィードバックのために
「稽古」じゃなくて「クリエーション」
『「またまた」やって生まれる「たまたま」』のクリエーションが始まった。
舞台芸術の準備期間は一般に「稽古」と呼ばれることが多い。けれど、「稽古」と言うと決められた型があり、それを体得するための修行、のようなニュアンスが強い。
確かに、舞台芸術のための練習・準備には、そのようなニュアンス(決められた型の習得)がないわけではない。ぺぺぺの会(自分が所属する創作チーム)には、ぺぺぺの会がやりたいことがある。そのやりたいことを、参加してくださる俳優やスタッフに伝えていくことは大切なことだと思っている。
しかし、僕が「稽古」ではなくて「クリエーション」という言葉をわざわざ選ぼうとしているのは、自らが伝えることと同じくらいに、参加者から伝えてもらうことを大切にしたいと考えているからだ。
その関係性は、短期的に観れば、一方がもう一方に対して、教える/教えられることになるかもしれない。けれど、長期的に観れば、両者が教えながらも教えられるような関係性を構築できるのではないかと考える。
僕は、演出家と俳優がクリエーションの場で対等になるために、教えること・伝えることを避けていた。
「対等である」ということ
先日、リスペクト・コミュニケーション研修というものを受けた。
研修では、ハラスメントについての基礎知識が解説され、他者を尊重しながら、双方向のコミュニケーションを図り、より創造性の高いクリエーションの現場を実現するためにはどうしたらいいかについての、明瞭な提唱を受けた。
そこで、自分は、「対等」を履き違えていたことを思い知った。
これまでの自分は「対等」であるために、「なにもしない」という選択肢を取ってきた。他者との必要以上の関与を避け、言いたいことがあってもそれを呑みこんで、集団の場で積極的に意志決定することを避けてきた。
殊、演劇のコミュニティ内にいると、ハラスメントにまつわる話題(「あそこの現場でハラスメントがあった」「その行動はハラスメントであるかどうか」……)には事欠かない。
自然と背筋をただすようになり、ほかのコミュニティにいるときは無邪気に愉しめるのに(ほかのコミュニティにいるときにはハラスメントまがいなことをおこなっていた、という主旨ではない)、演劇のコミュニティにいるときだけこんなに窮屈な思いをしているのはどうしてだろうと考えた。
その数年間はひじょうにつらく、演劇をやめることを何度も考えた。
効果的なコミュニケーションと創造的なプロセスを促進するために「フィードバック・シート」を導入しました
率直なフィードバックを目標に掲げたのは『太陽と鉄と毛抜』の頃からだった。ガイドラインを作成し、フィードバックが活発になるように努めた。
公演が終わって、まだ足りない、というか自分が環境づくりとして進めていきたいことが、メンバーに十分に伝わりきっていない、いや、伝わっているかもしれないが、それを具体的に行動に移すためのステップを、自分は提示できていないのではないかと考えた。
そこで、フィードバック・シートというものを作成した。稽古に参加するメンバーが、
スタート:始めたいこと
プロブレム:問題に思うこと
コンティニュー:続けたいこと
それぞれの欄を稽古終わりに記入していく。
次回の稽古では、そのシートをもとにして、対面でのフィードバックをおこなう予定だ。
いきなり対面でのフィードバックを促すよりも、「スタート」「プロブレム」「コンティニュー」の欄を満たし、各自が思考を整理した状態で、対面フィードバックに臨むほうがより率直さが増し、効果が高まるのではないかと期待している。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。 これからもていねいに書きますので、 またあそびに来てくださいね。