プラダを着た悪魔
こないだのテレビ放送で久しぶりに見たら、やっぱり面白くってまたもや見返したり。もう何度も何度も見ているけど繰り返し見たくなる作品です…公開が2006年という事は、もう14年前の作品!でも古臭さは全然感じませんでした。
ただ完璧に仕事をするだけ、それが全て
ファッション業界のトップに君臨する雑誌「ランウェイ」の鬼編集長ミランダの元で働く事になった、ジャーナリスト志望の真面目でファッションセンス皆無なアンディ。ミランダは言葉こそ厳しいしありえない様な態度もとりますが、あくまでも「仕事に対して真摯で誠実」であるだけなんですよね。それが他の人よりも飛び抜けているから、ヤバイ上司に見える。笑
アンディは「ファッションみたいなチャラチャラしたもの」みたいな意識があるので最初はなめてかかっているのですが、あるタイミングから心を入れ替えたかの様に働き始めます。
(こんな素敵なクローゼットで、私もお洋服見繕ってもらいたい…)
見た目や素敵なコーディネートに目がいきがちですが、アンディの心の変わり方、そして仕事の方を向くとつい犠牲になってしまうプライベート…でもそれも嫌いじゃないのよ私…という葛藤。分かる、分かるよ。きっと誰もがどんな仕事だろうと経験がある事だと思う。
結果、ボーイフレンドや友人との関係にもヒビが入るんですがそれでもやっぱり仕事はする。「ランウェイ」の関係者は誰もが誇りを持って自分の仕事を完璧に遂行する事に命をかけているのです。
そんな彼らの姿を見ると、「仕事頑張ろう!」「自分磨きしよう!」という気持ちになれるからこれまた栄養ドリンク的ポジションの映画として最高。
私は公開当時からこの映画が好きなのですが、観賞後しばらくは仕事頑張ろうモードになれます。(そして物欲もふくらむ。笑)
キャラクターが全員魅力的
こうまで思わせてくれるのは、登場人物の誰かには共感できるし憧れを持つ事ができるという事だと思う。
鬼編集長、ミランダを演じたメリル・ストリープはさすがの貫禄。
キーキー喋るのではなく、低く小さい声でささやく様に話すミランダは厳しいけどヒステリックとかのタイプじゃなくて「ボス!」って感じがこれまた重厚感があって良い。メリル・ストリープ自身はクリント・イーストウッドを参考にしたんだとか。
ストリープの作り出したミランダの声色については誰もが予想外だった。「ミランダがどんな風に話すのかについてはそれぞれが思い描いていたと思う」とアン・ハサウェイは回想する。「それはきっと耳障りで、横柄で、狂ったような声だったはずよ。だから、メリルが口を開いて、ささやくような声で話し始めたとき、その部屋にいたみんなが、一斉に息を飲んだわ。それはとても予想外で、しかも素晴らしかったの」
ELLE Onlineより引用
ミランダのキャラクターについては2人の男性が着想源だという。一人はクリント・イーストウッドでもう一人はマイク・ニコルズだ。「クリント・イーストウッドから学んだのは、話し方よ。彼は決して声を荒げない。だから彼の話を聞くためには誰もが身を乗り出さないといけない。すると自動的に、彼はその部屋の中で一番力のある人間になる、というものよ。でも彼はファニーじゃないわ。それに関してはマイク・ニコルズから盗んだの。最も辛辣な批評というのは、ちょっとした面白味のあるアイロニーを添えれば、最も効果的な命令や、最も記憶に残る忠言になる。なぜなら誰もが、言われている相手ですら笑ってしまうから。歩き方については、恐縮だけど、わたしのものよ」
ELLE Onlineより引用
ミランダのモデルになったらしい、VOGUE編集長アナ・ウィンターも実際かなり厳しくストイックな方の様で…
(「IN VOGUE Editor's Eye」や「ファッションが教えてくれること」を見るとミランダよりすごいのがよく分かります。笑)
メリル・ストリープとアナ・ウィンターの対談動画もあって、ちょっとドキドキしながら見たりしていました。
話しているのはキャサリン・グラハムの話ですが、なんだかこの2人が笑ってくれているとホッとするな…笑
ついミランダにばっかりフォーカスがいってしまって忘れがちな(笑)主人公アンディはアン・ハサウェイ。当時はまだ若くてピチピチ元気!って感じですが、最近はすっかりオスカー女優の貫禄ですね。
この大きな目と口で、コロコロ変わる表情がとってもかわいい。一時期は「ぶりっこ」だといわれて嫌われていた様ですが…私はずっと好きです。とにかくかわいい。
そしてスタイルも良いので、どのファッションもめっちゃ似合っているんですよねえ…ドレスアップした時も本当に素敵。
アンディの先輩で、同じくミランダのアシスタントであるエミリーは、エミリー・ブラント!公開当時から気になってはいましたが、ここまでメジャーな女優になってくれるとは…嬉しい限り。彼女は大好きなので、今たくさんスクリーンで見られるのはとってもハッピーです。
この時は、ほとんど無名であんまりキャリアもなかったと思うんですが、メリル・ストリープともアン・ハサウェイとも渡り合う演技でがっつり印象を残してくれました。きついポッシュなイギリス訛りとがっつり囲み目メイク、そしてアンディの事を小馬鹿にする様な嫌味な感じ…全部合わさって最高に良かった。笑
ラストはなんだかんだ、アンディの事好きだったし認めてたのかな…と思える様なシーンでこれまたほっこり。
アンディの良き理解者、ナイジェルを演じるスタンリー・トゥッチはお洒落さ全開でこれまたかっこよかった〜!
丸メガネに基本を押さえたスーツ姿ながら、アクセサリーやネクタイが毎回お洒落で、「ああ、こういうディレクターいるよね…!」って感じ。アンディの良き理解者ではありますが、優しく慰めたりしてくれる訳ではなく「は?嫌なら辞めれば?」という辛辣スタイルなのもこれまた良い。そうなんですよね。グチグチと文句を言って、同調して慰めてもらってもその場が気持ちいいだけで何も解決にもならない。ナイジェルも、仕事に対して真摯に向き合っているだけでその向き合い方の手伝いをしてくれる様な存在なんですよねえ。いいなあ、こんな上司…笑
アンディとのロマンスを繰り広げるのは、冒頭からいる彼氏ネイトと、明らかにチャラそうなクリスチャン・トンプソン。
ネイトはきっと長い付き合いでずっとアンディを知っているから、文句を言って蔑んでいたファッション業界へ向かっていってしまうアンディを受け入れられなかったんでしょう…あとはほったらかしにされて寂しかった?笑
ネイトを含む友人達とは「フレンズ」的な仲良し感が見えたから余計に変化を受け入れられなかったのかも。
クリスチャン・トンプソンは女慣れしてるって感じでヤな男だったな〜!
アンディからすると、大人の男で、自分の仕事も理解してくれて、憧れのジャーナリストでもあるクリスチャンに惹かれる気持ちは分からんでもないが…まあ、事後だったとしてもミランダへの忠誠を誓ってクリスチャンの元を去ったのは偉いと思う。笑
まあまあ、試しにみんな見てみてよ
圧倒的女性支持により人気が衰えない本作ではありますが、シネフィルの皆様や男性にはあんまり刺さらない様で…確かにあんまり興味はそそられないかもしれませんが、ぜひとも1度は見てみてほしい!きっとどこかに共感できるし、どこかに好きなところがあるはず。
ストーリー自体はかなりシンプルで、予定調和のご都合主義的なところもありますが、だからこそキャラクターやファッションの造形美に集中できるという良さもあると思います。
プラダを着た悪魔
The Devil Wears Prada
2006年 アメリカ
監督:デヴィット・フランケル
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ、エイドリアン・グレニアー、サイモン・ベッカー、他
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