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推理小説ずき【 本棚の二列目*経理部 藍澤】

他人の「本棚」を見るのって、すごく楽しくないですか?

その人を形作った小説やマンガやビジネス書――様々な「本」が詰まっている本棚を見るだけで「この人はこういう人だったのか~」と再発見できる気がします。
そして、あんまり見せたくない「偏愛本」を、本棚から発掘するのも大好きです。

本棚にどーんと飾る「よそいき」の本じゃないんだけど、大好き。いや、人に見せるのは恥ずかしいんだけど、見せたい思いもちょっとある……。

そんな相反した思いを抱えて、ひっそりしまい込まれた本たち。
いわば「性癖」みたいなものが隠されがちな「本棚の二列目」
それをドドンと公開しちゃおうという、嫌らしいコーナーです。
公開してくれる人たちは、ポプラ社で働く色んな部署の人たち。

出版社で働く人たちの本棚って、どんな本がつまってるんだろう?
そんな人たちの「二列目」には、どんな本が並んでるんだろう?


友達の家の本棚をのぞき見する感覚で、ぜひお楽しみいただければ嬉しいです。
第五回は、経理部の藍澤さんです。
※webastaに2019年7月掲載した記事と同じ内容になります。

ポプラ社の経理部で働いている藍澤と申します。50歳・既婚です。

本連載の担当者・森潤也さんが編集した「活版印刷三日月堂」の舞台のすぐ近くに住んでいます。(「三日月堂」のある場所から徒歩3分でわが家です)
そのご縁で、なのか、自宅の本棚を紹介させていただくことになりました。

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この本棚、鹿島茂先生監修です。詳しくは覚えていないのですが、何かの通販で買いました。
鹿島先生が「スライド書棚は意外に本が入らない。本棚の天板~天井までがデッドスペースになる。薄くて天井まで届く本棚がいい。特別に作ってもらったのがこれだ」というようなことをおしゃっていたと思います。確かにたくさん入り、おすすめです。

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といいながら、昔買ったスライド書棚も1つあります。たしかに天板の上がデッドスペースになっていますね。

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引越を何度かしていて、そのたびに本が多くて苦労したので、これ以上は増やさないように定期的に断捨離しています。
前々回登場の村上さんの書棚が理想ですが、まだまだですね・・
前回の江崎さんも書かれていましたが、本屋に行くとついつい背伸びして買ってしまうので、読んでいない本も多いです。

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子どものころから「推理小説ずき」でした。上段右の白~ピンクの背が江戸川乱歩。元々父親が買った春陽文庫の旧版です。今は新装版が出ていますね。

上段左の黒い背は横溝正史。こちらは大人になってから買いました。角川文庫の横溝はカバーに恐い絵が描いてあり、それがイヤでずっと読んでいませんでした。「生誕100年」で新カバーになったのを機に一挙購入。「横溝作品を一挙に読む」のは久々に幸せな読書体験でした。

下段は戦前から戦後に活躍した「小説の魔術師」久生十蘭。
今は岩波文庫でも読めるし、国書刊行会から立派な全集も出ていますが、昔はここにある三一書房版と教養文庫版しかありませんでした。

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高校時代は泡坂妻夫さんの作品が好きでした。右端は角川文庫版。今は東京創元社から新版が出ていますね。
綾辻行人さんがデビューされたのが私が大学1年生の時。ほどなく「新本格ブーム」が起こり、ミステリ好きには楽しい時代でした。残念ながら手元にあまり本が残っていません。
最近ではなんといっても米澤穂信さんです。

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泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』 京極夏彦『鉄鼠の檻』サイン本。
今回奥付を調べたら『姑獲鳥の夏』『鉄鼠の檻』『ハサミ男』『匣の中の失楽』『涙香迷宮』は初版本でした。だから何だという感じですが・・

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瀬戸川猛資『夜明けの睡魔』。日本の海外ミステリ受容に大きな影響を与えた本。弊社「怪盗ルパン」の文庫解説にも、本書の文章が再録されていますね。
その瀬戸川さんが編集・発行された幻の書評誌「BOOKMAN」。なぜか1冊だけ手元にありました。瀬戸川さんの影響をすごく受けていると、あらためて実感しました。

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日本の近代文学が好きで、一押しは中島敦。「山月記」が有名ですが、実は発表されたほぼすべてが傑作です。若くして亡くなっており、長生きしていたらノーベル文学賞を取っていた・・と半分マジメに思います。
中島・太宰治・松本清張は同い年で、ちょっとびっくりします。

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筑摩書房から刊行されたつげ義春全集。隣のフィギュアは「ねじ式」が映画化されたときに映画館で売っていたもの。ゼンマイで動きます。かわいくはありませんね。
『孤独のグルメ』は初版本。このマンガがここまでブレイクするとは思わなかったです。

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前々回登場の倉澤さんも書かれていた村上春樹。
『ノルウェイの森』が出たのが私が大学生の時。我々以降の世代はとにかく影響を受けていますね。

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ビートの詩人・諏訪優の詩集『谷中草紙』とエッセイ『東京風人日記』。
谷中を舞台にした晩年の作品はビートいうより演歌の香りが漂い、そこがすばらしいところです。

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写真集3冊。浅草にいるあやしげなおじさんおばさんをたくさん撮った『や・ちまた』。大好きな写真家・植田正治が奥様を撮った『僕のアルバム』。
都築響一『TOKYO STYLE』は今はなき京都書院アーツコレクション版。

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21世紀になった頃から、小説をあまり読まなくなりました。かわりにノンフィクション・人文書を手に取るようになりました。
こちらは仏教本。たくさんありますが、私自身は限りなく無宗教です。お経の本とかはあまり読んでいませんね・・中段のお坊さんの人形は「円空仏」のフィギュアです。

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 食べ物本。そこそこあります。食べ物が好き、ということでしょう。人形の方が目立ちますね。
『世界屠畜紀行』の著者・内澤旬子さんの新刊『ストーカーとの七〇〇日戦争』は結構すごい本でした・・

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コンピュータやAIの本。「AIは将棋では人間を越えたが、小説はまだ書けない」ということはわかりました。ホントに理解するのは難しいです。私は一応前職がシステムエンジニアなのですが、やっていたのはもっと泥臭い仕事でした。

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「アイヒマン実験」と「スタンフォード監獄実験」等々の本。強烈な内容のものばかりです。なぜかこういう本を結構持っています。ミステリを読むような興味で読んでいる、ということにしておいてください。

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去年~今年前半に読んでおもしろかった本。いい本をたくさん読めた年でした。

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3年前まで13年間、埼玉県入間市にある倉庫で勤務していました。
なので、港湾労働者だったエリック・ホッファーや工場勤務を体験したシモーヌ・ヴェーユに惹かれます。通して読むというより、時にパラパラ読む本ですね。ヴェーユの「現場になじんでない感じ」がたまりません。
『平場の月』は印刷会社の現場に勤める男性が主人公。私と同じ50歳で、同じ東武東上線沿線在住。心にしみる小説でした。

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『そして、バトンを渡された』を読んだのがきっかけで、今年からまた、小説をよく読むようになりました。
『むらさきのスカートの女』は衝撃的な作品でした。芥川賞、取るんじゃないかな。

※記事作成時は選考会前でしたが、予想通り芥川賞受賞となりました。

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「最強のダメ女子小説5冊」だと思うのですが、どうでしょう?実はいちばん好きなジャンルです。

長くなりました。これでおしまいです。本の話をすると止まらなくなってしまいますね・・おつきあいいただいてありがとうございました。

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