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朝4時、葉山の海で、日の出とともに撮影――『その本は』の広告ができるまで

何気なく目にする広告。
興味を持って目を留める広告。
舌打ちしてスルーする広告。

一言で広告といっても、人によって、内容によって、どんなふうに受け取るかはさまざまです。
出来るだけ目を留めていただきたい。できれば内容に興味を持ってもらいたい。さらに言えば本を買ってほしい!
そんな思いで広告づくりを日常的に行っているのが、私・小林が所属する宣伝プロモーションユニット(※)の面々です。

※宣伝プロモーションユニットとは、ポプラ社から出版される本を読者の皆様にお届けするべく、広告をつくったり、さまざまなメディアの方に魅力をお伝えしてご紹介いただいたり、SNSで告知する方法を考えたりしている部署です。

はじめまして。
申し遅れましたが、私は入社13年目、ポプラ社一般書通信ではおなじみのモリと同期入社の小林夏子です。

みなさん、もうご覧になりましたか?
ポプラ社が7月30日に出した、「あの本」の広告を。

この写真の撮影が行われたのは、6月22日のことでした。
今年は夏至が6月21日。
そう、一年で最も日が長い季節の、朝日のなかで行われたのです。
この日の日の出は、4時28分。
もう一度言います。
日の出は、4時28分。

私たちは、先ほどお見せした広告を作るために、AM4:00台に葉山の海で撮影を行う計画を立てたのです。
今日は、そんな酔狂な……おっと、熱意に満ちた撮影現場のレポートをお送りいたします。

『その本は』とは――夢のような共演

「その本」のことを知ったのは、2022年初春(たしか)。
弊社宣伝部の長であり、なんだかほかにもいろいろな仕事をしているスーパー上司Yが、「すごい本ができそうだからとにかく見てくれ」と、パワポでザクッと組まれた原稿を部署内で見せて回ったのが、「その本」との出会いでした。
あらすじを聞いて心躍り、話が進むほどにため息が出て、最後のオチで脱帽。

(あー、これ、一人でじっくり読みたかったな……)

なんて気持ちを持たないでもなかったですし、何なら途中で「データください」とのどまで出かかったような気もしますが、何にせよ「こ…こんなすごい本が出るんや……こら、忙しくなるでー!」と、突然の関西弁が舞い降りるほど衝撃を受けた日のことは、今でも鮮明に思い出せます。

あれから半年。
ようやくみなさんにお披露目できる日を迎えられ、「その本」の感動を共有できるのがうれしくてたまりません。
とにかく道行くすべての人に薦めて歩きたい。
あの日のスーパー上司Yの気持ちもわかるってもんです。

「その本」のタイトルは……
その本は

『その本は』又吉直樹 ヨシタケシンスケ(ポプラ社)

この本についてもっと知りたい方は、特設ページをご覧ください。

『その本は』をどう届けるか――インパクトたっぷりのお披露目に向けて

さて、そんな素敵な1冊『その本は』。
ポプラ社として、というよりも、イチ本を愛する者として、どうしたって世の本好きさんたちに届けねばならない本なのだ、という気持ちを強めていた春。
スーパー上司Yから、いくつかの宣伝施策のひとつとして、こんな話が出てきました。
「めちゃくちゃかっこいい写真でさ、めちゃくちゃかっこいい15段広告(※)打ちたくない?」
※新聞1面全体を使った、とてもお金がかかる広告のこと

否定する要素を見つけるのが難しい抽象的な提案!
もちろん答えは「Yes sir!」以外ありえません。
「めちゃくちゃかっこいい写真で、めちゃくちゃかっこいい15段広告」についての打ち合わせが始まりました。

広告制作およびPRのパートナー博報堂さんとのミーティング

ここからいろいろあったのですが、全部文字にすると長いので割愛します。
結果的に、「めちゃくちゃかっこいい写真」は、なんと写真家・上田義彦さんが撮影してくださることとなりました。

そして、引き受けてくださると同時に、撮影場所と時間が決まりました。

「朝4時、葉山の海で、日の出とともに撮影」

……まじか。
何時起きだろう、なんて考えるまでもなく、めちゃくちゃ早いじゃん。
早いっていうか、もしかして「遅い」なのかな?寝るのかな?寝ないのかな?終電で葉山に行けばいいのかな?海岸にテント張るのかな?又吉さん&ヨシタケさん用のVIPテントとかってあるのかな……?
など、冷静なつもりでまったくもって冷静さを欠いた思考をコンマ3秒ほど繰り広げましたが、すぐに思考を停めて答えました。

「Yes sir!」

『その本は』の広告ができるまで①――「朝4時葉山集合!」

さて、↑でわたしが思考を巡らせた点については、パートナーの博報堂さんが全部整えてくれました。
前日に撮影場所近くのホテルを予約、ホテルから現地までの移動手段の確保、食事の用意、スケジュールの調整などなど、至れり尽くせり。
我々はつくっていただいたスケジュール通りに身を動かせばよいだけ、という状態。
そんなスケジュール表を大公開!

見て!
又吉さんのスケジュール、02:25から始まっています。
04:00-04:30 SHOOT
の文字が光りますね(わたしはこの時初めて、撮影のことを「SHOOT」と表現することを知りました。かっけー!と思いました)。
寝たら起きられる自信がないけど、寝ないで翌日一日仕事できる気もしない。そんな30代半ば、微妙なお年頃。今でもこのスケジュール表を見るとドキドキしてきます。

でも、なんかこう…この非日常感……楽しい………。

「いや~、この日2時起きっすよ」と地獄のミ〇ワばりにふかしながら、「宣伝部大変アピール」にいそしむ、キラキラした日々。
学生時代の文化祭前のようなこのときめき、きっと長い会社員生活のなかでも5本の指に入るぐらい、忘れがたい経験になることでしょう。

……と、思っていたのですが。

撮影前日の昼すぎ、こんな連絡が入りました(一部改変)。

先ほど、再度、打合せしまして、
以下の方向で検討することになりました。
 
添付の最新予報 参照ください。
 
日の出タイミングの雨や、雲量は、
中々かわせないと予想されます。
 
日の出前後の4:00は、空が大分暗くなってしまうことや、
キャスト皆さんの待機時間を考えると疲労も増えてしまうので、
香盤を添付に調整し直しました。
 
4:50 又吉様   メイク〇号室→着替え△号室
5:30 ヨシタケ様 メイク〇号室→着替え△号室
5:50 キャスト&ポプラ社の皆様 ホテルフロント集合
6:00 ロケ地へ移動
6:15 ロケ地近郊にて衣装チェック
7:00 SHOOT

朝のスタートを遅くして天空の状況に合わせるのが良さそうとのことです。

なんと……予報は大雨!
少しでも雨が弱まってくれることを祈りながら、(7時撮影なら前泊の必要ないのでは……)なんていう思考を脇へ追いやりながら、前夜ホテルのある逗子近辺に集合したのでした。

はてさて、どうなることやら!

だって海の近くだし、集合時間が遅くなったから、ほら、ほんの少しだけ……前夜楽しんじゃいました

『その本は』撮影当日――天は「その本」に味方した

(雨がやみますように雨がやみますように雨がやみますように……)

と唱えながら眠りについた翌朝。
起きてすぐ窓の外を見ると……

明るい?

明るい!!!!!

AM5:00ごろ、ホテルの窓からの様子

これは、今すぐ出たほうがいいのでは……?
慌てて身支度をしてホテルのロビーに降りていくと、すでに撮影スタッフの方々がちゃきちゃきご準備を進めてくださっており。
続々と集まる各社スタッフさんとも、「おはようございます」のあいさつの前に、テンション高めの「日が差していますね!」から会話が始まります。

出発前に、メイクを終えたヨシタケさんも、こちらを向いてポーズをとり「がんばるぞー!」と笑顔を見せてくださいました(とってもお茶目で素敵なお人柄です!)。

予定時刻にホテルを出発し、マイクロバスに揺られること10分ほど。撮影の地、葉山御用邸すぐ近くの海岸に到着しました。

うーん……微妙な空模様!

AM6:10ごろ。右にせり出した芝生の丘で撮影予定

撮影場所に向かう道中は、小雨とはいえ傘がないと……という状況です。
海岸で、朝日のなかで……という雰囲気を出すには、もう少し晴れてほしい!

わからないと思いますが、真ん中やや左、背の高い黄色のシャツがヨシタケさんで…
到着してすぐに、丘の下で待機しているスタッフさんたちに深々と礼をされています

……と。
あれ? つくと同時に、雨やんだ?
さては又吉さんかヨシタケさん、めちゃくちゃ晴れ男なのでは……!

再び降り出す前に、撮っちゃおう!!!
ということで、着くなり一度降りた丘を再度登っていただき、大急ぎで撮影準備開始!

AM6:20ごろ、到着するなり撮影準備

スタッフさんが準備している間、ヨシタケさんの背筋はずっと伸びっぱなしでした。キーアイテムの風呂敷を結んでもらうときも、ずっと。

そして、ついに……

パシャリ。

ほんの少しですが、日の光が差したタイミングで、すかさず撮影。
これが6時35分ごろのこと。

もう一度言いますね。
撮影場所についてヨシタケさんが深々と頭を下げていたのが、午前6時15分。
晴れ間が出たタイミングでパシャリ、したのが午前6時35分。

「こ、これが、プロのお仕事……!」と、思わず口から漏れるほどの迷いなきシャッターさばき(造語)でした。

あー、この日のこと、一生自慢しよ。

後日談

この後、ホテルまでの帰り道にまた雨が降り出しまして。
この本、『その本は』は、本の神様にも祝福されいるんだなぁと、改めてしみじみと感じた朝でした。

さて、そんな刺激的な撮影体験から3週間が経ったころ。
紙に焼いた状態で渡されるという、上田義彦さん撮影のお写真が、弊社に届きました……!

スマホもライティングも撮影者の腕も悪いので、テカってしまっていますが……!
それでも伝わるこのかっこよさたるや!!!!!

完全に社会科見学気分で参加させていただいた撮影でしたが、何とも言えぬ感慨深さを味わわせていただきました。

こうして出来上がった冒頭の新聞広告ですが、同じ写真を使って書店様向けのポスターも作っておりますので、「見逃した!」というかたはぜひ書店様に足をお運びください(お店に貼られるまで、もう少しかかりそうです。気長に待っていただければ!)。

ちなみに……
撮影で使った風呂敷はちゃっかり記念にいただいて帰りまして……

あ~ん、かわいい!

お二人にサインも入れていただいちゃいました。
世界に二枚だけの貴重な風呂敷、いつかどこかでみなさまにお披露目したいと思っておりますので、その時まで楽しみにお待ちくださいませ。

***

当初の予定では、もっとドラマティックに、かっこいい宣伝マンの仕事を紹介するつもりだったのですが、気付いたら私のすっとぼけた性格しか伝わらない記事になってしまいました。
お付き合いいただきありがとうございました。

最後に改めて宣伝を。

少しでもこの本に興味をもってくださったそこのあなた、買ってください。お願いします!


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