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小説新人賞の事務局卒業にあたって、書き手のみなさんに伝えたいこと


ポプラ社の名を冠する、公募の小説新人賞――ポプラ社小説新人賞

昨年行われた第10回ポプラ社小説新人賞も、めでたく受賞者が決定しました。


応募総数は過去最多の876通
たくさんのご応募いただけたこと、この場を借りて心より御礼申し上げます。

一年に一度の賞なので、第10回ということは10年が過ぎたということです。
新人賞が10年続いたんだなあ……と思うと、とても感慨深いですし、数字的にもひとつの区切りを迎えた気がします。
いろんな模索をしてきた新人賞ですが、次の区切りである第20回を迎えられるよう、さらなる進化をしていきたい。そんな決意を編集部一同で抱いています。

この文を書いている僕こと森は、長らくポプラ社小説新人賞の事務局を務めてきました。
事務局とは、新人賞の運営に関わる事務を担う人です。
応募リストや原稿の整理をしたり、各選考会の調整をしたり、選考会での司会進行をやったり、受賞者に連絡をしたり……あれやこれやとやることが多いので、雑用係とも言います。
そんな事務局を、僕は第10回の区切りで卒業します。

僕は第4回から事務局を務めていたので、7度の新人賞に関わってきました。
円滑な運営を心掛けるだけでなく、挑戦もしてきたつもりです。
より多くの人にポプラ社小説新人賞の魅力を知ってもらえるように。ここに応募してデビューしたい!と思ってもらえるように。その結果として素晴らしい原稿が集まって、輝きに満ちた作家さんを世に送り出せるように。
そんな願いを込めて、いろんな試みを行ってきました。

たとえば、
新人賞がどんな賞なのかまとめた小冊子「ポプラ社小説新人賞虎の巻」を作ったり。

応募を考えている人が直接編集部に質問できるように、文学フリマにブース出店したり。
※応募したい人よりもプロ作家の人がたくさん遊びに来てくれました。

新人賞で選考委員が重視しているポイントやQ&Aをまとめたnoteのマガジン「ポプラ社小説新人賞への道」をスタートさせたり。

少しでもポプラ社小説新人賞に興味を持って貰えるように、いろんなチャレンジをしてきました。

どうしてそんなことをしてきたのか?

その問いの答えは簡単です。
僕たちにとって、「新人賞」は特別で、自社からデビューされた作家さんは特別な存在だからです。

※あくまでお仕事している作家さん全てが特別な存在である、という前提の上なので、誤解なきようご理解いただければ嬉しいです。


作家としてデビューすることは、人生が変わることでもあります。

商業出版だからこそ、たくさんの読者が自分の本を読んでくれる喜びもありますし、大ヒットしたら印税もいっぱい入ります。いろんな希望が待っています。
その一方で、作家生活は長く続きます。デビューは決してゴールではなく、むしろスタート地点に立っただけに過ぎません。
デビュー作後もさらなる飛躍ができると信じた書き手を選んで、世に送り出していますが、二作目が書けずに苦しむ方もたくさんいらっしゃいます。また、大ヒットしたが故の苦悩もあります。
デビューさえしなければ、こんなに悩まなくてよかったのに……と頭をよぎったことのある作家さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

僕たち編集者は、その業を背負う責任を持たなければいけないですし、デビューする新人作家さんに対しては、喜びも苦しみも受け止めながら、一緒に歩み続ける覚悟が必要だと思っています。
だからこそ、「特別」なのです。

もちろん、きれいごとを言っているのは承知の上ですし、反省もたくさんあります。お叱りの言葉をお持ちのかたもいらっしゃるかもしれません。
ただ、新人賞を通してデビューしてもらうことに対して、出版社として真摯に向き合ってきたつもりですし、いろんな取り組みを通して、こうした想いが少しでも書き手の方に伝わっていたら嬉しいなと思います。
その上で、ポプラ社でデビューしたい!と思ってもらえれば更に嬉しいです。

これからも、自社デビューの作家さんは僕たちにとって特別な存在であり続けます。
内に秘めた光をより輝かせ、「あの作家さんはポプラ社小説新人賞デビューなんだって、すごいね!」と巷で噂してもらえるように、全員でぶつかっていくつもりです。

前述の通り、ポプラ社小説新人賞はさらなる進化を目指します。
いよいよ第11回ポプラ社小説新人賞の募集がスタートになりましたが、第二フェーズの第一歩として、WEB応募も解禁しました。

これまでは紙に印刷した原稿のみの応募でしたが、今年からデータの応募も可能になりました。
みなさまの全力の原稿をお待ちしておりますし、僕たちも一つ一つの原稿に全力で向き合います。

終わってみれば、あっという間の7年でした。
事務局の仕事は一年スパンなので、最終選考会の日が一年のピークみたいな感じです。めでたく受賞者が決まった後の打ち上げは格別ですし、受賞作が世に出ると、担当編集でなくとも心から嬉しくなりました。

あらためて、これまでポプラ社小説新人賞に応募してくださった皆様に心より感謝しております。
本当にありがとうございました。

と、書くとなんだか退職の挨拶みたいで湿っぽいのですが、単に事務局が交代するだけなので、これからは一人の編集者として新人賞に関わっていきます。
まずは今年、どんな素敵な原稿に出会えるのか、心から楽しみにしておりますし、みなさまのご応募をお待ちしております!

引き続き、ポプラ社小説新人賞をよろしくお願いいたします。

文芸編集部 森潤也


★ご応募を検討されている方は、ぜひ「新人賞への道」をご一読くださいませ!


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