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【エッセイ】追いつけないバスを追いかけつづけたらズボンに穴あいた

私が中学一年生の夏休み時のことだ。部活で仲良くなった、ななちゃん(ここでは仮名)と、札幌駅周辺で遊ぶ予定ができた。

つい最近まで小学生だった自分にとって、お友達と2人だけで札幌中心部で遊ぶことはビックイベントだった。

私は、当日着る服がほしいな、と思ったわけだが、あいにく小学生のころから姉のお下がりが90%近くを占めていたのでどれもこれもダサかった。
しかも、数年前の服ではなく、姉はさらに親戚のお下がりを着ていたため、何世代前の服なのだ。

アラサーの皆さんなら当時の流行がわかるだろう。我々が小学生の時のジャージといえば、
ズボンの裾は広がっているタイプがメジャーだった。デニムはギャルがバギーパンツを着こなしていた時代で、裾は広がればひろがっているほどカッコよかった。

なのに、私のお下がりのジャージは、恐ろしいことに、チャックが裾についていて、しゅっとすぼまっているタイプだった。着ているのは学年で自分だけだったので貧乏をとても恨んだ。私はそのズボンがとても恥ずかしかったので、いつもチャックを全開に開けて誰よりも広げた裾で体育の授業を受けていた、、、

そこで、わたしは近所のイオンで同級生と服を買った。もちろんデニムはバギーパンツ。ショルダーバッグまで新調するほどの気合いの入れようだった。

全身コーディネートで3点買って一万円の買い物だ。子どもにとっては大金である。家に帰ってからは、両親に「金の使いすぎだっ!」とそれはもうシコタマ怒られた。でも買ったもん勝ちである。あとは当日着が楽しみで仕方なかった。

いよいよ遊ぶ日がやってきた。入念にコーディネートやヘアセットをしていたらバスに乗る時刻にギリギリになってしまい、私はバス停まで猛ダッシュした。

あぁっ!前方に今まさに自分が乗るはずだった、バスの扉が閉められ動き出そうとしている。「まだ大丈夫だ!だって前におばあちゃんが乗り遅れそうになった時、運転手さんが扉を開けて待ってくれていたの見たもんね」と心の中でまだ乗れると信じていたが

ブロロロ、、、、。
えっ!?待ってよ!

「そうか、私は年寄りじゃないからね。でも運転手さん、走って追いかけてる姿をみえてるんでしょーが!」私は心の中で叫びながら無慈悲なバスを全力で追いかけた。

次のバス停まで目と鼻の先だった為、もしかしたら追いつけるんじゃないかと期待させるよいな絶妙なノロさでバスは走っている。

だめだ、ギリギリ追いつけない。次のバス停で停車したあと、またノロノロとバスは走り出した。


微妙に追いつけない速さがむごい、、。
そして、その後ろ姿が見えてるから、なおさらあきらめきれない。友達にもがっかりされてしまう。その時携帯電話を持っていなかったので、連絡手段も無かった。

どんどんバスとの距離が開き、ついにバスの後ろ姿も見えなくなった。もう無理だ。勝負に負けた私は絶望しうなだれた。

足元をふとみると、私の広がりすぎたデニムの裾はボロボロに穴が空いていて、友達には見られたく無い哀れな姿になっていた。20分まてば、次のバスが来ると言うのに、無慈悲なバスの運転手さんに振り回される一日となった。
ななちゃんは1人で札幌駅で遊んだらしく、あとで心配の電話があった。


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