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ポップインサイト創業記(9)〜お金を使わず、家族を使う

モニター募集をした所、早速数十人の応募を受けました。報酬単価を相場より高く設定した狙いが当たり、モニター募集は順調に出来る見込みが立ったのです。そこで、次はモニターの受け入れ体制の確立が急務となりました。

チェックはマンパワーで

ウエブ広告を見た人からのモニターの応募があると、私のアドレスに「新規顧客モニターの登録がありました」というメールが届きます。月に約100件の応募がありますので、約100件のリマインドメールが私の元にポンポンと届きます。

それらが届くと1通1通に対して、「ご応募頂きましてありがとうございます」という返信対応をします。その後ツールのインストールの資料を送り手順説明をします。無事にインストール出来た人には実際のテストの手順を説明し、テストの様子を録画してもらい、そのデータを送ってもらいます。

データが届くと、それらを全て正しく行われているかどうかチェックします。届いた動画に対して、指定通り操作できているかどうか、『思考発話』ができているかどうか、指定通りの録画録音ができているかどうか……これらを全てチェックツールを使ってチェックします。そして、もしNGだった場合には「もう1回やってください」と差し戻して調査の再依頼をします。

そういった対応の全てを『マンパワー』つまり人の手で行っていました。物凄い作業量です。

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当時は勿論私と喜多君しかいませんので、全てを2人でやっていました。最初の登録メールだけでも月に100人弱から届いて、そこから実際に最後のステップの動画が送られてくる所まで辿り着くのが10人だったとしても、1人当たり約30分の動画を10人分細かくチェックする必要があります。

これを全て2人でやるのはとても大変です。当然私達2人にはサービスの運営上それぞれやるべき仕事が山のようにあったのでとても困りました。


次々と出てくる課題に対処する

実際に、『モニターの応募』から、『テストの実施』をして、『動画を送ってもらう』までの間には、次々と問題が出てきます。

「パソコンの扱いは不慣れなのでインストールができません」というケースに始まり、「手順が分かりません」「パソコンの操作方法が分かりません」「録画の仕方が分かりません」といった連絡が大量に届きます。

その1つ1つに丁寧に対応してやっと動画が送られて来ても、正しい録画と録音が為されていない事が非常に多いのです

正しく録画された動画は、操作しているPCのスクリーン画面が写っていて、操作しながらの『思考発話』の音声が録音されているというのが正解です。

しかし、届く動画には、音声が録音されていない物や、操作しているPCスクリーン画面ではなく操作している本人の顔が録画されてしまっている物など不正解品が大量あるのです。

顔ではなくPCスクリーンが録画されている場合でも、画面全体では無く凄く小さな一部分だけが録画されていて全く使い物にならないというケースも本当に少なからずあります。

その為、届いた動画を1つ1つ見ながら、「この点を改めて再度提出をお願いします」と1件1件対応する必要がありました

他にも、例えば通販サイトのテストをする際には、購入しようと思うと氏名や住所を入力しなければいけません。当然モニターからは「本人の個人情報を入力したくありません」という意見が挙がってきます。

例えこちらが「適当に入力して下さい」とお伝えしても、モニターはどう“適当に”入力すれば良いのかが分かりません。そこで、個人情報の欄に入力する記載事項のセット、通称『適当セット』を用意して、「個人情報を入力する時にはこちらのセットの情報を入力して下さい」と運用しました。

こういったことは実際に行って始めて見えてくる問題、所謂『バグ』です。こういったバグが大量に出てくるので、1つひとつそれらをクリアして行く必要がありました。


お金がないので家族を使う

これらの全ての対応を2人だけで続けるのは不可能でした。そこで、私の母に協力を依頼しました。モニター登録者への対応から動画チェックまでを母に協力してもらうようにしたのです。

当時母はパートをしていたものの、比較的家に居て時間が取れそうでした。そこで、「面倒くさいと思うんだけど、協力してくれない?」と依頼して、モニター応募者への対応をしてもらう事にしました。

しかし母は私達の世代の様にパソコンの使用に慣れている訳ではありません。そこで母には動画のチェックをする際も紙に結果を記入するというアナログな形で作業してもらいました。今考えても、とても頑張って協力してくれていたと思います。

その後、さらにモニターの数は増えて行き、母ひとりで対応するのはキャパシティー的に厳しくなって来ました。そこで母に続いて当時大学生だった妹にも協力してもらいました。正に自分の家族を『総動員』した感じでした

勿論身内なので給料を支払うこともありません。「手間を掛けてごめんね…」と労いながら、相当な数の対応に協力してもらっていました。

2人にはその後約1年の間手伝ってもらいました。会社を設立した後も暫くの間手伝ってもらい、その後社員や外部のアルバイトを採用して人が増えて、ようやくそちらに仕事を回していったのでした。


立ち上げ時は『ローコスト』を徹底する

私はこの様にスタート時には家族に協力してもらい、まるで『家内制手工業』のように身内で回していくという事を“意図的”に行っていました。

勿論、お金をかけてプロに依頼すれば事業を一気に拡大することも可能です。しかし、会社の立ち上げ時には“ローコスト化を徹底すること”が何にも増して重要なのです

起業時に直ぐに収益が上がるケースは稀ですし、逆に支出は幾らでも出て行きます。そこで、身内や友人など無償でお願いできる所にはお願いするとか、ローコストに抑えられる事を必死に考えて、如何にお金をかけないようにするというのが、立ち上げ時には本当に重要なのです。これは創業する時の必須の心構えと言えます。

もし最初からこういった所にどんどんお金を掛けていたら、たぶん途中で会社が潰れていたと思います。ですから、実際にローコスト化を徹底して本当に良かったと思うと同時に、快く協力してくれた家族には心から感謝しています。

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