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ポップインサイト創業記(10)〜突然、ライバルが出現!!

勉強会の開催から始まった私達のサービスは、度々直面する問題を乗り越えていよいよ本格的な事業化に向けて進み始めていました。そんな時、私達の前に思わぬ形でライバルが出現したのです。

『リーン・スタートアップ』の流行

私が勉強会や日本版リモートユーザーテストのシステムを開発したのは2011年の事でした。その約1年後の2012年、『リーンスタートアップ』という本が大流行しました。

リーン・スタートアップ
エリック・リース(著),伊藤 穣一(解説),井口 耕二(翻訳)日経BP社刊スクリーンショット 2020-05-27 5.19.41

リーン・スタートアップは、とかく不確実な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない『スタートアップ(新規事業)』において、先の見えない不確実な時期は失敗を繰り返さなければ素晴らしい新製品は開発できず、いち早く価値を正しく見極め失敗をムダにしないためには、『スモールスタート』で『トライ&エラー』することが大切であることを説いた本でした。

最初から膨大な時間とお金とエネルギーを費やして誰も欲しがらない製品を作ってしまう無駄をせず、最小限の製品(MVP)を作ってトライ&エラーをしながら仮説を検証し、時代が求める製品・サービスを、より早く生み出し続けようという方法論が書かれていて、当時新事業を始めようとするベンチャーに一躍注目を集めました。

この『リーン・スタートアップ』をする為の手法の一つとして『ユーザーテスト』が紹介されたのです!

私が勉強会などのユーザーテストのサービスを拡め始めた約1年後に、「サービスを作ったら早い段階でユーザーに使ってもらって本当に使える価値があるかどうかをまず見ましょう。その為には『ユーザーテスト』が有益です」と書かれたこの本が大流行したのです。

私達は「我々にもチャンス到来か!」と期待しました。


突然、似たようなサービスが出現

しかし、この日本中で巻き起こったリーン・スタートアップブームの中、私達と凄く似たサービスが突然出てきてしまったのです。

私が勉強会を始めた約1年後、サービスの広告を出した1ヶ月後のまさかのタイミングで、殆ど同じ内容のサービスが発表されました

▼ライバル社の登場を紹介したネット記事
https://techwave.jp/archives/51766020.html
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それは、ワンモニター3000円からできるスマホテスト『UIスコープ』というサービスでした。

彼らは元々ユーザーテストに携わっていた人達ではありません。しかし当時は『リーン・スタートアップ』でベンチャー間でユーザーテストが俄然注目を浴び始めた時期でした。

その頃ユーザーテストはまだ日本では私達がやっと立ち上げたばかりで、他に打ち出している所が無いサービスです。そこで、彼らは私達も参考にしていた海外版『UserTesting.com』のサービスを丸々参考にして、新規サービスとして打ち出したのでした。

「ベンチャーの中で注目され始めたサービスを提供しよう」という企業が、『ベンチャー』の中から出てきたのです。

ライバルの脅威

いきなりの競合相手の到来です。私達はまだサービスを世に打ち出し始めたばかりで会社も作ってもいない状態でしたので、「おいおい、マジかよ」と激しく動揺しました。

よく世間では、自分がアイディアを考えていることは世の中では既に何十人も考えていると言われますが、それが目前で起こってしまったのです。情報交換した訳でもなく同期した訳でも無いのに、ほぼ同じタイミングで凄く良く似たサービスが出てきてしまいました。

しかも、私の試算では、事業として利益を出すためにはモニター1件3,000円という価格設定では無理なのです。少なくとも1件1〜2万円位の設定にしないと成り立たないと試算していました。 

ところが、このライバルは、当時の海外の『UserTesting.com』の価格と同じ設定ということで3,000円という価格で打ち出したのでした。

実際に海外の『UserTesting.com』は、今では1件3,000円の単価設定では成り立たないということで、単発受注はせず月額固定とか年間サービスとかそういう形にシフトしています。

しかし、このライバルは当時の『UserTesting.com』の安い価格設定を、そのまま持ってきています。これでは絶対に利益を出せません。真正面からでは価格競争にも勝てないと思いました。

競争性が弱い自分が、果たして勝負できるのか?

元々私は、競争性が弱い人間です。自分の長所とか向き不向きなどの能力の特徴を見い出す『ストレングスファインダー』というテストがありますが、そういうテストでも私は「競争性が無い」という診断が出ます。

とにかく基本的に競合が凄く苦手な性質です。ライバルがいたとしても頑張って打ち勝ってやろうとか蹴落とそうとか全く思わないタイプです。どちらかと言えば競争相手がいるのなら逃げたいと考えてしまいます。

ですので、「ユーザーテストを止めようか」と思いました。 ライバルが出てきてしまって、しかも相手はもの凄く非現実的な価格設定をしているのです。向こうはベンチャーキャピタルから巨額の資金を調達していて資金力がありましたし、ベンチャー出身なのでベンチャー界隈に人脈や関係があって目立っていたのです。

しかし、私は当時5年間ずっとユーザーテストのコンサルをやっていて知識や経験では絶対に負けません。「この素晴らしいサービスを世に拡めたい」というユーザーテストへの強い想いも持っていました

そこで、ライバルとの差別化をしていくべく、自分達がライバルに勝る優位性を模索し始めたのでした。

競合は必ず出る

このように、やはり目立つ所に注目が集まり競合相手が出てきます。その時々の時流に合わせて狙う所は皆共通しているからです。タピオカがブームになれば当然タピオカ店が続々と出店します。

日本初とか世界初のサービスであってもそうです。それが優れていればいるほど直ぐに似たサービスが出てきます。私達のリモートユーザーテストは正にそうでした。日本初のサービスでしたし、当時大流行していた本で一躍注目されていたのです。

そこで大切なのは、どんなに優れたサービスでも「必ず競合がでるという前提で考える」ということです。

必ず競合は出るものだと思っていれば、実際に競合が出てくる前にそれなりの準備を済ませておく事ができます。また、強力なライバルが突然出現しても動揺したり落胆することもありません。

「競合は必ず出る」というマインドは、ビジネスシーンに留まらずスポーツの世界でも学業や芸術の世界など人生のあらゆる局面で、常に持っておくべき大切な心掛けだと思っています。

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