ポップインサイト創業記(8)〜ネット広告でのモニタ募集
勤めていた会社から正式な許可を得てサービスを本格稼働することにした私達でしたが、これまでは友人や身内に頼んでいたためモニターがいませんでした。本格稼働するためには親族や友人だけでは回らないため、外部でのモニター募集を開始することにしました。
報酬の単価を相場より高く設定
モニター募集には、『リスティング広告ページ』と『Facebook広告』の2種類のネット広告を出しました。
世間一般のウエブアンケートやモニターサービスでは、大体1件のアンケートに回答して報酬が数円というイメージです。高くても数十円とか、物凄い件数を回答して数百円といったイメージです。また、それとは別に『対面』でのインタビューに参加すると数千円単位の謝礼がもらえたりします。多くの場合その2つのどちらかです。
私達のサービスは、家でパソコンで動画を撮ることで完結する『訪問をしなくてもいいインタビュー』です。一般的には報酬単価数円の仕事です。しかし、ネット上で回答するアンケートのように1回数百人とか数千人のモニターを集めるわけではないので、仕事の発生頻度はそう高くないということもあり、私達の会社のモニター募集では『売り』として、1回あたりの報酬金額を高く設定しました。
普通のアンケートサイトではどんなに物凄く頑張って回答しても月に1,000円いかないレベルが通常の所、私達のモニターでは1回約1時間の調査を行うと1,000円とか2,000円とか、場合によっては5,000円とかになることもある、高い報酬価格を設定したのです。
『お小遣い稼ぎ』とか『ポイントサイト』というワードで検索する人は世間に大多数いて、報酬単価が数円のウエブアンケートでも数十万人、数百万人の応募があります。私達のサービスではさらに1回あたり数千円の高価格を設定した事で、ネット広告を出すことで多くのモニターが集まることが見込めました。
募集広告もスモールスタートで
▼当時のモニター募集ページはこの様な感じでした
自分でいうのもなんですが、ご覧の様にフォントなどを見ても手作り感満載といった印象のページでした。これもパワーポイントで作った画像を貼っただけのシンプルな自作ホームページです。
これは2作目のウエブ広告です。最初はこれよりもさらに簡素なページで1回目の募集をしました。そこで応募があった数十人の中からまずは数人に実際に調査をしてもらいました。そして、調査をした人に「体験談をウエブ広告に載せてもいいですか」と依頼して、2作目以降のサイトに体験談を載せました。
モニター募集についても、本格的な準備をしてから行うのではなく、まずは小規模でスタートして事例を集め、それを紹介することでより大きな展開につなげていくという、以前のシステムの開発時のトライアルとおなじ『スモールスタート』の手法を採りました。
丁寧な対応でモニターから信頼を得る
広告に顔を載せる依頼にも多くの方が許可してくれました。それは私達がとても丁寧な対応を心掛けていた結果だと思います。
応募してくれた人には「ご応募頂きまして、ありがとうございました!」、調査に参加してくれた人には「調査に参加して頂いてありがとうございました!」と、1つ1つ出来る限り丁寧に対応するように努めたのです。その様な丁寧な姿勢が信頼へとつながり、協力の依頼にも快く応じてもらえたのだと思います。
当時私はモニターの方々にも心から安心して参加してもらいたいと思っていました。広告への体験談の掲載も、多くの方に安心して応募してもらえるように行った取り組みの一環の1つとして行ったものでした。
またもや次々と課題が出てくる
広告を出したことで、早速数十人の応募がありました。普通のアンケートサイトであれば、パソコンさえ使えれば回答することはそんなに難しくありません。しかし、私達の調査は、まず操作画面と音声を録画するソフトを事前にインストールしてもらい、その上で、『思考発話』と言って思ったことを口にしながら使用してもらう必要があります。この『思考発話』が難しいのです。
『思考発話』とはどういったものか。例えば、通販サイトのテストを行うのであれば、「いつもお世話になっている人に来週会いにいくのでお土産のお菓子を買いたいんだよな」「来週日曜までに届けなくちゃいけないんだよな」「こういったものを買いたい」「良い商品がなかなか見つからないな」と、自分の考えている『思考』をそのまま言葉として発話するのです。私達のユーザーテストでは、これをしながらサイトを操作します。
この思考発話が実際にやってみると結構難しくて、実際はあまり多くの人は出来ないのです。
最後までたどり着ける人は極少数
応募があると、まず録画ソフトをインストールしてもらいます。実際にはこのインストールが出来ないという人が多いので、まずこの段階で人数がグッと減ります。
インストールが出来た人には、実際にお試し版を体験してもらいます。私達は20個程のチェック項目を用意していて、各項目が指定通りに出来ているかを確認します。
「ちゃんと指示通り出来ているか」とか、「思考発話ができてるか」とか、「適当にやってないか」などのチェック項目を確認していきます。
実際に適当にやってしまう人がとても多いのです。適当にサイトを開いて、「これでいいですかね、ポチッ」といった感じで、テストだということで明らかに実際に自分がサイトを使う時とは違って真剣にやらない人が沢山います。
しかし、ユーザーテストは実際にユーザーがホームページを操作する過程を見る所に価値があるのです。そこを真剣にちゃんとやらないことには意味が無いので、適当にやってしまった人には、「もう1度お願いします」と差し戻して再度行ってもらう事になります。その段階でさらに脱落者が出てしまいます。
そういった感じで、1回の募集で100人の応募が来てもインストールができない人が脱落して20人位になり、思考発話が出来ないとか、適当にやってしまうとか、動画が指定通り出来ていないといった形で半分強の人が脱落してしまいます。
結果的に最後まで完了できる人は平均7%位でした。つまり、100人応募が来たとしても、完璧に最後まで完了できる人は7人位だったのです。
スモールスタートしてトライ&エラーを繰り返すことが大切
このような形でモニター集めをしていった訳ですが、次々に課題が出てきて数多くの苦労があったものの、結果として必要な人員を確保してサービスをスタートすることが出来て行きました。
ここから思うのは、まずはスモールスタートからスタートして、そこからトライ&エラーを繰り返して行くことが大切だという事です。
ビジネスを成功させようと思うと、まずは大きな形を作り上げてからスタートするのではなく小さくて実施しやすい形で始めること、そしてその上で挑戦(トライ)と失敗(エラー)を繰り返すことで改善を積み重ねて行くことが本当に大切です。その結果初めて成功することができるのです。
モニター募集も、正にスモールスタートで始めてトライ&エラーを繰り返して乗り越えた結果で軌道に乗せることが出来たのでした。
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