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フリーランスと良い関係を作る報酬設計の考え方

テレワークでは、業務委託やクラウドソーシングなどの形でフリーランスに業務を依頼する場面が数多くあります。そこで今回は、「フリーランスと良い関係を作る報酬設計の考え方」をテーマに、格段に状況を良くする考え方と手法をお伝えしたいと思います。

報酬は重要なコミュニケーションツール

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私は、報酬設計は重要なコミュニケーションツールの1つだと考えています。

例えば報酬が上がったり下がったりするというのは、支払う側、受け取る側双方にとって意味を持ったメッセージを含みますよね。

もちろん企業にとっては報酬はコスト構造と直結しているので、ビジネスロジックとかPLとかBSを考慮した上で報酬設計を考えるというのが従来からの形です。

しかしその一方で私が今回皆さんにお伝えしたいのは、報酬は企業側、働く側の双方に別の面で大きなメリットをもたらす事ができる、非常に有効なコミュニケーションツールであるという事なのです。

報酬にはモチベーションを上げるパワーがある

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1兆ドルコーチ』という、エリック・シュミットという人が書いた世界的ベストセラーの書籍があります。

この『1兆ドルコーチ』では、ビル・キャンベルという、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、アマゾンのジェフ・ベゾスなどが師と仰ぐ人の教えが書かれています。

この書籍の中に報酬設計に関する考え方が書かれています。とても素晴らしい内容なので、ぜひ紹介させて頂きたいと思います。

カネはカネだけの問題ではない」 〜『1兆ドルコーチ』より
ビル(=ビル・キャンベル)は長年グーグルの報酬に関する問題について助言を与え、つねに気前よく支払うよう勧めた。ビルは報酬について見過ごされがちなことを理解していた。それは、報酬はお金だけの問題ではないということだ。
もちろん、どんな人もよい暮らしよい暮らしができるだけの公正な金額を支払われなくてはならない。大多数の人にとっては、報酬イコール金額だ。
だが、それがすべてではない。報酬は経済的価値だけではなく、感情的価値の問題でもある。報酬は会社が承認、敬意、地位を示すための手段であり、人々を会社の目標に強く結びつける効果がある。
人は誰もが真価を認められたい生き物だということを、ビルは理解していた。経済的に安泰な人も例外ではない。
数千万ドル、数億ドルプレーヤーが、次の巨額の契約を得ようと奮闘するのはそういうわけだ。お金のためじゃない、愛のためなのだ

このように、ビル・キャンベルは、報酬には経済的な面だけでなく感情的な面を満たす効果がある事を説いています。報酬にはメンタル面での喜びを与える大きなパワーがあるという事ですね。

良い関係性を築くための武器

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企業の担当者とフリーランスとの関係も、実際に行われるのは「人対人」のコミュニケーションです。お互いに嫌な思いを持ちながら仕事をするよりも、気持ちの良いコミュニケーションをとって良い関係性を構築した方が、結果として業務全体の面で成果が上がるのは言うまでもありません。

その上で、報酬は感情的喜びを与えられるツールであり武器です。これを使って良い関係性を築くためには、ベースアップの可能性を一緒に考えていき、成果が上がれば報酬が上がるという事を前提とした報酬設計を組み立てていくという事が有効なのです。

働く側が業務に喜びを持てれば、より業務の質が向上する上に長期に渡って仕事を担ってくれる事にもつながります。一緒により良くしていくというベクトルを生み出し、業務全体に良い効果を出していく事ができるのです。

成果の条件を明確にする

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そのためのポイントとして、私は「最初から報酬アップの条件を明確にする」ということを行っています。つまり、「どうなったら成果が上がったとする」という条件を仕事のスタート時に明確にするのです。

例えば、●●件以上完了できた時は▲▲円アップ、△△が■■を超えたら●●円アップ、と、ベースアップのための条件をあらかじめ双方同意の上決めておきます。

質の高さや提供されるバリューなどの成果に対してはプラスで払っていくという事を共通認識として持つ上で、その『成果』とはどういったものなのかという事を最初から明確にする訳です。こうすることで、努力ポイントが明らかになり、目に見えて実際の成果が上がるようになるのです。

長期で付き合うメリット

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次に「長期で付き合うメリット」についてお伝えしたいと思います。

業務関係が長期化することのメリットは数多くあります。まず業務ルールの理解が上がり習熟することで、間違いなく質が向上します。気持ちの面でも結びつきが高まるので「もっと貢献できるように良い仕事をしよう」と努めてもらえて、さらなる質の向上が見込めます。またお互いの人間性の理解が上がるので、やり取りのしやすさが格段に高まります。このように業務関係が長期化すると、多くの面での付加価値が上がるのです。

そこで私は、成果面だけではなく期間的価値にもインセンティブを考慮するようにしています。つまり、仕事の依頼が長期化して様々な面での価値提供の度合いが上がった場合には、気前よく報酬をアップするようにしているのです。

これは、日本企業に昔からある年功序列のメリット面に通じる考え方とも言えます。日本の会社組織では、在籍年数が長くなることで関係性の深まりとか仕事の能力値の高まりがあるであろうという期待によって昇給を設定する、というのが継続して関係性を維持する手法として確立されていますよね。

フリーランスとの業務委託やクラウドソーシングにおいても、この既に企業で確立されている手法を応用しない手はありません。

フリーランスとの関係においても、業務に携わる期間が長期化して提供できる価値が上がれば、そこに対して報酬も上がるという報酬設計にすることによって、素晴らしい人材との関係性を確立して維持することができます。

雇用関係ではないフリーランスとの関係性であっても、お互いにより建設的で良いチームチームワークを持った関係性を確立する構造を採る事ができるのです。

コストを下げたい欲求に対してどう考えるか

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最後に触れるのは、「ビジネスとしてコストを下げて行きたいという欲求に対してどう考えるか」という事です。

ビジネスにおける生産性とは、投入量に対するアウトプットの数です。つまり、かけたお金に対して、何件できたかといった事が問われます。ビジネスにおいては、「いかに業務内容に習熟し効率を上げることで、コストを下げつつ同時に拡大していくか」を考えるのは当然の発想なのです。

そこで、かけるお金(=コスト)を減らすという面と、成果を向上させるという両面が着目されます。『生産性』を上げるための一方のファクターである、『コスト』をなるべく下げていきたいという経営陣の思いは、同じ経営に携わる立場として大いに理解できます。

しかし、今回ご紹介したように、報酬とは働いている人にとっては経済的な収入であるのと同時に、モチベーションを支える非常に重要なツールです。ですから、一面的にコストや金額面だけを考慮して、感情的なツールである側面を考えずに報酬をどんどんダウンしまうと、貴重な人材がやる気を無くしたり去ってしまったりして、想像以上に会社に損失が出ることも少なくありません。

むしろ、報酬が働いてくれている人とのコミュニケーションを良くするツールである面を活かして、お互いにとってより良い関係性を築くための糧とすることが、結果として会社にとって有益に働くことが多いのです。


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