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ポップインサイト創業記(28)〜研修ビジネスで一石二鳥作戦

ポップインサイト創業初期の売上の柱は「OEM戦略」でした。OEM戦略を展開していくためには、無料トライアルで1回良さを感じてもらってから、本格採用してもらうのが黄金パターンでした。そんな中、私としては他の可能性も見出していきたいと思っていました。今回は当時に行った、1つの仮説検証のチャレンジについてお伝えしていきます。

企業向け研修会プランニング会社と出会う

当時、ウエブ担当者が集まる飲み会に参加した際に、ある企業向け研修会のプランニング会社の人と出会いました。 
その会社は色んな会社と組んで、有料の企業向け研修を行っていました。

WEBサイトの製作とかアクセス解析とか、色々なノウハウの研修をして、10時間位で50万円程の料金の研修パックとして売っていると。

そして、「ユーザーテストでも同じような感じで研修ができるんじゃないでしょうか」という話になって、盛り上がったのです。

実は、当時私としては1つの仮説を立てていたことがありました。それはまさに、社内研修会をきっかけにして、ユーザーテストのOEM展開を拡げていくことはできないかというものでした。

ユーザーテストの社内研修を開催してもらい、その良さを伝える。そして、ユーザーテストを自社のサービスとして先のクライアント向けに展開してもらう。

さらに、研修会なら、研修をすることで研修費がもらえます。お金をもらいながら、ユーザーテストを広げていけ、さらにキャッシュポイントをその先に増やして行ける・・・私は大きな可能性を感じていました。

そんな事を考えている丁度そんな時に、「一緒に組んでユーザーテストの研修会を開いて欲しい」という先が現れたのです。本当に驚くようなタイミングでした。

先方としては、ユーザーテストの研修パッケージを作って、売って行きたいと。
1コース10時間ぐらい、2.5時間かける4回のカリキュラムでやってくれませんかというような形で話が進みました。

研修

しかし、結論を言うと、この話は1回だけ研修会を開いて終わりました。その理由は、こういった会社を挟んだ形で研修会を開くと、ポップインサイトに入る金額が非常に少なくなってしまうことにありました。エンド価格の5分の1ほどしか私達に入らないのです。

実は、研修会を開くのは、とても時間と労力を要します。それに対して、エンド価格の5分の1の報酬では、とても見合いませんでした。

そして、それと同時にあることに気づいていたのです。それは、「研修会なら自分達だけで開催できる」ということでした。

自社運営の研修会プラン

もともと、私は起業前からずっと勉強会を開いていました。それに加えて、実務のノウハウも積み重ねていたのです。充分自分達だけで良い研修会が開けたのです。

そしてその時、同時にあるアイデアを着想していました。それはクライアントに助成金を活用してもらう形で研修会を開くことでした。

研修会は条件を満たせば助成金が出ます。それがあれば、クライアントが実質お金を持ち出すことなく研修会が開催できるのです。

クライアントは実質無料でユーザーテストのノウハウが手に入り、自社のサービスに活かすことが出来る。私たちポップインサイトにとっては、研修費が入り、その上、ユーザーテストを拡めることができて、OEM形式でクライアントの先のビジネスチャンスも得ることができる。

・・・とても素晴らしい仮説でした。そこで早速、実際に自社運営の研修プランの検討に着手することにしました。

まずは、懇意にしているソウルドアウトさんに研修会の開催を打診しました。

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ソウルドアウトさんに助成金を申請してもらって研修会を開催したのです。1回数十万円の研修を3回セットでやらせてもらいました。

まずは納品部署と言われる、ユーザーテストの分析をして納品する人たち向けの研修を開催。そして、その次に営業部署を対象にした研修をしました。

ユーザーテストを納品できる能力があっても、営業しないことには売れません。ユーザーテストをどんどん売っていくことができるようにする為の研修を、営業部署向けに開催したのです。

実は、そこに参加してくれた営業の人たちが、「これ使えますね」と認識してくれたのです。「ユーザーテストを使って、ユーザー視点で改善提案をする売り方をすると、単に広告で売っていくよりはるかにお客さんに刺さるし、そこで信頼を得て次の提案ができますね」と。

結果として、本当にユーザーテストを活用して、案件をどんどん売ることができるようになったのです。研修の成果がすぐに形に出たのでした。

私としても、研修することで報酬をもらえるし、ユーザーテストもクライアントから先にさらに拡がっていくのですから、「研修プラン、いいじゃん!」と、良い未来しか見えませんでした。

社労士と組んで、助成金制度の活用にチャレンジ

私は早速、この素晴らしい研修プランの水平展開を検討していくことにしました。

そこで以前から考えていた助成金を活かす取り組みをするために、社労士と組んだ座組を検討したのです。社労士と組んで、クライアントが助成金を申請するところまでセットで支援する座組です。

私はその形の提案をある会社にしました。助成金を使うので、1セット100万くらいの少し高めの金額の研修を提案させてもらったのです。

ただ、助成金は絶対出るわけじゃない。もしかしたら、でない可能性もある。そこに怪しい要素もあったのですが・・・。

助成金の取得に失敗…企画がコケた

結論から言うと、その時の助成金の申請は、失敗に終わってしまいました。

社労士と組んで、申請手続きも頑張って何度もチャレンジしたものの、出席者が足りなかったのか、申請に不備があったのか、日程が問題あったのか・・・。
結局、真の理由も分からないまま認められず、助成金は出ませんでした。

以下のようなやり取りで、社労士さんにも頑張ってもらったのですが、だめでした。

M氏:
審査が終わったので、ご連絡します。
これまで担当が変わり、色々なやり取りがあったと思うが、結論として、奨励金はお支払いできない。

Y:
その理由を教えてほしい。

M氏:
1/22付の変更申請に、不認定決定を出している。

Y:
それについては、4/16の朝にT様より、
「不認定決定は金額を生かすためであり、支給申請自体は現在審査待ちで無効にはならない。」と聞いた。

M氏:
Tに確認したが、そんなことは言っていないと言っている。

Y:
4/15の夜に事業所から不認定通知が届いたことを聞いて、4/16の朝にT様に電話をしたが、
金額の話以外に何の話をしたのかT様に確認してほしい。

M氏:
4/16に電話で話した記録は残っていない。
経緯はさておき、認定された職業訓練計画に基づいて訓練を行っていないという理由で、
不支給決定をせざるを得ない。

Y:
認定された職業訓練計画に基づいて訓練を行っていないという理由であれば、
1/22の時点で分かっていたはず。
提出前と提出時にハローワークに確認したが、その程度であれば問題ないのではないかという回答だった。

M氏:
ハローワークは書類を受け付けているだけなので、関係ない。

Y:
先日、S様から消費税込みの金額に修正する等の追加必要書類の連絡を受けたが、
事業所に負担をかけ、期待させる行為で、提出は必要なかったのではないか。

M氏:
書類が正しい状態で揃わないと審査はできない。

Y:
今回、訓練日程変更の届出が事後になってしまったことが不支給決定の理由なのか。

M氏:
認定されていたとおりに実行されていれば、不支給にはならなかった。

Y:
4/16に「不認定決定は金額を生かすため」という話を聞いたが、
事業内訓練として支給していただくことは可能なのか。

M氏:
審査が終わっているので、事業内訓練としても支給できない。
3月のTからの説明を受けて、変更申請書を提出してもらえれば認める余地はあった。

Y:
今から変更申請書を提出することは可能か。

M氏:
連絡を受けて「速やかに」提出に該当しないため、不可能。
そもそも、この事業内訓練への変更申請書も「事後」なので、
今回の不認定と同様に、認められる可能性はほぼない。

Y:
3月にT様から事業内訓練の話を聞き、
さらに4/16に「不認定決定は金額を生かすため」という話を聞いた。
「そのまま事業外訓練が通る場合もあれば、事業内訓練となる可能性もある」と聞いたが、
なぜ、こちらから事業内訓練について触れていないのに、相手に期待を持たせるような話をしたのか。

M氏:
それは知らない。

Y:
この後の審査の流れを教えてほしい。審査結果が変わることはあるのか。

M氏:
何度も申し上げているが、経緯はさておき、審査結果が変わることはない。
このあとは、東京労働局から中央職業能力開発協会に不支給の依頼をして、
中央職業能力開発協会から不支給決定通知書を1ヵ月以上先に事業所宛に発送する。

助成金は、一度クライアントさんから私たちに研修代が支払われていないと申請できないので、その時には私たちへ研修費用が振り込まれていました。

結論としては、その研修費用を全額返金をしました。クライアントからの信頼の方がより大切です。しかし、私としては、かなり労力と時間をかけてやった結果が、返金で売り上げがゼロになってしまったのでした。

何ヶ月もかけた研修が全てタダ働きになってしまったのです。「研修会プランは、かなりリスクが高いな」と。

研修会は、開催する私としても時間もかなり拘束されるし、体力も必要です。私としても、元々色々新しい事を試したいタイプでもあったりして、その頃には個人的に研修会に飽きたというか、個人的なブームも去っていました。

そんな顛末の末、研修会プランは撤退することに決めました。当時の学びとしては、「安易に助成金とか不確実なスキームにのっても、上手く行かないこともあるし、甘い話に乗りすぎない方が良い」というものでした。

今思えば、伸ばしていけば良い案件だった

しかし、今振り返ってよく考えたら、研修は続けていれば、ユーザテスト市場拡大しながら収益もあがる良い事業だったと思います。

研修自体は一度作ったものがあるので手間も低いですし、実際にクライアントさんに高い効果が出ていました。1回の研修費用も高額にすることもできたので、今でも通じる良い筋だと思います。

なぜ研修をやめてしまったのか。振り返ると、単純に「やる気が続かなかった」ということでした。研修以外にも様々な取組を同時並行していた結果、研修への熱意が冷めてしまったのです。

自分自身の継続力が低いことをもっと自覚し、担当者をつけたり、継続する仕組みを作っておくべきだったと反省します。

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