見出し画像

ポップインサイト創業記(15)〜円満退職にむけた4つの工夫

OEM戦略の見通しを立てることができた私は、退職して独立起業をする決意を固めました。退職する際には何よりも「立つ鳥跡を濁さず」ということを心掛けました。

最後の印象はとても大事

当時私は、先輩が嫌な感じで会社を辞める様子を結構沢山見ていました。例えば退職期限をゴリ押しして、自分の主張を通す形で揉めながら辞めていった人も少なからずいました。

私はそういう様子を見て「こういう辞め方は良くないな」と思っていました。これまでお世話になった会社ですので、それはとても不義理に見えました。

特に私はこれから起業しても業界が同じなので出来る限り良い関係性を残すことが重要だと考え、「退職するに当たって会社に対しては最大の誠意を尽くす努力をしよう」と心に誓い、4つの具体的な取り組みをしました。

1. 退職日は会社に委ねる

まず、退職の日にちを完全にビービット側に預けました。「退職日は私はいつでも構いませんので、会社にとって一番良い日にしてください」と申し出たのです。

良く見かけるのは「規定にあるように1ヶ月後には辞めさせて下さい」とゴリ押しするケースです。

しかし、私は僅か、1ヶ月で後任を見つけてきちんとした形で引き継ぎを済ませるというのは、常識的に考えて不可能だと思います。人材がそこまで充足している訳でも無いので。

また、当時の私は転職ではなく起業でしたので、比較的日にちを自由にすることもできました。それならば、完全に会社に迷惑の掛からない形で引き継ぎをしよう、その為には退職日の決定を会社に預けようと委ねました。

2. 最後までしっかり仕事に向き合う

2番目に、起業に向けての退職ということで、こういうケースはとかく意識が新しい事に向きがちです。そこで私は「居る以上は仕事も最後まできちんとした仕事をしよう」と決めました。

最後に手を抜いたと思われては信頼を損なってしまうと考えたのです。最後まで仕事をしっかりしない人間だと思われることは、今後の関係性においても良くないし、何より会社に対して不義理だと思いました。

正直なところ、私も世間の人達と同じく、気持ちは新しい会社の方に向きがちでした。だからこそより意識的に最後まで手を抜かないようにしました。

引き継ぎは担当していたクライアントが30社位あったので、詳細なメモの作成を始めとして、自分に出来る最大限細やかで丁寧な引き継ぎを行いました。

3. 卒業プレゼンをする

3つ目は、『卒業プレゼン』というものをさせてもらいました。退職するに当たって、これまでの感謝のプレゼンをさせてもらったのです。

以前から数名の退職した人達を見て、人が辞めるというのは残った人達に、実務的レベル以上のネガティブなインパクトを与えると思っていました。

経営者からすると「自分のやり方が駄目だったのかな」と見限られた感を持ってしまいます。上司とかマネージャーは「自分の指導力や牽引力が足らなかったかな」とかネガティブ気持ちなってしまいます。また、後輩や下の立場の人には「この会社大丈夫かな」と会社を続けていく価値観を損なってしまう可能性があります。要するに自分の退職がトリガーとなって、ネガティブな結果を出してしまう可能性があります。

私はこれを徹底的に払拭しようという思いで卒業プレゼンをさせてもらったのです。

ビービットには『スクール』と言う毎週一回の勉強会のような場がありました。そこで、『卒業スクール』ということで場をもらって、会議室で30人程を前にプレゼンしました。

そのプレゼンには、当時流行っていた本の題を参考にして『大事なことは全部ビービットで学んだ』というタイトルを付けました。

画像1

上司全員の名前を出して、「○○さんからはこれを学びました、○○さんからはこれを学びました」というように、これまでの感謝と、同僚と目下への「こんなに素晴らしい会社だから、この先もきっと素晴らしくなって行きますよ」というメッセージを込めたプレゼンをしたのです。

画像2

画像3

私のプレゼンには、人事の女性を始め数人が泣いてくれていたり、「感動した!」と言ってもらえたので、私の想いを伝えることが出来たと思いました。

4. 全社員に1人1人にメッセージを送る

そして会社を後にした私は、新しい会社用に借りていた事務所に移動して、そこからビービットの全社員約80人1人1人に、感謝の個別メールを送ったのでした。

「こういうことをお世話になりました」とか「こういうことを学ばせて頂きました」「ありがとうございました」というメッセージを送りました。

とにかく「感謝の想いを伝えたい」という気持ちを形にしたかったのです。

社員全員に個別メールを送るということは普通はあまりやらないかと思います。しかし、それをすることによって会社に残る人達に、ネガティブではなくてプラスな気持ちになってもらえるような、そのような退職にしたいという想いで行った取り組みでした。

実際にその感謝の個別メールには、多くの熱いメールを返してもらうことができました。

退職は、終わりではなく、新しい人生のスタート。そのための準備は全力ですべし

最近、当時の社長から連絡を貰いました。正直なところ、私は恐らく当時社長からの評価は低かったと自覚していました。エース級の社員ではありませんでしたし、多分あまり評価されていないなと。しかし、そんな中で連絡が届いたことは嬉しい出来事でした。

他にも今でもずっと懇意にしてくれている同僚が何人もいます。当時自分で出来る最大限の努力をして会社に対して誠意を尽くした事によって、今も良い人間関係を続けることが出来ているのだと思います。

退職は人生の終わりではなく、新しいスタートです。そのための努力や工夫は全力ですることが大切だと思います。

次の記事((16)〜撤退基準は1年以内の単月黒字の達成有無)へ進む

前の記事((14)〜CMOは前職先輩)へ戻る

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?