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【PubMedで翻訳練習:人名=病名編】Fの巻:Fisher syndrome(フィッシャー症候群)

*PubMedで「人名を冠した病名」をアルファベット順(A-Z)に検索→論文を1つ選びアブストラクトを和訳。(なぜ人名=病名をキーワードにしたかは、この記事の最後をご覧ください。)

●本日の人名=病名:F (Fisher syndrome) フィッシャー症候群

●本日の論文:『ミラー・フィッシャー症候群』
Rocha Cabrero F, Morrison EH. "Miller Fisher Syndrome." In: StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; June 29, 2020. PMID: 29939539

●病名の由来:1956年に、カナダ人神経学者のMiller Fisherが、報告した。

●アブストラクト和訳

多発性ニューロパチー(神経障害)は、複数の神経における障害であり、大きく分けて軸索性と脱髄性の2種類がある。

軸索性ニューロパチーは、軸索の損傷および消失に関連した症状を引き起こし、幅広い全身疾患が病因である。

脱髄性ニューロパチーは、Schwann細胞が軸索と適切に相互作用しないことにより、異常を引き起こす。Schwann細胞は、末梢神経系において、軸索沿いの神経インパルスの跳躍伝導、神経の発達および再生、神経筋のシナプス活性の調節、Tリンパ球への抗原提示を含む、重要な役割を果たすグリア細胞である。

脱髄性ニューロパチーの病因には、中毒、遺伝、免疫介在などが含まれ、免疫介在性の場合は、発症時期によってさらに急性または慢性に分類できる。急性の免疫介在性脱髄性ニューロパチー(AIDP)は、発見者のフランス人医師の名前にちなんで命名された、ギラン・バレー症候群(GBS)の一種に分類される。

本総説では、GBSの稀な変異疾患であるミラー・フィッシャー症候群(MFS)に焦点をあてる。1932年に、ジェームズ・コリアー(James Collier)が初めてこの変異疾患を発見し、眼筋まひ、運動失調、反射消失の3症状について記述した。その後1956年に、ミラー・フィッシャーがGBSの中の個別の疾患として位置づけた。

●PMID: 29939539

●検索日:2020年9月21日

*できるだけ新しい論文(Display optionsをMost recentに設定)、かつ論文全文が入手可能なもの(Free full textにチェック)、また病態がざっと分かるように各論ではなく総説(Publication typeをReviewに設定)を選ぶようにしています。

Full text リンク↓

●感想・難しかった点

今回の病名は、発見者(ジェームズ・コリアー)ではなく、その病態を整理して、位置づけを決めた人物(ミラー・フィッシャー)が由来になっているようです。この辺の命名権の争いって、どんな感じで決まるのか興味ありです。星みたいに、必ず発見者ってわけじゃないんですね。

しかし、「ミラー・フィッシャー症候群は、ギラン・バレー症候群の一種である」って、人名に人名をかぶせた感じで、やはり名前だけでは病態は全く分かりません(^^ゞ

翻訳的には、「~性」っていうのが重なった時にどう変化をつけるか、重なってもそのまま「~性」をつなげればよいのか悩みました。

「急の免疫介在脱髄ニューロパチー」なんて「性」が3つも重なる。う~ん、どうしたらよいのか。。。

※どうして、人名=病名をキーワードに?

「PubMedで翻訳練習」の別シリーズとして、人名が病名になっている疾患をキーワードにしています。アルツハイマー病や、パーキンソン病など人名が病名になっている疾患はたくさんありますが、その疾患を最初に発見した医師や研究者などの名前=病名になっているために、病名を見ただけではいったいどんな病気なのか見当がつきません。

先に挙げたアルツハイマー病やパーキンソン病であれば、広く知られているため病態を知っている方も多いと思いますが、マイナーな病気であれば、お手上げです。ということで、勉強もかねて、人名=病名をキーワードにしました。できるだけ、一般に浸透していない病名を選ぶつもりです。

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