こどもが、の前に考える大切なこと

外資系とはいえそもそも日本からは海外赴任が少ない上、女性社員の子連れ赴任となるとかなり珍しいケースだったので、帰国してから赴任の経緯や経験を聞かれることが多い。考えることはいろいろあるのに、会話形式で話すと後からあーこれも言えばよかった、これも大事なポイントだったと思い残すことが多いからちゃんとまとめておこう。長くなりそうなのでパート1は女性のキャリアについて。

海外赴任を決めるとき、当時の上司(アメリカ人)は「海外赴任のポジションを探すか、残って昇進するか、どうしたい?」とオプションを提示してくれた。私が「海外に行きたいけど、家族が・・・」と返すと、「家族のことは一旦置いておいて、自分自身はどうしたいのか」と聞かれた。私はそれに戸惑って答えられなかった。そういえば、子どもが生まれて2年、当たり前と言えば当たり前なんだけど、子どもありきで何でも決めてきた。家族がいないと仮定して、自分が何したいかを考えたことはなかった。上司にとってその質問は普通の質問だっただろうけど、私にとってはとても新しく目から鱗が落ちるような瞬間だった。で、家に帰って早速考えてみた。「もし夫も子どももいなかったら、行きたい?」。とても簡単ですぐに「行きたい。絶対行きたい!」と思ったので、行く方向で色んなことを進めてみようと思った。

アメリカに行ってからも「(家族のことは置いておいて)自分自身が何をしたいの?」という質問に何度も出会う。女性社員向けのエンパワメント研修でも、この本の著者の講演会でも。
Kick Some Glass
https://kicksomeglass.com/

このWebsiteにやるべきことが書いてあるのだけど、私が特に大事だと思う点を挙げると、
- Live your intention and design a meaningful life(自分の意志で生きる、自分にとって意味のある人生をデザインする)
- Uncover the conscious and subconscious mental models that are holding you back(意識的/無意識に自分を抑えている固定観念を明らかにする)
- Make the choices and tradeoffs necessary to fulfill your goals(目標を達成するために必要な選択とトレードオフをする)

書いてあることはシンプルだし腹落ちするのに、なぜ考えたことがなかったのだろう。日本は役割を押し付けられやすい文化であること(男なんだから、女なんだから、妻なんだから、母なんだから)と、自分が本当は何をしたいか考える機会が少ない文化でもある(親も教師もどうしたいの?より〇〇しなさい)とも思ったけど、2018年のアメリカで女性のエンパワメントとしてこの本が出版されていることを考えれば、女性に共通しているのだろう。

まずは自分自身がどうしたいか、人のせいにしないで考える訓練をする。子どもがいるから、結婚してるから、は良い言い訳すぎて日本では誰も咎めない。もし当時の上司が日本人男性だったら「だよね、難しいよね」と共感されて終わってしまったかもしれない。逆にメキシコ人の友人には私が「だって会社がこう言うから」とか「だって夫が」と言って怒られたことがある。人のせいにするな、自分がどうしたいのか言いなさいよと。

考え方としては、「子が小さいし夫もサポーティブじゃないし海外赴任は無理」と混ぜないで、自分自身は?⇒海外赴任に行きたい⇒でも子が小さいし夫もサポーティブじゃない⇒どういう方法だったら行ける?⇒3ヶ月のみ、実家の母を呼びよせて子と夫は東京、という方法で実際に短期赴任をしていた会社の先輩もいる。

次にトレードオフの考え方。これもアメリカでキャリアの話をするとよく出会う言葉だった。あれもこれも欲しいものは全部手に入れるのが今時のワーママ!と言われがちだけど、現実的に考えてすべては無理だから、自分で優先順位をつけて取捨選択していく必要がある。その優先順位は時期によって変えればいいのだから一度捨てたらもう取り戻せないわけでもない。満足する人生を送るためには、何よりも大事なのは自分で考えて、自分で優先順位をつけて自分の人生を築いていくこと。話していたら、女性のキャリアではなく男性でも同じだし、人生でも同じだね、という結論になった。