自分のものを貸して収入に?シェアリングエコノミーとは
一般人がモノやスキルを提供する「シェアリングエコノミー」は今や、私たちの生活の中ですっかり身近な存在となっています。
使ったことはない、と思っていても、知らずに利用していたということもあるかもしれませんよ。
今回は「シェアリングエコノミー」のビジネスモデルとしての仕組みから今後の展望まで、基礎知識や近年よく話題になる「SDGs」との関連についても解説していきます。
シェアリングエコノミーとは
シェアリングエコノミーとは、一般の消費者が物・場所・時間・スキルをインターネットを介してそれらを必要とする人に提供したり、共有したりするサービスまたはその一連のビジネスを指します。総務省の「平成27年版 情報白書」によると下記のように定義されています。
現在はサービス内容によってさまざまなWebサイトやアプリがあり、提供する側もされる側も気軽に利用することができます。
従来、ビジネスは企業が消費者を対象にサービスや商品を提供するBtoCや、企業同士がサービスや商品を提供するBtoBが中心でした。
一方、シェアリングエコノミーは消費者同士で取引ができるCtoCのビジネスモデルです。
中にはBtoC、BtoBのシェアリングサービスもありますが、企業はシェアリングエコノミーサービスにおいては消費者同士の仲介役として関わることがほとんどのようです。
サブスクリプションとの違い
以前も解説しましたが、サブスクリプションというビジネスモデルがあります。こちらは消費者が企業に定額料金を支払い、商品やサービスを利用できるものです。
消費者が「物を所有するのではなく必要な時に利用する」という点は共通していますが、シェアリングエコノミーでは使いたい時・必要な時に限って都度料金を支払いますので、定額料金を支払う必要はありません。サブスクリプションは継続的な利用を前提としているところが、シェアリングエコノミーと異なる点だと言えます。
サブスクリプションについて詳しく知りたいという方は、下記の記事も参考になるのでぜひご一読ください。
シェアリングエコノミーの歴史
シェアリングエコノミーサービスの先駆者と言えば、「Airbnb(エアビーアンドビー;エアビー)」や「Uber(ウーバー)」でしょう。
Airbnbは空き部屋や空き家の持ち主が宿泊者に民泊として貸し出すサービスであり、2008年に開始されました。
個人・法人を問わずに利用できることや、アパートの一室から個人が所有する島まで幅広い物件が登録されており、人気を呼びました。インバウンドの勢いに乗って民泊ブームが起きたことは記憶に新しいところです。
Uberは自家用車のドライバーと移動したい利用者をマッチングさせるサービスです。
自家用車の運転手は提携運転手として登録し、配車を必要とする乗客とマッチングします。マッチングが成功すると、乗客の支払った乗車賃を運転手とUberが分け合うというビジネスモデルで、2010年に開始されたサービスです。
同様のサービスは欧米各国を中心に広がりを見せ、近年はアジアにも発展、普及しています。日本では2012年ごろから参入する企業が増え始めたようです。
シリコンバレーから生まれたビジネスモデル
シェアリングエコノミーの始まりは2000年後半のアメリカ西海岸のシリコンバレーであり、インターネットの普及とIT技術の進歩の融合により生まれたビジネスモデルと言われています。
インターネットとスマートフォンの普及により、消費者はいつでもどこでも気軽に多くの情報を手にすることができるようになり、世界中の人々とリアルタイムで連絡を取り合うことも可能となりました。
また、物に不自由することが少なくなった現代においては、物を所有することよりも利用することに重きを置くようになり、消費者同士で物やスキルをシェアする流れが生まれ、これがインターネットを利用することで急速に拡大していったのです。
日本でも拡大するシェアリングエコノミー
日本においても、シェアリングエコノミーサービスは近年急速に増加しています。
第二次世界大戦後、高度成長期を迎えた日本は物質的に豊かになる、いわゆる「バブル期」を経験しました。しかし物質的な豊かさは飽和状態を迎え、現在では価値ある経験やサービスに価値を置く「コト消費」に注目が集まっています。そのような価値観の変化を迎えた時代に、必要なときに必要な分だけ利用できるシェアリングエコノミーはまさに求められていたサービスと言えるのではないでしょうか。
特に日本社会では近年、単身世帯や核家族世帯、共働きの家庭が増えています。そのため、必要な人手やサービスが必要になった際に、気軽にインターネットを介してシェアリングエコノミーを利用することができます。今後もその需要が高まっていくと予想されており、そこにビジネスチャンスを見出す動きも高まっているようです。
5つに分類されるシェアリングエコノミー
シェアリングエコノミーで扱われる物やサービスは、主に空間・物・スキル・移動・お金の5つに分類できます。
空間のシェア
シェアリングエコノミーサービスには島をシェアできるものもあります。地域課題の解決にもつながると言われるのが空間をシェアするサービスです。Airbnbに代表されるようなホームシェアや民泊が有名ですが、シェアされる空間には駐車場や会議室などの身近な場所もあります。
物のシェア
冠婚葬祭で必要な物、使用頻度は低くても流行っている物、イベント事など単発でしか使わない物など、シェアした方が有効に使える物は意外と多いですよね。
物のシェアリングエコノミーはレンタルサービスやサブスクリプションサービスとあわせたサービスが多く、メルカリなど不用品を必要な人に安く売る、というのもシェアリングエコノミーに分類されることがあるようです。
スキルのシェア
自分の得意なことを必要な人に提供できるシェアリングエコノミーです。スキルと一言で言ってもその種類や数は非常に多く、家事・育児代行や介護などの生活支援から、語学・教育など知識を共有するものや観光などのスキルを提供するものなど多岐に渡ります。
一時話題になった『おっさんレンタル』もシェアリングエコノミーの先駆けと言えるでしょう。コミケのストーカー対策に利用したという話も有名ですね。
ポンとオーナースタッフにもこのサービスを利用した者がいます。話を聞いてみたところ、「だいぶ前の話だけど、自宅の排水溝清掃の際に洗濯機を動かしたくて男手が必要で頼んだ。短時間の作業なので時給で頼めて助かった」のだとか。
移動のシェア
同じ目的地に向かう人と移動手段を共有するシェアリングエコノミーです。Uberなどのサービスが有名ですが、近年一般的になったカーシェアや、ちょっとした移動に便利なサイクルシェアなども拡大しています。
お金のシェア
アイデアやスキルに賛同した出資者が資金を出し合い、対価として物やサービスを提供してもらうシェアリングエコノミーです。クラウドファンディングは最近、SNSやメディアでもよく目にするようになりました。
シェアリングエコノミーの市場規模
シェアリングエコノミーサービスは基本的にインターネット上で利用できるサービスであり、スマートフォンが急速に普及し、モバイルでのインターネット利用が加速している今、今後もその市場は拡大していくと見込まれています。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会が株式会社情報通信総合研究所と合同で行った市場調査によると、2021年度の日本国内における市場規模は2兆4,198億円となっています。
2030年度には14兆2,799億円まで拡大する可能性もあるのだとか。
まだまだ日本では認知度が低いことや、新型コロナウイルス感染症の拡大が再度広がっていることなど、さまざまな不安要素はあるものの、時代のニーズにマッチしているシェアリングエコノミーには大きな期待が寄せられているようです。
また、近年よく話題にあがるSDGsの側面からも効果が見込まれています。
シェアリングエコノミーとSDGs
SDGsとは「持続可能な開発目標」のこと。貧困の解決やジェンダー平等の実現など17の目標からなる国際的な開発目標のことです。
SDGsとシェアリングエコノミーはどのように関連づけられるのでしょうか。SDGsが目指す中には、資源の保全やクリーンエネルギーの実現など、いわゆる「エコ」に関連するものも多く、物やサービス、スキルをシェアするシェアリングエコノミーはSDGsとも相性のいいビジネスサービスだと言えます。
例えば、物やスペースをシェアするサービスが広がることで無駄な買い物やゴミが減少する、移動のシェアが普及することでエネルギー消費の減少に繋がる、家事・育児・介護などのスキルをシェアすることで、生活が円滑になされるためのフォローや労働に参加したい方の後押しをする、など、日常のさまざまなシーンでシェアリングエコノミーはSDGsに貢献できます。
シェアリングエコノミーのメリット・デメリット
続いて、シェアリングエコノミーのメリットとデメリットを確認していきましょう。
メリット
個人が所有する物やスキルがサービスとして成立する
自分にとっては不要な物や当たり前にできることであっても、人によってはそれが必要な物やスキルかもしれません。
自分の物やスキルがサービスとして成立し、収入を生むのは大きなメリットです。消費者側としても、必要な分だけ購入や利用が可能なのは嬉しいポイントですよね。
消費活動が促進される
単純に考えると、シェアすることで消費が減るようにも思われますが、実際にはカーシェアや民泊の普及は、従来よりも消費活動を促進させたのだとか。
シェアすることで「本当に必要な物やサービスに関しては惜しみなくコストをかけたい」という気持ちと「購買や利用にかかるコストはなるべくおさえたい」という気持ちをどちらも満たすことができるからかもしれません。
高額なものをシェアによってコスト削減するという考えもありますし、シェアで浮いたお金を本当に欲しいものにあてる、という考えもあります。
どちらのケースにせよ、消費活動が促進されて、かつ経済にもいい影響を与えるのであればこれも大きなメリットと言えます。
デメリット
個人間取引ゆえのトラブルもある
気軽に利用できるのがシェアリングエコノミーのメリットですが、その反面、提供者の信頼度を図る指標が少ないことがデメリットの一つに挙げられます。
基本的にシェアリングエコノミーはCtoC、個人間での取引となるため、実際に利用する際には、プロフィールなどに開示されている情報だけではなく、評価数や口コミなどもしっかり確認し、総合的に利用するかどうか判断することでトラブルを避けられます。
特に物のシェアの場合は、破損や盗難といったトラブルに巻き込まれる可能性もあります。破損といってもそれが最初から壊れていたのか、自分が利用している間に壊れてしまったのかによって責任の所在は変わってきます。トラブル時の対応が明らかになっていない場合には、自分には非がないのに賠償を求められる可能性もあります。
故障や破損、盗難といったトラブルを事前に予測することは難しいのですが、緊急時の対応や責任の所在、保険の有無などがあらかじめ明確になっているか、必ず確認するようにしましょう。
提供者によってサービスの質が異なる
個人間での取引が中心であるシェアリングサービスでは、企業の提供するサービスに比べ、サービスの質にばらつきがあります。
例えば相乗りサービスの場合、ドライバーが毎回同じクオリティの運転技術を提供できるとは限りません。安全性を考えると、気軽なサービスだからこそ、慎重な選択が必要となるでしょう。
提供側でも消費側でも安全な取引を
ここにあげたメリット・デメリットは、提供者・消費者ともに当てはまるものです。どちらの立場でも、より信頼性・安全性の高い取引ができると良いですよね。
そのために、お互いにしっかり情報を確認しておく、保険に加入する、認証マークを信頼性のひとつとして取得または参考にする、といった対処法が考えられます。
まとめ
今回は近年急激に成長しているビジネスモデルであるシェアリングエコノミーについて解説しました。
低いコストで必要な分だけ利用することができるのは、提供する側と利用する側、双方にとって大きなメリットですが、個人間取引という手軽さの反面、責任の所在があいまいになる可能性や、トラブルが起こった場合の対処の難しさは否めません。
利用する前の事前情報や口コミ、認証マークなどを確認し、未然にトラブルを防ぐなど、利用する側の慎重さも求められそうです。提供者としては万が一の場合に備え保険の加入も検討すべきでしょう。
SDGsとの親和性も高く、現代のビジネスモデルとしてシェアリングエコノミーはこれからも市場が急拡大していくことが予想されています。新しいビジネスモデルとしてこれからも期待が高まっていきそうですね。
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