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100ヶ国の世界文学を読んだ話


モチベーション
海外旅行はしたいけどコロナ禍でそれどころじゃない.なら本を読めばいいじゃない.2020年に入ってから色々な国の文芸作品を読みました.

選書の基準
基本は現代作家.中央アジアの作家で邦訳されてるものはほとんど見つからなかったので知ってる人は教えてほしい.



ヨーロッパ


北欧

ヴァレンタインズ (オラフ・オラフソン / アイスランド)
valentineには「恋人」という意味もある。一月から十二月まで名前が付いた12の章で12組の恋人/夫婦たちの愛にヒビが入る。一度壊れた関係が修復することはない。永遠に。


馬を盗みに(ペール・ペッテルソン / ノルウェー)
ノルウェー版”老人と海”.ヘミングウェイみたいな古き良きアメリカマッチョイズムはなくて,北欧らしい静謐で透き通った作品.こういう本がベストセラーになるノルウェー人の文化レベルは高い.


黒と白(トーベ・ヤンソン / フィンランド)
ムーミンの作者.ムーミン谷の物語もだいぶ抽象的だけどこの短篇集はさらに抽象的.ムーミンが肉体を失った人間たちの物語ならこの短篇集は魂だけになった人間のお遊戯.表題の『黒と白』の最後の一行で衝撃を受ける.


悲しみのゴンドラ(トーマス・トランストロンメル / スウェーデン)
ノーベル文学賞受賞者の詩人.同じ受賞者で詩人のシェイマス・ヒーニーみたいにわけわからんのではなく,イメージと音楽を想起させる力が強い詩なのでよい.


ナターシャ(デイヴィッド・ベズモーズギス / ラトビア)
起承転結のテクニックが物凄く巧み.チェーホフの再来と言われるのもわかる.作者の考えは出てこないので読者が自由に物語を汲み取ってね,という感じがする.


消される運命(マーシャ・ロリニカイテ / リトアニア)
ナチスドイツによるホロコーストではなく,リトアニア人による(リトアニア在住の)ユダヤ人ホロコーストの話.大量虐殺を引き起こすのは外部要因だけではない,ということ.


運命綺譚 (カーレン・ブリクセン /デンマーク)
『バベットの晩餐会』が有名な作家.イサク・ディーネセンは男性名義の別名.神に翻弄され,物語に力を与え,運命を前にしては押し黙るしかない者たちの物語.




西欧

暗い世界(ウェールズ)
堀之内出版,という名前の通り堀之内にある小さな出版社が出したウェールズ作家たちの短編集.日本で初めて出版されたらしい.よく出してくれたという感じ.表題になっている『暗い世界』はすごくよかった.


両方になる (アリ・スミス / スコットランド)
同じ装丁・内容で章立てが2パターンの本がある(大ネタバレ)." to be both"という言葉が本を超えて意味を持って,両方になったり二重写しになったりする.


電燈 (シェイマス・ヒーニー / 北アイルランド)
1995年にノーベル文学賞を受賞した詩人.日本では知る人ぞ知る,という感じで図書館にない本も多い.実は全詩集も出ている.
が,良さがよくわからなかった...


青い野を歩く(クレア・キーガン/アイルランド)
台詞を並べるだけが小説ではない。無口なキャラ達の行間を読み取ってね、という作者からのメッセージを強烈に感じた。凄くよい短編集。


ブックショップ (ペネロピ・フィッツジェラルド/イギリス)
優れた小説は優れた魂の導き手であって、本は決して娯楽品ではない。という場面がある。果たしてそうかな?


ハリネズミの願い (トーン・テレヘン /オランダ)
人と会って自宅に帰ってきたとき,あんなこと言わなきゃ良かったとか,別のことを言うべきだったとか一人で反省するタイプの人間におすすめできる.誰だってそうだし,俺だってそう.


ラルフ124C41+ (ヒューゴー・ガーンズバック / ルクセンブルク)
ヒューゴー賞の名前の元になった人.2018年はアジア人で初めて受賞者が出て話題になった(劉慈欣:三体).
SF作家というより編集者なのでこの作品ぐらいしか日本語では読めない(多分).近代SFの源流がこの作品.


幸せではないが、もういい (ペーター・ハントケ / オーストリア)
ハントケの中で最も気に入ってる作品。読むべし。
幸せではないが,もういい 口に出したくなりませんか.


メゾンテリエ (ギ・ド・モーパッサン / フランス)
名作であるとは思うんだけどモーパッサンの他作品と比べるとつまらないかなぁと思った。田舎で読んだほうがよい。


青い鳥 (モーリス・メーテルリンク /ベルギー)
チルチルとミチルが幸福の青い鳥を探しに冒険に行く超有名なアレ.なぜ青い鳥を探さないといけないのか?という問いには答えてくれない.”夜の御殿"の幕が一番好き.




中欧

そんな日の雨傘に(ヴィルヘルム ゲナツィーノ / ドイツ)
46歳独身、最近彼女に捨てられクビになりそう。そんな中年が愛を探す話。愛が見つかることはない。


あまりにも騒がしい孤独(ボフミル・フラバル/ チェコ)
タイトル買いした本。中身はタイトルの通り。悲しみだけがある。


墓地の書(サムコ・ターレ / スロヴァキア)
罪がある者だけが石を投げる.罪なき者はそもそも石を投げない.では,罪の自覚がない者は?


イヴァン・ツァンカル作品選(イヴァン・ツァンカル / スロヴェニア)
スロヴェニアの国語の教科書に載るような国民的作家.作品選といっても収録作品は『一杯のコーヒー』,『使用人イェルネイと彼の正義』の2つ.どちらも”正義も阻むものは何か?”を追求する.心に深く残る作家.


よそ者たちの愛(テレツィア・モーラ / ハンガリー)
”あの子にできることなんてある?ほんとになにひとつできない人間っていうのもいるのだ.そういう人間が,それでも生きようとしている.しかもいい生活をしたがる.あのちびすけがわかっていないのは,人生がまだとてつもなく長いってことだ.”


花粉の部屋(ゾエ・イェニー / スイス)
子供を顧みない両親を捨てて一人で生きようとする少女の話。吉本ばななから感情を抜き取ったテクストでなかなかいい。こういう優れた小説を絶版にする新潮社は謎。




南欧

エル・スール(アデライダ・ガルシア=モラレス / スペイン)
心を閉ざしたまま自殺した父親の生きた痕跡を追う心を閉ざした娘の物語.潔癖に生きるということはかくも難しいことで,複雑で脆い世界ではあらゆることが原因となって,とくになにかあるわけではない苦しみが永遠に続く.


コロナの時代の僕ら(パオロ・ジョルダーノ / イタリア)
”すべてが終わった時,本当に僕たちは以前と同じ世界を再現したいのだろうか.支配階級は肩を叩きあって互いの見事な対応ぶりを褒め讃えるだろう.一方僕らはきっとぼんやりしてしまって,とにかく一切をなかったことにしたがるに違いない”


オイディプス王(ソポクレス / ギリシャ[古代])
古典of古典.いまの時代に読んでも,「ふ~~ん,気づけよ」ぐらいにしか思わないんだけど,後の時代の作品,小説にしろゲームにしろラノベにしろ,あぁこれはオイディプスだなと勘づくときがくる.その瞬間が楽しいと思えるかどうかは別として.


イスタンブール短編集(サイト・ファーイク / トルコ)
トルコだったらオルハン・パムクでは?って感じだけどいずれ読むだろうからあまり知られてない作家を読んだ.イスタンブール市井の人達のちょっとした感情の動き,イベントをローカルに書いててトルコの地理に詳しくなれる.


ポルトガル短篇小説傑作選(ポルトガル)
ポルトガル文学はペソアとサラマーゴだけにあらず,ということを教えてくれるいい短篇集.『少尉の災難』が一番ぐっと来た.





東欧

ソーネチカ(リュドミラ・ウリツカヤ/ ロシア)
ロシア版女の一生。人生に大切なことは静けさであると教えてくれる。


旅に出る時ほほえみを (ナターリヤ・ソコローワ / ウクライナ)
感想が難しい.二十世紀のおとぎ話,という体だけどハッピーエンドではない.主人公は旅に出るがほほえむことはない.孤独なインテリの話.


西欧の東(ミロスラフ・ペンコフ / ブルガリア)
短篇集なので微妙なのもあるけど出会ってよかったと思ったものもある.「ユキとの写真」とか,ブルガリア人から見た日本人はこうなのか,と思える.「マケドニア」は凄くいい.


若き日の哀しみ(ダニロ・キシュ / セルビア)
著者の自伝的連作短編集。意識(というか主題)がころころ変わってよく分からなかった。。。
読み終わってから気づいたけど,セルビアのヴァージニア・ウルフって感じなのかもしれない.


敗残者(ファトス・コンゴリ / アルバニア)
戦うことを選択せずに底へ落ちていくが,落ちきった底は敗残者には用意されていなかった,という話.社会主義リアリズムというのかは知らんけど,旧ソ連から独立した国特有の暗い天井の低い感じがよく出てた.


愛と障害(アレクサンダル・ヘモン / ボスニア・ヘルツェゴビナ)
愛,愛が欲しい!なぜ手に入らないのか?障害になっているのはつまらない自尊心だった.という話.手に入った愛は家族愛だった.




アジア

中東(西アジア)

砂漠に創った世界一の学校(スワーダ・アル・ムダファーラ / オマーン)
著者は日本人女性から初めてオマーン人に帰化した人.それだけでも凄いけどオマーンで学校を(文字通り)創って校長になって四度結婚する...という凄まじい人生を送ってる.こんな人もいるんだね.


アルメニアを巡る25の物語(グラント・ポコシャン / アルメニア)
駐日アルメニア大使が書いたガイドブック.神話/民話と絡めながら紹介してくれるので読み物として楽しい.ハチャトゥリアンのイメージしかなかったけどシンバルを発明したのはアルメニア人:ジルジャン(Zildjian)らしい.へぇ~.


クネレルのサマーキャンプ(エトガル・ケレット/イスラエル)
自殺者しかいない黄泉の国でスタンドバイミーする話。よくわからなかった...


死体展覧会(ハサン・ブラーシム / イラク)
加害者も被害者も書かない.暴力を暴力のまま突き詰めて書かれた短篇集.そこに情もなければ希望もない.いい本なんだけどすぐ品切れになってしまった.


酸っぱいブドウ/はりねずみ(ザカリーヤー・ターミル / シリア)
ざっくり言うと群像劇なんだけど,その群像が一瞬で風のように去っていってしまう.あとに何も残らず.
シリアの街のゴミゴミして危うい感じと社会風刺が寓話的に書かれていて,結構東欧寄りの文学なのかもしれない.


祈り(ヴァジャ・プシャヴェラ / ジョージア[グルジア])
コーカサス地方の伝承が元になってる叙事詩.コーカサスっていうと日本から遠く離れてる感じだけど,文化的には中国からずっと地続きなんだなぁと思える.


預言者(カリール・ジブラン / レバノン)
アメリカ知識人家庭には必ず一冊ある,らしい本.確かにアメリカ人が好きそう.キリスト教の牧師の話を聞いてる感じになった.単行本は訳者がちょっとオカルトなので文庫本のほうを買ったほうがいいです.


砂丘を越えて(サウジアラビア)
現代サウジアラビアの文学を日本語で読むにはこの本しかないはず.しかも非売品.なぜ本棚にあったのかは謎.演劇とか詩もある.



中央アジア

核実験地に住む(アケルケ・スルタノヴァ / カザフスタン)
フィクションではなく学術書.旧ソ連(現カザフ)の核実験地・セミパラチンスク市住人の証言をまとめたもの.住民の証言は歴史的財産である,という著者のメッセージ.


モンゴル文学への誘い(モンゴル)
単著が見つからなかったのでオムニバスのもの.現代詩・小説と研究論文編に分かれている.詩がなかなかいい.モンゴルの草原にドルジ達の詩歌が響き渡る.


この星でいちばん美しい愛の物語 (チンギス・アイトマートフ / キルギス)
原題は『ジャミーリア』。この邦題だと手に取らない人多いんじゃないか、、中身は素晴らしい。


記憶の中のソ連(ティムール・ダダバエフ / ウズベキスタン)
ソ連崩壊後独立したウズベキスタン,そのソ連時代を生きた市井の人々の証言を集めた本.過去を美化することは今の自分を否定することになる.しかし,過去を拒否し,今の自分を過去から切り離して生きることは社会の独自性を失わせる.




南アジア

灰と土(アティーク・ラヒーミー / アフガニスタン)
まったく身に覚えがないけど本棚にあった.というかアフガニスタンってどこにあって何語を話すのかも知らなかった(中国と地続きだしペルシャ語だった).とてもよい作品だった.


西への出口(モーシン・ハミッド / パキスタン)
パキスタンの戦火から逃れるために”西へつながる扉”をくぐってパキスタンからギリシャ,ロンドン,サンフランシスコまで恋人が旅する話.西へ行くたびに二人の関係も変わっていき,そして出口に至り,自由になる.


地獄で温かい(バングラディシュ)
邦訳で読める貴重な現代バングラディシュ文学の短篇集.ベンガルの文化を強く受け継いでるのでどの短編も密度が濃くてすばらしい作品ばかり.


幸福大国ブータン(ドルジェ・ワンモ ワンチュック / ブータン)
先代のブータン国王の第4王妃が王妃になるまでの自伝.5代目になったのが15年ぐらい前だったかな?今はだいぶ民主主義になってブータンも変わったらしいけど,幸福度は変わってないんだろうなぁという感想.


ルバイヤート (オマル・ハイヤーム / イラン[ペルシャ]))
ルバイヤートとは四行詩のこと。人生は悲しく短いのでせめて酒を飲んで騒いで眠ろう。という四行詩がつらつら書かれてるだけなんだけど(1ページに5回ぐらい酒を飲めって出てくる)、言葉にも酔うことができる。




東南アジア

珈琲の哲学 ディー・レスタリ短編集 (ディー・レスタリ / インドネシア)
珈琲以外の話もある。散文がめちゃくちゃいい。これはいい買い物したと思った。


草原に黄色い花を見つける(グエン・ニャット・アイン / ベトナム)
ベトナム版あすなろ物語.少年ティユウが愚かな振る舞いを繰り返し,反省ながらゆっくり成長していく話.黄色い花を見つけるのは実はティユウではない.


港に向かいて (ズリナー・ハッサン / マレーシア)
マレーシア詩人の詩集,の対訳!一体だれが読むんだという感じ.人間に成長痛があるように国(とくに近代に独立した国)にも成長痛がある.艱難辛苦を書き記すことが文学の果たす役割の一つではある.


マニラ 光る爪(エドガルド・M・レイエス / フィリピン)
フィリピンでは男性でも日常的にマニキュアをするらしい。だから光る爪。しかし主人公の爪が光ることはない。


クローヴィス物語 (サキ / ミャンマー(ビルマ))
イギリス文学では?という感じだけど生まれがビルマなのでミャンマーにカウント。ブリティッシュ星新一といった感じ。N氏の役割が主人公クローヴィスになる。


観光 (ラッタウット・ラープチャルーンサップ / タイ)
タイは決して貧しい後進国なんかではない,と作者が外国人(観光客)を冷ややかに見つめる短篇集.こういう本大好き.


追憶のカンボジア(チュット・カイ / カンボジア)
人はなぜ子供の頃を振り返り,その風景を眺めたくなるのか?子供だった頃に住んでいた今よりいい世界を思い出して,いい世界がまた戻ってきてくれると願うからだ.


ムアン・プアンの姉妹 (スワントーン・ブッパーヌウォング / ラオス)
ラオス独立の歴史を軽く知らないと楽しめないかもしれない.ロミジュリといえばロミジュリだが...


サヤン、シンガポール (アルフィアン・サアット/シンガポール)
サヤンとは英語で言うところのDear. 急速に近代化したシンガポールだけど、近代化に取りこぼされた人たちもいる。ちょっと切ない短編集。




東アジア

愛する人達(川端康成 / 日本)
『雪国』も『伊豆の踊り子』も退屈だしどうしようかなと悩んで持ってないこれを読んだ。一行一行が凄まじく濃密でこりゃ並の作家はかなわないなと思った。。。


歩道橋の魔術師(呉明益 / 台湾)
あ^ぁ~いいっすねこれ(語彙力無し).
恒川光太郎の『夜市』にマジックリアリズムを足したような感じ.追いかけたい作家.


李賀詩選 (李賀 [李長吉] / 中国 [唐])
李白や白居易といった中央のインテリエリート系とは全く違う毛色の唐の詩人.鬼才という言葉はこの人が由来.18~19世紀の西洋詩(ヘッセとかリルケ)か,和歌に近いところがある.俺が一番好きなのは『蘇小小歌』と『夢天』


跳べない蛙 北朝鮮「洗脳文学」の実体 (金柱聖 / 北朝鮮)
小説でなくルポタージュ.朝鮮労働党の中で職業作家がどう位置づけられているのかを書いている...はずなんだけど,この人の構成が下手なのか書けないことが多いのか,本当に知りたいところまで手が届いていない感じがする.


誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ (イ・ギホ / 韓国)
最近日本で流行りの韓国文学、、、とは作風がちょっと違う。砂抜きされてないアサリを食べているような感じ(謎)。


懐情の原形(ボヤン・ヒシグ / 内モンゴル自治区)
内モンゴル大学を出て法政大で修士を取ったモンゴルの詩人.
モンゴル語で「時間」,「時計」,「季節」,「時代」を「チャグ」と一言で大雑把に表すことがある.モンゴル人の顔からは永遠は見られるが,瞬間はほとんど見られない.




北米

かもめのジョナサン (リチャード・バック/ アメリカ)
これも有名だけどいまいち良さが分からなかった。途中から展開がドラゴンボールになってウケた。自分のなかではアメリカ版ライト武士道という位置付け。


小説のように(アリス・マンロー / カナダ)
カナダのノーベル賞作家.一瞬の感情の揺れ動きを膨らませて物語を書くのが得意な人.膨らんだ先には?人生の悲哀がある.


空気の名前(アルベルト・ルイ=サンチェス / メキシコ)
ミニシェヘラザードという感じ。結構退屈。
物語る人間の欲望のままに(口承の)伝説というのは変換する…という見方をすれば面白いかもしれない。




中米・カリブ海域

すべて内なるものは(エドウィージ・ダンティカ / ハイチ)
三人組の二人が結婚して自分が外されてしまったと感じるとき,祖国へ帰る人がいる中で自分はアメリカに留まる決意をしたとき,楽しかった記憶も哀しい記憶も全て内に秘めて語らないとき,作者はそこに真実の愛があると言う.苦しい話.


時との戦い(アレホ・カルペンティエール / キューバ)
現時点からある過去の時点まで(時間的に)巻き戻しつつ演出しようと思っとき,映像作品だったら簡単にできる.文章だったらかなり難しい.それを簡単にやってのけて凄い.


コスタリカ選詩集(コスタリカ)
ヨーロッパの連中と比べると(技巧的に)洗練されてない感はあるけど,十分コスタリカ感(南国感?)を楽しめる.全体的にどことなくヘッセみがある.


こうしてお前は彼女にフラれる(ジュノ・ディアス / ドミニカ共和国)
『オスカー・ワオ』のモテ男、ユニオールが付き合うごとにフラレまくる話。
彼女との馴れ初めを思い出したりしたらその関係はもうおしまいってことさ。


川底に(ジャメイカ・キンケイド / アンティグア・バーブーダ)
散文詩,詩的な文体,幻想小説,こういった文章に意味を追求するかしないかでテクストの楽しみ方は違ってくる.主題が浮上してくる場面に注意し,反復される瞬間を見つめなければ本当に楽しめないこともある.音楽もそうだけど.


無分別(オラシオ・カステジャーノス・モヤ / エル・サルバドル)
”わたしたちが恐れていた者たちは,わたしたちに似た者たちだった.先住民虐殺によってもたらされる苦痛と恐怖を味わうためには,虐殺の当事者や証人である必要はない.われわれはみんな,誰が人殺しだか知っているぞ!




南米

別れ(フアン・カルロス・オネッティ / ウルグアイ)
よくわからなかった(完).
読みにくいなぁと思ってそのまま終わってしまったけど,これはもしかすると「信頼できない語り手」ってやつじゃないか.でも読み返したくはない.


家宝(ズウミーラ・ヒべイロ・タヴァーリス / ブラジル)
現代ブラジル文学を牽引する作家のひとり。「生」の擬人化を試みているのがこの本。生は不意打ちをかけ、パンチを浴びせ、欺瞞を晒し、人間をノックアウトする。


エレンディラ (ガブリエル・ガルシア=マルケス /コロンビア)
20世紀で最も偉大な作家の一人(だと俺は思ってる)。小説の技巧の一つに、フィクションをいかに現実に起こりそうなこととして書くか、がある。ガルシアマルケスは非現実な現象をさも現実に起こってそうに書くのがメチャメチャうまい。




アフリカ

北部

北へ遷りゆく時/ゼーンの結婚(アッ・タイーブ・サーレフ / スーダン)
アラブ文学の中でも最高傑作に数えられる本の一つ...なんだけど絶版.河出書房はなんとかしてほしい.故郷喪失の魂の着地作業,ってうまいこと言うなと思った.


ライオンの咆哮のとどろく夜の炉辺で(ジェイコブ・J. アコル / 南スーダン)
アフリカ中央奥地の湿地帯,白ナイル川流域に住む気高き民族ディンカの民話集.口承文学ゆえに,物語の中に人生の真実と悪夢が同時に居座る.ディンカは心静かに物語に耳を傾ける.ライオンの咆哮のとどろく夜の炉辺で.


アルジェリア、シャラ通りの小さな書店 (カウテル・アディミ/ アルジェリア)
カミュを世に送り出したアルジェリアの実在の編集者,エドモン・シャルロが書店を立ち上げる話.独立戦争で書店は崩壊,その後は国立図書館の分館,その後は国に売り払われて解体される.解体作業をする人物は...


ナギーブ・マフフーズ短編集(ナギーブ・マフフーズ / エジプト)
エジプトのノーベル文学賞受賞者.『カイロ三部作』が有名だけど長すぎるのでこっちを選んだ.『長生きは呪い』の思想が随所に出てくるけど本人は94歳まで生きた.




中央部

忘却についての一般論(ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ / アンゴラ)アフリカ文学って部族がどうたらとか、西洋化がどうたらって内容が多くて読み通すのに体力がいることが多いんだけど、(舞台がアンゴラ独立運動とはいえ)この本はほどよく詩的で読みやすく、面白かった。


グリオの夜(カマ・シウォール・カマンダ / コンゴ民主共和国[ザイール])
グリオとは西アフリカの吟遊詩人のこと.雷を自由に操る一族の話,恋を禁じられた王女の話,蚊の見た夢の話...どの作品を読んでも面白かった.


世界が生まれた朝に(エマニュエル・ドンガラ / コンゴ)
ザイールでないほうのコンゴ.有史以来受け継がれてきたブラック・アフリカの思想と近代的西洋思想を融合させて一人の主人公の人生に落とし込んだ凄い小説.アフリカ版『百年の孤独』.(生まれた場所と死ぬ場所が同じ!)





東部

イースタリーのエレジー (ペティナ・ガッパ / ジンバブエ)
ジンバブエ版フランク・オコナー.凄くよい短篇集だった.『私は部族ではない.ジンバブエ国民だ』の言葉が光る.


泣くな、わが子よ(グギ・ワ・ジオンゴ / ケニア)
ケニア版ロミジュリ.支配者側(白人側)と被支配者側(黒人側)の子供がロミジュリの役になる,が二人が理解し合うことはない.ロミオが毒薬を飲むこともない.


ちいさな国で(ガエル・ファイユ / ブルンジ)
「やつの悲しみは理性を凌ぐほど大きいのだと.悲しみは,話し合いのゲームのなかのジョーカーだ.ジョーカーを出されたら,ほかの主張はすべてひれ伏し,屈服するしかない.悲しみはある意味,理不尽な存在だ...」


ラウィノの歌/オチョルの歌 (オコト・ビテック / ウガンダ)
アフリカ文学の中で頭に出てくるような名作...らしい.素晴らしい長篇詩.
西洋文化感化されてアチョリ族の伝統を棄てようとする夫・オチョルへの反歌として,妻ラウィノが「黒い私達」の日常の美を訴える.




西部

かくも長き手紙(マリアマ・バー / セネガル)
セネガル版『キム・ジヨン』.手紙を書いてる主人公ラマトゥライはキム・ジヨンより一世代上の50歳,フェミニズム(女権拡張)よりもフェミニティ(女らしさ)を第一義と考え,旧い慣習を捨て去るのではなく,共に生きていくことを選ぶ.


アフリカのいのち(アマドゥ・ハンパテ・バー / マリ)
”私たちは同じ物語を何度聞いても決して飽きはしない!私たちにとって,繰り返すことは欠点ではないのである.”


なにかが首のまわりに (チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ / ナイジェリア)
貧しいナイジェリア生まれの黒人女性vs豊かなアメリカ生まれの白人男性,という単純な対立構造で見てしまうと見えなくなるものもある.という話に見える.




南部

ジャンプ(ナディン・ゴーディマ / 南アフリカ)
南アフリカ共和国の名高いノーベル文学賞作家...なんだけどよくわからん!たぶん俺がアパルトヘイト時代の歴史をよく知らないせい.


バオバブの木と星の歌 (レスリー・ビーク /ナミビア)
ナミビア独立直前,過去にすがりつく母親と決別する少女の話.
小中学校の図書館によく置いてある児童書シリーズの一つ,なんだけど,これ小中学生にはヘビーすぎる.




オセアニア

創世の島(バーナード・ベケット/ ニュージーランド)
21世紀末のニュージーランド(が元になってる島)でのSF系ミステリ.いい感じに騙されました.


おしりに口づけを(エペリ・ハウオファ / トンガ)
ケツが痛ぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(完)


パプア・ニューギニア小説集(パプア・ニューギニア)
一つの国,数百の民族,千の言語,文明の衝突,民族の争い,西洋化,村へ縛られる魂,文化間の葛藤...登場人物達は敗北するが,彼らの勇気は損なわれることはない.



100冊読み終えて

100冊のうち91冊が購入,9冊が図書館で借りた.100冊読むのに2年くらいかかるかなぁと思ったけど,意外と早く終わってしまった.在宅勤務は偉大.

置き場所に困ってる本たち

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どうすんのこれ?

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世界には色々な国と言葉と,物語がある.

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