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【感想文】表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

収入が増えてオートロックの部屋を探すときにはコーヒーが出てきた。
この世を一言で言うならば、「オートロックのマンションを探す時には不動産屋でコーヒーが出てくる世界」だ。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬/若林正恭

20代の前半にアジアの何カ国かを旅して回った。

ベトナム、シンガポール、台湾、韓国、タイ。
その頃は日本円の価値が高くて、お金を貯めては、アジアの国へ旅をして、
買い物をしたり、ご飯を食べたり、現地の有名な観光地を訪れたりした。

海外へ行くたびに日本との文化の違いに驚いたり、人の優しさに触れたり、見たことのない建造物に魅了されたりして、とても楽しかったのだが、
旅の最後には必ずホームシックになった。

やっぱり日本に帰りたい。

どこもかしこも綺麗にされていて、クリーンな日本の空港に帰ってくると、やはり安心した。
すれ違うと笑顔で挨拶をしてくれる添乗員さん、小銭を一緒に数えてくれる店員さん、「おかえりなさい」と迎えてくれる看板、綺麗なトイレ、ツルツルの床、その全てが熱心に仕事をしてくれた誰かのおかげだと思うと、誇らしかった。

しかし、どうして、そんな日本に住んでいながら、
私たちは生きにくさを感じているのだろう。

SNSで誰がどんな生活をしているのかが分かりやすくなった世の中で、
どうもみんなと同じ生活をしていないと世界に置いて行かれていっている気がする。

それは例えば、最新のアイフォンを持っているかとか、
流行に乗ったファッションやアプリを使っているかとか、
日々どんな場所へ出掛けていって、何を思って、どんな人と仲良くしていて、お金はどれくらい持っていて、その全てが普通か普通以上ではないと認められない。ような。

競争の中に自然と介入されていく世の中にずっと疑問を持っていた。

社会の勝者だけが幸せで、敗者は不幸せなのか。
もしくは、私たちは生まれた瞬間から競争の渦中に巻き込まれていて、
勝つことや負けることで、いいかわるいかを決められ、中立の立場にはいられなくなっているのか。

その疑問をこの本は解決してくれていた。

新自由主義…ネオリベラリズム
1930年以降、社会的市場経済に対して個人の自由や市場原理を再評価し、政府による個人や市場への介入を最低限とすべきと提唱する経済学上の思想。

新自由主義は、自由競争を促すことで経済活動が活性化される。その一方で、社会保障費が減らされる、貧富の差が拡大するなどが問題点。

社会主義…社会主義とは国家が土地やお金・道具などの資本を管理し、国民が平等になることを目指す仕組みのこと。

近年、日本では新自由主義が浸透してきていて、
自由を認める反面、ますます人と人との競争は激化してきている。

著者の若林さんは、この「新自由主義」に注目していて、私たちの生き辛さの原因は自分自身の問題ではなく、経済のせいなのではないか?と唱える。

そして、この本は難しい話ではなく、
日本にはない社会主義を求めて、
キューバへと旅をするオードリー若林さんの
とても面白い旅行記なのだ。

果たして、社会主義と新自由主義、
どちらが楽しく生活できるのか?
競争をするメリット、デメリット、平等であるメリット、デメリット。

私たちがどう生きるべきか?を示してくれる。

「先生、知ることは動揺を鎮めるね!」
「若林さん、学ぶことの意味はほとんどそれです」

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬/若林正恭

何台もバイクが行き交う道をビクビクしながら、右を見て、左を見て、また右を見て、
「今だっ!」と駆け足で渡ったベトナムの道。

「そんなの関係ねぇ!」と日本のギャグを道端で私に披露してくれたベトナムのおじさん。

どんな国の人間でも楽しいことや
笑うことはいっしょで、
大切な誰かと話す時間は変わらず平等に輝いている。

私はいつも世界の平和を願っている。




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