【創作】 天使が2人

私は罪を犯しました

私は、欲を覚えました

私は、寂しさを覚えました

私は、私は、生きているのに
死にたいと浮かぶ日があるのです

心配ねえ…毎晩あんな様子で夜空に向かって手を合わせて願っているわよあの子…古本屋で買ってきた聖書ばかり読んでさあ……正直気味が悪いわ

お前がお金を渡すからだろ

自分の罪を数え、それを売ってお金にする、
なんて言いだすのよ?

無理やりにでも働かせてみたらどうだ

とても私には12歳の女の子には思えないわね
あの子は、悪魔よ。



今も私の横で眠ってくれているのねピカロ
貴方とこんだけ親しくなれば分かるわ
私は人生で石の床の上でしか寝たことがないのよピカロ
ベッドの上って、どんな心地なんだと思う?

ぼく的には雲の上みたいな感じだと思う。
てか、眠れないんだね、
寝たくない日は眠らなくていいんだよ?
ほら、目を瞑ってご覧
凄く長くて、金色に輝いている
こんな素敵で綺麗なまつ毛の人間を見たのは初めてだよ

そう?
私は自分の睫毛が嫌いだわ

なんで?

父の不倫相手の目元とそっくりだから
母親は私の瞼を見る度に私を冷たい水に沈めたくなるような気分になるらしいわよ
だから私は母と血の繋がりはないけど、
こうやってお家に住ませてもらってるの

冷たいって、どんな感じ?

温度感覚がないの?

うん。

そうねえ、
救いようがない感じよ
特に、悲しい時に触れると

そっかあ…
ぼくはその"冷たい"が分からなくて、良かったなあ
教えてくれてありがとう!

…1度アフリカに行ってみたいわ

え、急に何故?

ライオンの群れの前で寝てね、
噛み殺されたいの

私と同じ睫毛の色をした、
たてがみのライオン達に。

君はそんなに自分の事が嫌い?

ええ、大嫌いよ

分からない。ぼくは君の事がこんなにも好きなのに

自分に浮かんでくる、全ての感情を上手くすくいとってあげられないから

スプーンを使いなよ

人間の負の感情はね、とても汚くて、
噛むと生の砂肝みたいな感触でジャリジャリして血の味がするわ。そんな味、噛み締めたくもない

私は、スプーンは使わずに
眺めている方がうんと好きだしね

それか、悲しければ泣けばいい。
君はワガママだ

ええ、ワガママよ

こうやって床で横になっている時に、
天井に向かって左手を差し出すと、
貴方との距離がより近くなる気がするわ

ダメだよ近づいてきちゃ
僕は天国にいるんだから

じゃあどうして私に名を教えたの?

…それは

私と会いたいからでしょピカロ

でも会うと、
僕も、君も、ダメなんだ。
天国はいいところだよ?でも、ここに君が来ると君のご両親がきっと悲しむ

全く悲しまないわ。それは保証する

でも…

君の容姿を教えて?

何で?恥ずかしいよ

早く…
私、死んじゃうわよ?

えええっと、髪の毛の色は金髪で、頑張ればくくれるくらいの長さかな!あ、くるくるしてるよ!

そう、目元は?

おじいちゃんによく似てるって言われる

…ふふ
私が知るわけないじゃない
貴方の体温は?

きっと君が今寝ている床と、ちょうど同じ温度だよ

…そう、冷たいのね
性別は?

分からない

分からない?

分かるんだけど、分からない
君は?

へ?女よ

そっか、ぼくも女。
けど、女ってことで生活すると身体中に細かくて長い
数匹のムカデがモゾモゾと僕の体の全てを襲ってくるんだ

それは気味が悪いわね。
男になればいいじゃない

天使はね、生まれ持った自分の性別を変えた途端
地球が破滅するんだ

なんて荷が重いこと

荷物どころじゃない、1個の惑星
そして、その惑星の中に君もいる

私はいいわよ

君が噛み殺されたい、
たてがみの立派なライオンさえも

それは潰されたら嫌だわね

でしょ?
ねえ、今日はもう眠れそう?

うん。良く眠れそう
私は、私よりも恵まれていない方のエピソードを
聴いて安心し、眠気に誘われるような最悪の人間よ

そうかな?

普通の人間は、羊の数を数えるだけで眠れるらしいんだから

そんなのうそだよ!

いいえ、ほんとうなの。これが

だからね、
私は悪魔なの

悪魔みたいな最悪の人間は、
1秒喋るごとに1秒寿命が縮む
そんなぼくとはこんなに話をしてくれないよ!

ふふ、親不孝かしらね

多分そうなるんだと思う。
ぼくは卵から産まれたから分かんないけど。
親を知らないんだ

ひよこくん

え?

いつもありがとう

君と話す度に、私は生きる気力が湧いてくるわ
流す涙も、うんと暖かい
小瓶の中に入れて、ずっと掌の中で握っていたいくらい愛おしいわ
この冷たい床だって、
今はうんと心地よく感じるんですもの






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