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開店準備                【エッセイ:カフェ物語1】

朝八時の街は忙しそうだ
会社に向かう車が行きかい 
イヤホンを耳に付けた学生が猛スピードで自転車をこいでいく
「交通安全」の黄色いベストを羽織ったおじいちゃんが
大きなランドセルを背負った子供たちに挨拶をしている
「一人の目よりみんなの目」そんなスローガンに合わせて
家の前を掃除するご近所さん同士の立ち話

そんな朝の喧騒にまぎれて今日もカフェに向かう

さほど厚くない硝子のドアでも
締め切ると外の音は ほとんど聞こえなくなる
途端に異空間に紛れ込んだようで
毎回 ≪ガラスってすごいなぁ≫ と感心してしまう

薄明るい店内は シーンと静まり返り
閉め切ったロールスクリーンの隙間から射し込む陽射しが
暗い舞台を照らすスポットライトのようだ
静寂に包まれた店内を見渡しながら
「さあっ、今日もがんばろっ」
とつぶやいて大きく息を吸う

私はこの瞬間が大好きだ

静寂を破る開演のブザーが聞こえてくるようでワクワクする

さあ、第一幕の始まり
今日はどんなお客様が来てくれるかな?

そんなことを思いながら開店準備を始める

~ カフェ物語2 に続く ~


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