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初めて行った映画館の思い出

映画が好きだ。
けど映画館で見た映画はそう多くはない。
子どもの頃はドラえもんとかゴジラが多かったかな。

子どもの頃ばあちゃんが
「映画に連れて行ってあげる。『エイリアン3』か、豚が飛行機に乗って戦争するの、どっちがいい?」と電話してきたことがあった。ばあちゃんは、エンタメに疎い。

小学2年生だったわたしは、「豚」というワードにどうも魅力を感じなかった。「戦争」というワードがどうも楽しく思えなかった。結果即答で「エイリアン3」と答えた。「エイリアン」は見たことがあった。怖い映画だ。

今思えばその「豚の戦争モノ」というのはジブリの「紅の豚」であり、ばあちゃんがもうちょっとうまく説明してくれていたら、わたしはそっちを選んだかもしれない。そしてばあちゃんにもうちょっと知識があれば、ばあちゃんの口から「エイリアン3」という選択肢はそもそも出てくることはなかったかもしれない。
ちなみにその時の記憶は、エイリアンの赤ちゃんがブチっ!と腹を突き破って出てきて、坊主頭のシガニーウィーバーも飛んでしまってるラストシーンのみ。当時6歳だった妹は、序盤で眠ってしまっていたに違いない。

初めて映画館で見た映画は、忘れてしまった。
なぜかというと、その日、わたしは超絶体調不良だったからだ。
きっとまだ、保育園に通っていた頃だったから、アニメだと思う。
ある夜、母から急に言われた。
「明日は、保育園を休んで映画館に行きます。」
わたしは歓喜した。あまり好きじゃない保育園を休める上に、大好きなお母さんと一緒に、初めて“えいがかん”へ行けるのだ。

翌朝、わたしは熱を出した。
嬉しすぎて出るのか、幼い頃わたしはよく、お楽しみの当日に熱を出した。
母は約束を破らない人だ。「約束は絶対守る」が、母が一番大事にしていることだと、今でも口癖のように言う。母はわたしを映画館に連れて行ってくれた。車に乗って、20分くらい?だけどわたしは車酔いにも超絶弱かった。
初めて“えいがかん”のシートに座った時は、熱と車酔いで朦朧としていたはずだがはっきりと覚えている。初めて見た、跳ね上がるえんじ色の座席。座面のスプリングは座り心地が非常に悪く、ギシギシと鳴った。背もたれにかけられた白いビニールのカバーは変な匂いがした。
映画が始まった。母が、持ってきていた紙パックのオレンジジュースを渡してくれた。

実は映画が始まった頃からずっと気持ち悪かったのだ。とうとうわたしは、その座席に座ったまま吐いた。母はわたしが吐きそうなのを察知して、持参していた(多分オレンジジュースを入れていた)ビニール袋を広げ、「はい、いいよ」と言って吐かせた。
吐いた後はうがいでもして、また席に戻って寝たと思う。

なんの映画だったのかわからない。
初めて行った映画館で吐いた、という記憶だけ。
でも、映画館は幼いわたしを受け入れてくれた気がする。
いや、受け入れてくれたのは、吐瀉物の匂いを我慢してくれた、周りの客さんなのかもしれない。
今でも映画が好き、映画館は大好きだ。


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