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「プペル」と同調圧力

「えんとつ町のプペル」を鑑賞。本当は、数週間前からホラーの気分なのだが、一人になる時間がなかなか確保できないのである。ホラーは娘達が本気で怖がるため、彼女達の目に入っても痛くないようにこの「プペル」をチョイスした。個人的に久しぶりのアニメーションということで、映画のお供は近所のパン屋さんのあんドーナツと紙パックのコーヒー牛乳という、甘い組み合わせに。学生にでも戻った気分だ。
鑑賞前に色々なレビューを目にして、賛否両論ある(全てのものに賛否はあるでしょうが)ように感じたが、わたしは「プペル」を見て泣いた。数年前に絵本も読んで、その時も泣きましたが。(ただ涙もろいだけかもしれない)。映画となると内容ももちろんボリュームアップするわけですが、ただの冒険物語ではなく、絵本よりも具体的なメッセージを感じました。

えんとつの煙に覆われ、空が見えない「えんとつ町」に住むブルーノは、煙の上には「星」があると語って、人々からは変人扱いされていたが、ある日突然行方が分からなくなってしまう。息子のルビッチは父親のせいで除け者にされながらも、「星」の話を密かに信じ続けていた。そんなある日、ルビッチはゴミ人間と出会う。

人と違うことを言ったり、他の人には突拍子もないと思えるような夢を持っている人間が行動しようとすると“その他大勢”から叩かれる。「えんとつ町」はわたしたちが住む世界そのものだ。人々は知らないものや分からないもの、自分には想像できない世界を「無い」「間違っている」と決めつけ、馬鹿にする。「異端」「宗教」などと言って攻撃する。(この辺りで、西野さんが脳裏に浮かぶ。)
「違っている」人を叩いている人達の中にも、実はこの世界や世の中の仕組みに、漠然と疑問や疑念を抱いている人もいる。だがしかし、自分の意見を言い出せなかったり、勇気が持てなかったりして、いつの間にかその気持ちを飲み込んでしまっていたりする。わたしはこの作品を見て「同調圧力」という言葉をすごく思った。そういう考え方が癖になっていたり、慣れてしまっている部分も否めない。同調圧力が無意識に作用することも大いにあるだろう。

信じる人が多いからそれが真実だとは限らない。同調する“その他大勢”は実は、大きな権力やとてつもなく巨大な力に支配されていて、そのことに気づいていなかったりする。映画の、白装束の鳥顔のヤツらがその象徴。(その中の「影の支配者」の声優が、テレビの世界の宮根さんだったりして、なんだかこれも、イミシンだ。)
大勢の人たちが都合よく同調してくれることは、影の存在にとって都合がいい。「えんとつ町」で煙突は煙を吐いて空を隠しているのだが、海にも魔物が住んでいて、人々を恐怖でコントロールしている。これは映画「ヴィレッジ」で森の中にこわーい「怪物」がいるのと同じ仕組みである。

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(大好きなMナイトシャマラン監督の「ヴィレッジ」2004年)
隠された真実。映画だとだいたいそれは、想像を絶するの規模のものであり、衝撃的なラストシーンであることがほとんどだ。

わたしたちは「星」を求めてもいい。例えばそれが、ごく個人的な、自分にしか意味のない「星」であったとしても。
誰かが煙を爆弾で吹き飛ばしてくれるのを、待っているだけでいいのだろうか。

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