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ぽんこついんず奮闘記 VOL.6妹の進化

「いやー販売スタッフ欲しいよ…。でも、今の時代店舗売上が厳しいからさ。求人かけたくても、決裁下りないんだよね…。」

アメリカントラッドの代表的なブランドの担当者が、ボソッと漏らした。

私は、江東区のエリア担当から異動し、千代田区のエリア担当を任されていた。そこで担当したのがこのブランド。後任挨拶で、近況を伺うとそう返ってきた。だから、だいぶ取引きがなかったのか…。

時代は有効求人倍率が1.3倍を超え、どの業界も「人手不足」。採用をしたい企業が沢山ある中で、なぜだろう?という疑問が芽生えた。

「でも、御社は新店舗を先日オープンされましたよね?人手は足りている状況なんですか?」

まず疑問を投げ掛けた、

「ハローワークの求人出したけど、とてもアパレル販売できそうな子じゃなかったんだよね…。結果、派遣を雇ってなんとかオープンには間に合わせたけど。最近、派遣の値段も上がっちゃっててね…。」

もっと、売るためには店舗拡大が必須。だけど箱だけ出来て、人材集めは毎回苦戦。採用予算の経費は、ブランド売上が上昇前提の投資。こんな構図だった。既存店の売上高を上げないと、この負の連鎖を止める事は出来ないのだ。

そんな、ファッションブランドの近況を聞いた瞬間。雷に打たれような衝撃が身体中に走った。

「これだ。」

ずっと何者かになりたかったけど、何をしたら良いか分からなかった私に、神様が教えてくれたのかも知れない。アポを終えた私は、もはや使命感とも言えるほどのスピードと熱量で転職エージェントに登録した。

「やっと見つけた。私が生きる世界を…。」

今までの霧が晴れた気がした。

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GW真っ只中の休日のことだ。
私は一気に履歴書・職務経歴書を書き上げた。
求人広告を売って、広告を制作している身だ。転職市場では、絶対に負けない自信があった。逆に、私が欲している求人が現在あるかが、気がかりだった。そうこうしているうちに転職エージェントとのアポの日が来た。

「凄い!完成度の高い職務経歴書ですね!恐らくこの書類でしたら書類選考は、ほぼ大丈夫でしょう♪」

エージェントの女性スタッフは言うと、その場でいくつか求人案件を見せてくれた。しかし、そこには「ファッション業界の売上を作る仕事」がなかった。

「うーんと、この求人だと今の会社辞める必要ねんじゃね?って思いませんか?今回の転職は、fashion × 集客の一択なんです!それ以外は最初から受ける気がありません!」

暑苦しい営業トークで案件書類を戻す私に、女性スタッフは厳しい顔で、少し言いにくそうに、

「…営業をされているので、コミュニケーションは得意だとは思いますが、紹介できる求人案件が、びっくりするほど少なくなる事も想定されます。それでもチャレンジされますか?」

そう念を押してきた。なるほど、打席が少ない中で確実にホームランを打てよってことか。やってやろうじゃないか!

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その日から、転職活動と求人営業の二足の草鞋の生活が始まった。

面接対策に関しては、社長クラスの偉い人を相手に商談をしていた経験から、緊張する心配はしていなかった。只、営業成績をみれば大して立派と言えるわけもなく、会社内では普通としか言いようがなかった。
これでは、面接で定量アピールが出来ない。
そこで、7月からの3ヶ月の期予算を2ヶ月で達成して、面接での勝算にしようと思いついた。会社内で売れている営業認定される人材は「ツーマンス達成」という称号があった。そこをクリアしている人は数少ない。前月から、私は顧客リストとにらめっこをしては、次月の売り上げ戦略を立てた。

7月に入り、数少ない求人案件から”応募希望”と、エージェントに返信した2社は余裕で書類選考を通過し、1次面接へと進んでいた。
4年前、アパレル販売から営業へ転身した時、応募した企業は30社を超えた。そのうち面接に進めたのは10社未満。2次面接まで行けたのはたった2社だった。今回応募したのは2社、余裕の書類突破だ。転職を通して、市場価値が上がっている自分に、明るい兆しを覚えた。

面接と仕事のアポと残業。このスケジューリングが肝だった。
2社しか受けていない。チャンスが少ないにも関わらず、面接予定が調整できず、試験が受けられなければ元も子もない。
最優先するのを面接。そのあとにアポを組み、そこから残業できる曜日を設定した。

時間が有限であると感じた時、人はこうも変化するのか。
私の行動は、今までの1.5倍のスピードで変化して行った。確実に受注を取る為の準備や商談でのトーク、外での移動中に残業タスク精査など、営業時間をフルに使っていった。そう常にこの頭の中には、

「ツーマンス達成!!」

このキーワードが食べている時も寝ている時も頭の中で叫んでいた。

8月を迎える時には、その変化に社内のほとんどの人が気づいた。それは、週間の予算目標をほぼ毎週100%クリアし、3ヶ月の予算の達成率は既に50%を超えていたからだ。まさに絵に描いたような売れてる営業だった。
加速した行動量は、新規の会社からの受注や締め切り前日に入る怒涛の掲載依頼など、自分でも捌いていくのがやっとという状況にまでなった。

今思い返してみると、ツーマンス達成を課したのは、起業塾を受けたのにも関わらず行動できなかったゲスな自分を、払拭したかったからかも知れない…。

テレアポ営業で訪問した際、採用担当者ではなく直接社長にプレゼンさせていただく機会がよくあり、場慣れはしていた。そのおかげで2社とも1次面接はあっさりとクリアした。本命である会社では、面接担当が未来の上司となった。彼女は面接を終え、エレベーターでお見送りをしてくれた時、

「私、10月からアナタと一緒に働いてる気がする!!」

とまで言って貰った。
それくらい面接は和やかに進み、面接というよりアポをこなしているという錯覚さえ感じた。既に、自分の中では本命が決まっていた。そうファッション業界の革命を社風に掲げるこの会社だと心に決めた。

2次面接では、取締役である会社のナンバー2が出てきた。そこでも、求人営業でこなしてきた事が役にたった。3Cだとか競合優位性とかありとあらゆる会社情報を集め、会社が向かう将来のビジョンに自分だったら、どう貢献できるかを考えた。fashion業界の企業をクライアントに持ち、ITで支援する会社。

IT業界は、まだまだ伸びしろがあり、人手が不足している事実も知っていた。秘密兵器と言わんばかりに「ツーマンス達成」している有能な営業が必要なはずではないかとプレゼンしてみせた。

面接ではなくプレゼンをしたこの会社は、私の前職になった。

ハッタリをかまして2ヶ月で予算を達成していると面接で言った事は事実になった。8月のお盆を過ぎた頃、私は人生で初めてツーマンス達成を果たした。

小さな努力や挑戦を繰り返して、その達成感が自信になり新たなチャレンジ精神につながる。
私は天才でも、秀才でもない。だから、何かやりたい!何者かになりたい!その思いだけで、起業することは出来なかった。

只、目の前の仕事を全力でやり遂げ、結果が付いた頃にその仕事が天職だと感じることや、また別の視点が生まれ挑戦したい。そんな欲が生まれる。

欲深く、突き詰めろ!!

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「ぽんこつ奮闘記」VOL.6は、会社の中で葛藤しながらも、自分と戦うあなたにむけて、思い出したリアルな話です。変わりたいけどそんなに簡単に行動に移せない。不器用に生きてきたからこそ、会社内で上手く立ち回れなかったり、アピールが出来なかったり。そんな人達の気持ちが、痛い程分かります。私達がぽんこつぶりをさらけ出す事で誰かの支えになれていれば幸いです。さて次はどんなドラマが待ち受けているのでしょう♪乞うご期待(フォローしてお待ちください!何卒)

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