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コラム #カッコイイ!?

単なる読書感想文です。
但し・・この1冊の本からカッコイイ!を深く掘り下げて、自分なりに解釈してみた内容となっています。

簡単に本文を要約すると・・
1967年(昭和42年) 横浜・本牧/伊勢佐木町を舞台にした若者たちの青春グラフィティです。グラフィティ(Graffiti)="落書き" と訳されるので、はにゃ!? と感じてしまいますが ”青春群像記” とも解釈できるのではないでしょうか!?

青春群像記・・
複数人の若者を登場させ、個々の生き方やそれぞれの視点からロマン/理想を求めて、青春時代を様々な形で表現している作品のこと。

この小説に出てくる
1967年の若者たちにとってのカッコイイと思う対象は・・

・カッコイイクルマとバイクにスピード
・不良とケンカ
・ナンパと可愛いあの子
・イカした音楽とダンス
・Tシャツやジーンズなどのファッション   など・・・

当時の大人世代の人達から見れば眉唾(まゆつば)だったに違いありません。
爆音を響(ひび)かせて街中をクルマが暴走する。あっちでは喧嘩が始まり、こっちではイカした音楽とダンスでハイテンションになっている連中がいる。
それらが正しいかどうかということを問いかけている小説ではありません。

単純に・・当時の横浜に、自身の気持ちに正直に、こんなカッコイイ生き方をしていた若者達がいたんだ!ってだけの話しです。だけど・・56年経過した現代でも、当時のカッコ良さは、まったく色褪せていません。むしろ憧れさえある。それは何でだろう?ここに注目してみたいと思います。

そして、自分なりに色々と考えてみる・・

一見すると”はちゃめちゃ”なだけじゃねぇーか!と思いがちな時代だったかも知れませんが、現代のように国が豊かになってスマートフォンで、大概(たいがい)なことはできる時代とは、当時はまったく異なっていたはずです。

1960年代、日本は高度経済成長期の真っ只中でした。急速に発展する経済は、豊かさと引き換えに、人々から多くの自由を奪っていったに違いありません。

そんな時代の渦中(かちゅう)にあって、それぞれのロマン/理想を求めて奮闘(ふんとう)する若者たちの姿が描かれているのがこの作品(本)です。

現代では、何事においてもコスパが良いかどうかが行動を起こすときの一つの判断基準になっているように思えます。コスパが良いか悪いかとは言い換えれば、それをやれば儲かるのか(得をするか)!? 儲からないのか(損をするか)!? というお金が基準になっているわけです。
儲かる(得する)ならやるし、儲からない(損する)ならやらない。ということです。

色々な生き方や考え方があるので肯定も否定もしませんが・・

この小説に登場してくる若者たちだったら間違いなく・・

『ダッセー!』
『結局、金かよ!』
『つまんねぇー!生き方してんじゃねーよ!』
『たった一度の人生だぜぇ!』
『楽しまなくて何が人生だ!』・・・と言うでしょうね。

でも『金が無いと何も始められねーじゃん!』と、もっともらしい事を現代の若者たちは言うのだろうか。
”だったら一度、この本読んでみたら!” 
資本主義に毒された、そういう若者たちにこそ、この本は読んでもらいたいと思います。
金がない時代でも、これだけ熱くカッコ良く生きれるじゃん!とも思うわけです。

ここで、小説にでてくる若者たちが追い求めた”ロマン”について少し掘り下げてみようと思います。

Roman(ロマン)・・・自身の心の中に描いていく偶像(アイドル)/理想

”男のロマン”とか使われることがありますが、ロマンは自身の心の中に描いていく偶像/理想というのが、意味としてはピタってハマると思うのです。

何(いず)れにしても・・・
ロマンは自身の心に描(えが)くものだから、価値基準が自分自身の心のさじ加減ひとつということ。自分の好きなように描(えが)き直すこともできる。
とは言え、何をやっても良いということとは違くて・・それには責任が伴(ともな)うということを忘れないでおきたい。

何かトラブルが起きたとき自身で責任を取らなければならない。言い換えれば、何かあった時、腹を括(くく)る覚悟が必要ってことです。
”ヤクザ映画じゃあるまいしー” と言われそうですが、責任を取ることはどこの世界にもあることです。会社や学校、世の中だって同じです。
ただ責任の取り方が住む世界によって少し違うだけ!ってことです。

人情的な物語とは別に、もうひとつ注目したのが社会的な背景についてです。

クルマが好きな人なら関心があると思いますが・・1960年代の日本のスポーツカーって・・トヨタS800、ホンダS800/S600、マツダキャロル、プリンススカイライン、コスモスポーツなど・・小型のクルマが活躍していて、ほとんどのクルマ好きが知ってる日産スカイラインGTRは、その次の世代(1970年代)に入ってから活躍し始めるわけです。

現代みたいに決して大きく馬力があった日本のクルマだったわけではありませんが、その小さな日本車が、大きさもパワーも上をいく外車を相手に勝負を挑んでいくみたいなこともよくあったようです。
人間だけではなくクルマにもロマンがあった時代だったんですね。

最後に本編から引用(P203 9行目〜)
『オレはな、人間はな、もうダメだ、限界だ、そう思ったとき、でもそこからが本当の勝負だと思ってんだ。』

作者が本当に伝えたかったのは、この事だったんじゃないでしょうか?

幾(いく)たびかの限界を乗り越えてきたからこそ、
小説の中の若者たちは、とびっきり輝いていたんじゃないだろうか!と・・・



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