見出し画像

【ショートショート】戦う前から【下道一組】

   戦う前から

 最近新しい高速道路ができたせいで、遠方に出かける人たちはみんなそちらに行ってしまった。閑古鳥が鳴く下道道路はため息をつきながら、随分と寂しくなった風景を眺めた。
「よお、お前も暇そうだな」
 そんな下道に声をかけてきたのは別の下道だった。
「君も暇そうだね。みんな高速道路に行っちゃった。僕たちが束になっても、高速道路には敵わないんだろうな」
「案外いけるかもしれないぞ?」
 下道は何か閃いた様子で、こにょこにょと作戦を語った。

 ある日、人々は驚いた。生活道路として使っていたはずの道がどこにもない。見るとその道が一箇所に集まって、高速道路となにやら張り合っている。
「俺たちは下道一組! 高速道路に負けないぞ!」
 困り果てた人々に目もくれず、高速道路と張り合う下道一組。嘆く人々の様子を見た高速道路は少し考えて、こう言った。
「人の役に立つどころか迷惑をかけている時点で、負けてるようなもんですけど」

 ――下道一組は、解散した。


毎週ショートショートnote
裏お題「下道一組」
文字数403字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)