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【ショートショート】小心者の罠【罠の中の地味に怒る】

  小心者の罠

 ある山に小心者の男が住んでいた。男はとても臆病だったので、強盗の襲撃が恐ろしかった。男は色々考えながら落とし穴を作ることにした。
 もしも強盗が穴に落ちて、死んでしまったら? 男は穴の底にクッションを敷いた。
 逆恨みで自分を殺そうとしてきたら? 男は穴の底に良いソファーと箱を置いた。箱の中には保存食の他、そこそこ良いワインも置いた。

 ある日、コソ泥が山にやって来て、臆病な男の家に盗みに入ろうとした。しかしコソ泥は落とし穴に落ちてしまった。コソ泥は穴の中にソファーやワインや保存食があるのをみて心底驚いた。コソ泥はワインを飲み、保存食を食い散らかし、ソファーで眠る生活をした。

 落とし穴が作動しているのを見た男はすぐに警察を呼んだ。随分良い暮らしができたね、と皮肉る警察に対し、コソ泥の眉間にはシワが寄っていた。
「何か不満でも?」警察が問うた。
「不満はないさ」コソ泥は答えた。
「ただ、食料箱の角に小指をぶつけただけで」


 毎週ショートショートnote
 裏お題「罠の中の地味に怒る」
 文字数403字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)