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【ショートショート】絶滅三秒前【バイリンガルギョウザ】

   絶滅三秒前

 スーパーの冷凍餃子たちは、今日もマイナス十数度の冷凍庫の中でとりとめのない話をしていた。
「なぁ、何か面白い話ない?」
 特に冷凍庫の話は人気であった。冷凍庫は冷たい息を吐き出してから「そういえば」と話を切り出した。
「昨今の冷凍餃子は、中国語を話せないんだね」
「そりゃ俺たちのルーツは中国だけど、生まれは日本だもん」
 冷凍餃子は袋の「国産」を示す。冷凍庫は冷たいため息をついた。
「でも、昔はみんな中国語でも喋ってたんだよ」
「ああ、」隣の冷凍お好み焼きが声を上げた。
「昔、中国産冷凍餃子がクスリやってた話あったよね」
 あー、と冷凍庫は残念そうな声を上げた。
「そういえば、一時ここも閑散としてたね」
 冷凍餃子はふと、視線を上げた。
「今でも、中国産は信用ならないって言われてるよね」
 冷凍庫の壁に、メイド・イン・チャイナと書かれている。
「この前も、中国産電化製品が爆発しただの発火しただの……」
 心なしか、下から熱が伝わってくる……。


 毎週ショートショートnote
 お題「バイリンガルギョウザ」
 文字数406字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)