【ショートショート】ぬけがけ【満月ガスとバス】
ぬけがけ
満月ガスを求めたバスが、月へと向かって走って行く。
満月ガスは満月のときに採れる天然ガス。人々の生活を支えていたそれが枯渇しそうだというニュースに世界が震え上がった。
「月に探しに行きましょう」
長期的な調査になる。バスには客ではなく荷物と博士の研究チームが乗っている。
人々が大声で何かを言っている。地球の命運を担う自分たちへ、声援を送っているのだろう。
……まさか月へ逃げているとは思わずに。
月に満月ガスがあるとは限らない。その事実を告げたら人々はパニックに陥る。槍玉に挙がる趣味はないので、さっさと逃げるが吉。
「地球の諸君、精々余生を楽しんでくれたまえ」
博士が言うと、助手たちはドッと笑った。
運転を自動に切り替えて、博士はワインを開けた。そして、高らかに叫んだ。
「新たな生活に、乾杯!」
――群衆の一人が「ガスが漏れてるぞ」と書かれたプラカードを掲げていたが、博士たちは誰一人としてそれに気がつかなかった。
毎週ショートショートnote
お題「満月ガスとバス」
文字数409字
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気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)